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異世界大陸統一記  作者: クロキダンカー
2章王国内乱の章
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君主の言葉は重い?

 「準備は出来たか?」


 「ああ。出来た。行くか」


 そう言って俺とマークは旧王都イニエスタの城門をくぐり外に出た。そして俺たち2人の後ろを100人の兵士が続く。


 「とりあえず、魔法を使って一本道の岩の壁の上に移動する」


 「わかったよ、隊長」


 俺の言葉にマークが茶化して答えた。

 そう、俺は隊長だ。それも100人もの部下がいる(正確に言うと少し違うけど)。この100人からなる部隊が今回俺の部隊で、特殊な事をする為に作られた。その特殊な事というのは城につく前に敵部隊に打撃を与え、その後はゲリラ戦を展開することだ。実はこの部隊を俺が使い戦う事は、ジジイと話し合い決まった事だ。理由はゲリラ戦をこの世界の人間はよく知らないと云う事と敵に打撃を与える事が出来るかが今回の防衛線のカギとなるからだ。

 それに城に俺がいない方が何事においてもスムーズに事が進む。これは俺に対して近衛騎士団が必要以上に絡んでくるほか、何事かの理由に付けて俺を排除しようと画策してくると云うのが主だった理由だ。

 また、王国騎士団の連中も俺の事を気に入らないらしく絡んでくる事が多い。簡単にいえば、俺は両騎士団から嫌われているのだ。


 「じゃあ、この開けた穴に入っていってくれ。この穴をくぐれば崖の上につく」


 空中に開けた少し大きめの穴を指しながら兵に伝えたが、俺を良く知らないので困っている。


 (それもそうか。いきなり空中に穴が開いて、そこをくぐれば違う場所なんていう事は普通信じられない。この世界に『ドラ〇もん』が居れば別だけど・・・)


 戸惑う兵たちに、実質上・・・の指揮官であるマークが声をかけた。元々この兵達の殆んどは、ジジイの兵なので俺よりマークの事を信頼しているし、ジジイと共に戦ってきたので結束力と経験は半端なくある。


 「大丈夫だ。アオイは古代魔法の使い手だ、心配するような事は起きない」


 マークが言った「古代魔法の使い手」の部分にどよめきが起こった。


 「若、それは本当ですか?」


 そう言ってラルフさんが聞く。

 このラルフさんはこの兵たちの纏め役で、マークの守役を務めた人だ。見た目は強面で、筋骨隆々な体をしていつから怖い。そして今は槍を持っているから怖さが増している。

 言い忘れたがこの世界でも槍や剣が兵士の主な武器になっていて、魔法を主力で戦う人は少ない。理由は『魔法だと魔力が尽きたら使えないから』というシンプルなものだ。今回、武器を持っていないのは、どの武器も使えない俺だけ・・・。


 「本当だよ。なんなら俺が先に入るから、みんなその後ついて来てよ」


 マークが言うとみんながいっせいに騒ぎだした。


 「若を先に行かせる様な事は出来ません」


 「そうです。ここは俺が先に行ってきます」


 「いや、俺が行きます」


 「いや、俺が」


 そう兵たちは言いながら挙手をしてゆく。


 (何だこの流れ・・・。もしかしてもしかするのか?これは完ぺきにあの芸をするのか?あれはこの世界でも通じるのか?)


 兵とマークの流れを見ながら俺は困惑した。この世界にはテレビもバラエティーもない。そのはずなのに、これは中学生の頃がよくやったあの流れにそっくりの展開なのだ。


 「いや、ここはおr「ちょっと待て」・・・」


 俺が空気を読み最後の1人の挙手をしようとした時、門の方から来た奴に遮られた。


 (誰だ?・・・・最悪だ。ムカつく奴ジータだよ・・・)


 門の方向から声をかけてきたジータだった。こいつは俺に対しての当たり方が近衛の中で一番強い。そして何故かジータの後ろには、50人ばかりの同じ鎧を着た連中が居る。


 「何のようだ?」


 この隊の隊長である俺が代表して聞いた。俺を含めみんな嫌そうな顔をしているのを隠そうとしない。


 「何だその態度は!!貴様らのほとんどが平民だろうが!!」


 案の定、後ろの奴らが騒ぎだす。こいつらの言うようにここに居る者のほとんどが平民出身だ。しかし、徹底した実力主義で家柄を気にしないジジイは配下した。その為かこの兵たちは直ぐ家や身分を出す奴をとにかく嫌う。


 「うるせいな。こっちは今、忙しいんだよ」


 俺もこいつ等には良い感情が無いので、口調は厳しい。


 「ふん!まあ、いい。我らも貴様らに付いて行く」


 ジータの発した単語に皆が唖然とする。


 「!?」


 俺には理解が出来なかった。

 この任務についてジジイと誰がやるか話し合った際に、始め俺は辞退をした。一様俺がゲームや兵法書が好きでここに来る前に読み漁っていて、今回の策を作ったとはいえ、実戦経験はおろか人を殺してはいけないという教育を施されてきた人間には無理だと思ったからだ。だがジジイは超マジな顔で俺以外では無理と突っぱねた。その理由は前にも書いたようにゲリラ戦だ。今回のゲリラ戦の重要事項は、敵の補給路における強奪と破壊という2つ。ジジイが言うには、王国騎士団はゲリラ戦の様な後方支援が苦手らしく、ジジイが将軍として戦に出てた時はジジイの配下の兵が行っていたらしい。また近衛騎士団は、論外とジジイは言った。実戦経験ゼロの上に『戦う時は正々堂々』という変な戦い方のこだわりを持っているので話にならないらしい。だから、変に勘がよく作戦を立案した俺が指揮をとるようにと言ってきかないので俺は承諾した。そして、この補給路における強奪と破壊は他言無用の極秘事項にされたので、俺とジジイとこの作戦に参加するジジイの部下以外は、極一部の者にしか知らされていない。

 それなのに、今目の前で、ジジイにこの作戦では論外とされた近衛騎士団が『付いて行く』と言ってきた。


 「何の事だ?」


 極秘事項を何処まで知っているか分からない為探りを入れる。


 「ふん。とぼけるな。知っているぞ、貴様らが今回の戦において重要な役割を担う事を!!」


 俺の問いにドヤ顔でジータは答えた。


 (『重要な役割を担う』か。作戦内容までは知らないのか?)


 「何だ?黙秘か?」


 俺が黙り込んだ事でジータは更に調子に乗った声でしゃべり続ける。


 「貴様らに拒否権などないのだ。我らの配下になる事は決定事項だからな」


 「決定事項?拒否権が無い?・・・どういう事だ?」


 意味の分からない事を言いだすので俺は聞いてみた。


 「これを見ろ」


 そう言ってジータは俺に向かって1つの巻物を開いた。


 「・・・何だそりゃ?」


 俺が素直に感想を言った途端に近衛騎士が大笑いを始めた。


 「はは、聞いたか?『何だそりゃ?』だって!」


 「仕方がないさ。こいつは下賤な上に能無し何だから」


 俺は意味が分からず後ろに居る兵たちを見てみた。こちらは驚きの表情をしている。


 「なあ、マーク。あれは何なんだ?」


 1人取り残された俺は、近くに居たマークに聞いた。


 「本当に知らないのか?」


 信じられないという顔でマークは俺に確認してきた。


 「知らないんだよ。あんなの見たこともないし」


 「・・そうか!そうだった!!お前の経歴を考えれば知ってるはずがない」


 マークは忘れていた物を思い出したように言い、あれが何か教えてくれた。


 「あれは王命なんだよ」


 マークのこのひと言で全てがつながった。


 (そうか。そういう事だったのか。全ての原因は女王だな。女王には今回の作戦を伝えてある。きっとそこから洩れたんだ。そして『今回の戦における重要な役割』という事を聞いたムカつく奴ジータが女王に王命を出させて付いて行くことができるようにしたんだろう。女王は自分の護衛に特別な思いを持っているようだし・・・)


 状況がやっと理解出来た俺はため息をついた。


 「はぁ・・・。あれって取り下げるとか、無効にする方法はないの?」


 「ない。王命は絶対というのがこの国の根本にある。もしそれを聞かなければ、確実に死罪だ」


 この国が王国なのだから当たり前といえば当たり前だ。


 「しょうがないか。こんな事で王命に逆らって死ぬのは嫌だし・・・」


 嫌だが同行させる事を承諾する。後ろに居るみんなも俺の言葉に嫌そうな顔をしながらだが頷く。


 「始めからそう認めれば良かったのだ。貴様には今回の戦の重要な役割を担う権利はないのだから。それから、後ろに居る下賤共も同じだ。貴様らは我々の盾になっていればいいのだ」


 完全に調子に乗っているジータの発言に空気が凍った。


 「何だその顔は?我らと貴様らは生まれた時より違うのだ。我々は生まれてから英才教育を施された、選ばれし者なのだ。底辺に居る貴様らとは全てが違う」


 俺の後ろから発せられる爆発寸前の殺気やこの場の空気の変化を読めないジータは火にガソリンをぶち込む。


 (ちっ。女王はこいつらがこういう発言をしたり、人を見下す性格だという事を知らないのか?こんな事を平気で言うから前線に居る奴からこいつ等は嫌われてるという事も知らないのか?もしそうならとんでもない暗君だ)


 心の中で舌打ちしながら俺の中の女王の評価が下がる。


 「良く聞け。王命を読み上げる」


 急なジータの言葉に皆が仕方なく臣下の礼を取るので俺も倣う。


 「『王命。異世界よりの旅人アオイ。そのほうの部隊は、近衛騎士団王護衛ジータ・アルベルトの配下となり、その指示に従う事をわが名を持って命ずる。王女ルーナ・イニエスタ』」


 ジータの高らかに読み上げた内容に俺らは愕然とし、近衛騎士の連中は誇らしげな顔をしている。


 (今『配下にする』と言ってなかったか?俺らに同行するだけじゃなく、俺がこいつ等の指揮下に入る。・・・そんな馬鹿な話は無い。ジジイは今回の任務でどうして俺を選んだか女王に説明したはず。ならこいつ等が今回の任務とは反対の考えを持っている事を理解してないのか?・・・最悪の場合、今回の任務自体が無くなるぞ)


 最悪の場合を想定して俺の顔から血の気が引いた。


 「聞いた様に貴様らは我らの配下となった。という事は隊長はこの私だ。そしてここで隊長として最初の命令を下す。貴様らの役割を教えろ」


 今後の事を思案している俺をよそにジータが任務内容を教えるように迫ってきた。だが、臣下の礼をやめ立ち上がった俺たちの中に口を開く奴はいなかった。


 「何だ貴様ら!?上官の命令が聞けないのか?」


 黙る俺たちにジータの後ろに居る奴が吠える。しかし、誰も口を割らない。


 (おかしい。こいつ等は王命を持ってきた。という事は全てを知る女王に頼んだか何かしらの事をしたはずだ。なのに何故俺らの役割を知らないんだ?)


 俺らが何も言わない事に対して吠えてくる中俺は在る考えに思い至った。


 「マーク、王命って偽造できるか?」


 「奇遇だな。俺もそう考えたんだが王命がどうやってできるか知らないから確信が持てない」


 「出来ます」


 俺と隣に居たマークの会話に答えてくれたのはラルフさんだった。


 「昔の事ですが殿が酒を飲みながら言っていた事がありました。『王命はその気になれば偽造できるから、気に入らない奴いたら言えよ。左遷させてやる』と」


 懐かしそうな顔でとんでもない事を告白してくれた。


 「・・・・・・・・」


 「・・・と、とりあえずじいちゃんの所に行こうか」


 無言の俺と違いどもりながらもマークが反応した。


 「そ、そうだな。とりあえず確認しに行こう」


 騒ぐ奴らを無視してジジイの所に向かった。もうこの事態をどうにかできるのはジジイか伯爵くらいしかいないのだ。


 「ジジイ、いる?」


 ノックもせず扉を開け中に入る。中にはジジイの他に伯爵も居た。


 「なんだ、ガキか。それにマークにラルフまでどうした?」


 気のせいか、俺の後の2人を見た時の声の方が嬉しそうに聞こえた。


 「実はな「待て」・・・来たな」


 事情を話そうとした時、扉が開きジータとよく吠えてた兵士が入ってきた。


 「なんだお前ら」


 ジジイが入ってきた2人を見て俺より嫌そうな声と顔をした。俺は勝ったと思い1人ガッツポーズをする。


 「じいちゃん実はね」


 部屋の状況がカオスになりかけてきたのを見て、マークが事情を説明する。

 そして、事情を聴いた2人は頭を抱えた。


 「・・・ブレイダ―よ。どうするつもりじゃ」


 「・・・とりあえずお嬢の所に行くしかないだろ」


 頭を抱えた2人は深いため息をつき、女王の元へ向かう為に立ち上がった。


 「お前らも来い」


 ジジイが声をかけ、部屋にいた全員が移動を開始した。



 「多分ここに居るだろ」


 ジジイが先頭で移動した先は女王の執務室だった。


 「お嬢。ブレイダ―です。入ります」


 ジジイがノックして部屋の扉を開けた。中には女王の他にミリアとルシオが居た。


 (おお!!めんどくさくなる気しかしない!!)


 誰がどう見てもそんな気配がする部屋の中で、まず口を開いたのは女王だった。


 「どうしたのです。こんなに大勢で」


 どうやらジジイ以外にもたくさんの人間が入ってきたため戸惑っているようだ。


 「お嬢、今回ここに来たのは王命についてです」


 ジジイは戸惑ってる王女をスル―して要件を切り出した。このジジイの「王命」という単語に女王とミリア、ルシオの3人がわずかながら反応したのを俺は見逃さなかった。


 「・・王命がどうかしたのですか?」


 少し間があったが女王は澄まして答えた。


 「今回、ジータにアオイの隊の指揮権を譲るように王命を出したと聞きました。間違いないのですか?」


 「ええ、間違いなく出しました」


 「お嬢、その王命取り消していただきたい」


 出したかという事を確認した後、ジジイはとんでもない事を言い出した。


 「将軍、いささかやり過ぎです。王命を取り消すなどあってはならない」


 ジジイの言葉に今まで散々に言われてきたルシオが抗議した。


 「じゃあ聞くが。お前ら近衛騎士団は戦う時何か決まり事をしていると聞くが本当か?」


 「ええ。我ら近衛騎士団はその誇りを持って正々堂々戦うという信念があります」


 「強奪をお前らはやるか?」


 「なぜそんな事を?やりませんね。そんな事をすれば我らの誇りに関わります」


 ジジイの問いに何も考えずルシオは答えてゆく。


 「お嬢、これが答えです。王命を取り消してください。もしくは近衛騎士団に王命を下してください。そうしなければ我々は負けます」


 ジジイの言葉によって詳しく教えられていなかった近衛騎士団の3人は『重要な役割』を察したらしく、とてつもない嫌な顔をしている。


 「分かりました。今回の王命は取り消します」


 女王はジータとミリアの顔を見た後にそう告げた。


 そして全てが落ち着いた時には日が落ちたので、俺たちは一日遅れの出発となった。


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