1、いつもの日常
目を覚ますとまず感じたのは朝日。
そして次はお日様の香り。
昨日、一日お天道様の光をたくさん浴びたお布団は、とても良い香りがしました。
軽い朝食を済ませた赤ずきんは村へ出かけて行きました。
村では赤ずきんは人気者。
すぐに子供たちに囲まれてしまいます。
「赤ずきん!今日は何をして遊んでくれるの?」
「絵本を読んで!」
元気いっぱいの子供たちに戸惑いながら、赤ずきんは答えました。
「ごめんなさいね、今日は森のおばあさんのおうちに行く約束をしてしまっているの。また明日遊びましょう?」
子供達たちは残念そうな顔をしましたが、森のおばあさんの所へ行くと言うのであれば、仕方がありません。
「明日は僕たちと遊んでよね!」
「待ってるからね!赤ずきん!」
赤ずきんは子供たちに手を振りました。
赤ずきんは最近15歳になったばかり。
村の子供たちは、少しお姉さんな赤ずきんを慕っているのでした。
「おばさん、木苺のケーキとブドウ酒を頂けますか?」
おばさんは赤ずきんを見るなり、ぱっと笑顔になりました。
「おやおや、赤ずきん。今日はどこへ行くんだい?」
おばさんは木苺のケーキを切り分けながら聞きました。
「今日はおばあさんの所へ遊びに行くんです。だから、おばあさんの大好きな木苺のケーキとブドウ酒を持って行こうと思って。」
おばさんは木苺のケーキとブドウ酒を包んでくれました。
それをかごに入れた赤ずきんは、森に向かって歩き出しました。
赤ずきんは孤児でした。
森に捨てられていたところをおばあさんに拾われたのです。
10歳の頃まではおばあさんと森の家に住んでいたのですが、おばあさんにあまり迷惑を掛けたくなかった赤ずきんは、一人で村のはずれで暮らしているのです。
なので、時々こうしておばあさんに会いに行くのでした。
森に入ったところで赤ずきんは気付きました。
「あら?おばさん、おまけを入れてくれたんだわ。」
包みとは別に真っ赤な林檎が入っていました。
「気づいていたらお礼を言っていたのに・・・。そうだわ、森のお花を摘んで持って行ってあげたら、きっと喜んでくれるわ。」
おばあさんのおうちまではすぐなのですが、赤ずきんは寄り道することにしました。