第1章 part6
ガバッと跳ね起き、蒼麻は激しく息を荒げる。
叫んだ声が部屋の中を反響して、壁に跳ね返りながらわずかに響く。
いつの間にか閉じていた眼を開け、あたりを見渡す。そこは雄大な空などではなく、見慣れた自分の部屋、机や本棚など見慣れたものが眼に飛び込んできた。
「ゆ、夢か……」
まだ上下する肩を揺らしつつ、蒼麻は安堵の息をついた。
カチ、カチ、と部屋の中を鳴り響く時計を見てみるとまだ六時前。起きるには少し早いだろう。
それでも蒼麻はベッドから立ち上がり、一階にある台所へと向かう。コップに水を入れ、一気に喉に流し込む。身体中に水分がしみていくことを感じながらテレビの電源をつける。
ソファに座り、ぼーっとクッションを挟んで体育座りをする。
「にしても……リアルな夢だったな」
未だしっかりと覚醒しない脳を働かせながら夢の内容を思い出す。
恋雪が事故? そんなのあるわけがねぇ。昨日だって仲良く帰ったようなもんだし……
テレビの時間が六時半を告げた。
この時間になっても降りてこない母親で記憶がさらに戻ってくる。
「そっか、今一人だっけ」
そう、蒼麻の父と母は昨日から出張中なのだ。兄弟などもいないため、今は完璧に一人である。
どっこいしょ、と年寄り臭いセリフを吐きながら顔を洗う。冷たい水が顔を引き締めるように襲ってくる。
台所へ行きトーストを焼いている間に卵やベーコンを冷蔵庫から取り出す。
簡単な朝食を済ませ、ひと段落ついたところで如月家のチャイムが虚しく響いた。