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恋って素敵  作者: マオ
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恋って素敵(あらあら)

 昔々、とある国でのお話です。


 悪いドラゴンにお姫様がさらわれました。

 しかし、王もお妃も姉姫も臣下も民も、首を傾げました。

 ドラゴンがさらったのは、とても美しい第一王女ではなく、平々凡々な容姿の、第二王女だったからです。

 それでも、王女を見捨てるわけにはいきません。

 王は、姫を救い出すために、『歴戦の戦士』達を送り込みました。軍を動かすわけにはいきません。

 ドラゴンは空を飛べる。軍を動かしている間に、次は第一王女の姉がさらわれるかもしれないと、恐れたのです。

 そして、三ヶ月。ドラゴンを倒しに行ったものたちは誰も帰ってきません。

 王は国中に御触れを出し、姫を救い出したものに望みの褒美を出すと言いました。


 そうして、数ヵ月後、そのお姫様は見事勇者に救い出されたのです……ドラゴンを友達にして。

 それから、ずっと長い年月、寂しがり屋のドラゴンは、王国の皆を友達に、ずっとずっと幸せに過ごしました。



「めでたし、めでたし」

「ねぇ、このお話は、本当なの?」

「ええ。本当よ」

「じゃあ、どうしてドラゴンはいなくなったの? わたし、見たことないよ」

「……どうしてかしらね」

「みんなのこと嫌いになったの?」

「いいえ、違うと思うわ。彼はね、本当にみんなのことが大好きだったのよ――」

 母親は空を見上げる。昔、綺麗な黒いドラゴンが、悠然と飛んでいた空を。

 臆病だけれども、何よりも優しい、今はもういないドラゴンを探して……。


 宮廷魔導師と、友人が話している。

「お前、街の住民に行方不明扱いされてるの知ってた?」

「え、なんでですか!?」

「なんでも何も……いつものほほんと空飛んでた巨体が、何年も見えなくなったらおかしいなぁと思うだろ、普通」

「僕、元気にしてるのにー。たまに妻と街だって歩いてるのにー」

「そうだなー。結婚できたしなーこん畜生」

「え、どうして不機嫌なんですかチュレット? こないだ婚約したばっかりなのに」

「ははははははは。結婚したいならアレをやれコレをやれと無理難題を押し付けられているこの状況を喜べと!?」

「えー、でも、君はちゃんとやれるから親御さんも期待しているんでしょ?」

「…………そうなのか?」

「僕はそう思いますけど。君とソートは本当に天才だと思ってます。不可能を可能にできる人だって」

 だって、僕の望みを、願いをかなえてくれたから。

 にこやかな友人に、宮廷魔術師は苦笑い。

「そうならいいんだけどな。ま、あいつと結婚するために頑張るさ」

「大丈夫ですよ、君なら」

「ありがとう。で? あいつの顔見てくんだろ?」

「ええ。勿論。僕の大事な親友ですから、彼女は」

 

 偉大なドラゴンとお友達になった王女。

 寂しがり屋のブラックドラゴンは、ほわほわと可愛らしく笑う、タンポポの花のようなお姫様が、大好きです。同じように、彼とお友達になってくれた魔術師達も、大好きです。

 王国の人たちも、優しいドラゴンが大好きになりました。

 黒く大きく、ドラゴンの中でも最強で最凶と言われる彼の名は、ハントルールイ。

 王女様の名は、ユーラシアス。王女とドラゴンがお友達になったきっかけは、なんと、文通でした。


「元気そうで何よりですわ。奥様はお元気?」

「うん。とっても。あのね、誰よりも先に君に教えたいことがあるんだ。それで今日は急いで来たんだよ」

「あら、何かしら」

「あのね、僕、お父さんになるんだよ」

「まぁ! まぁ、まぁ!! まぁ……!」

「なんだかすごく照れくさいけど、一番に君に教えたかったんだ」

「光栄ですわ! まぁどうしましょう、あたくし、とっても嬉しいわ……!! まぁ、どうしましょ、お祝いしなくてはいけません!」

「いいよ。君の気持ちだけでとっても嬉しいもん」

「いけません。こういうことはちゃんとお祝いしなくては! ああ、でも、とっても嬉しいわ!!」

「次は君と彼だね」

「まぁ! ……ええ。そうですわね」

「応援してるし、祝福するよ」

「ありがとうございます。うふふ、あなたに心配されると、なんだかくすぐったいですわ」

「ええ? どうして? 何か変なこと言ってるかな??」

「どうしてかしら……でも、嬉しいですわ」

 微笑む彼女は、変わらずたんぽぽのようにふんわりと優しい。

 彼も嬉しそうに微笑んで、大切な親友である彼女とのお茶を楽しんだ。



 ドラゴンはいつの間にか姿を消しました。理由は誰にも分かりません。

 でも、お姫様がいつもと変わらない笑顔でいるので、国民は悲しいお別れを思い浮かべませんでした。

 きっと、彼はどこか遠い空を飛んでいるのだと。


 たまに、王都を歩く夫婦がいます。たくさんの魔物と仲良く歩く彼らは、とても幸せそうでした。


これにて完結です。しかし、途中で消えたあの人の後日談もちょこっとだけあります。べ、別に存在を忘れたわけではないのですよ?(嘘くさい)

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