表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
恋って素敵  作者: マオ
14/17

恋って素敵(へーえ、ほーお、ふーん)

 昔々、とある国でのお話です。


 悪いドラゴンにお姫様がさらわれました。

 しかし、王もお妃も姉姫も臣下も民も、首を傾げました。

 ドラゴンがさらったのは、とても美しい第一王女ではなく、平々凡々な容姿の、第二王女だったからです。

 それでも、王女を見捨てるわけにはいきません。

 王は、姫を救い出すために、『歴戦の戦士』達を送り込みました。軍を動かすわけにはいきません。

 ドラゴンは空を飛べる。軍を動かしている間に、次は第一王女の姉がさらわれるかもしれないと、恐れたのです。

 そして、三ヶ月。ドラゴンを倒しに行ったものたちは誰も帰ってきません。

 王は国中に御触れを出し、姫を救い出したものに望みの褒美を出すと言いました。



 ……それから、さらに四ヶ月……。


「幸せそうだなー」

 なまぬるい笑みを浮かべて、チュレットは言う。

 視線の先には、でれでれしているブラックドラゴン・ハントルールイ。

 その視線の先には、彼の大事な意中の人、ドーリンドールが、笑顔でユーラシアスとお茶をしている。

 ほんわかとろりんとしている王女と、それより少し年上の落ち着いた印象の女性が、和やかにお茶をしているのは、安心できる空間だ。


 周りにいるのが、大量のモンスターでなければ。

 ドーリンドールの傍らに、槍が立てかけられていなければ。

 常に帯剣しているレンジャーのリーレンラーラの妹で、ジャイアントイーグルの巣に卵を返すくらいの女性なので、彼女もやっぱりそれなりの腕前の女性だったのである。


「……まぁ、大団円といえば、そうだよなー……」

 一月前を思い出す。ヒゲでの解呪はうまくいき、ドーリンドールは目を覚ました。

 そのあと、何があったのかの説明でひと悶着。

 ドーリンドールはハントルールイに断りの返事を出していなかった。返事を出す前に、呪いに倒れたのだ。

 無情なお断りの返事を出したのは、モンスターの一匹だったのである。

 手紙を出したのは、上半身女性、下半身鳥のハーピーだった。

 『まま』が男に取られるのはイヤで、つい犯行に及んだと自白した。

 ちなみに、共犯は字の書けるスケルトン。

 ご丁寧にドーリンドールの筆跡を真似し、鳩はハーピーが鳥語で丸め込み、配達させたという。

 ドーリンドールに怒られて、しゅんと正座するスケルトンと、べったりうなだれるハーピーはいろんな意味で見ものだった。

 

「……しっかし……まさかこうなるとは……」

 わいわいと談笑しているモンスターたち。

 ハントルールイの住処である洞窟は、今やすっかりモンスターとドーリンドールの住居でもあった。

 ユーラシアスが提案したからである。


 曰く。

 ずっと結界を張っているなんて、モンスターさんも疲れますわ。

 曰く。

 結界の中にこもりきりの毎日で、安心などできませんでしょう?

 曰く。

 もっとずっと安全な場所に引越しなさいません?

 曰く――最強のブラックドラゴンの住処へ。


 こうして、思わぬ意中の人との同棲生活(?)が始まった、と、いうわけで。

 この一月は突貫工事だった。

 洞窟の中は日が当たらないので、植物系統のモンスターが日光浴できる場所を作るために、洞窟を広げたり。

 水棲モンスターのために池をつくり、湿気が洞窟内にたまらないように換気をよくしたり。

 自給自足生活のために、畑を作るスペースを作ったり。

 もちろん、こういう無理難題をこなせるのは、優秀な魔術師で。

 完成した当日、洞窟内には燃えカスが二つ転がっていたとかいないとか。

 燃えカスその1、チュレットは乾いた笑みのまま、和やか(?)な空間を見つめている。

 深窓の姫君は満足そうに笑っていた。

 燃えカスその2、ソートは、何故かリーレンラーラに引きずられて外に出ている。気に入られてしまったようだ。

 彼の最後の言葉は「人生って不思議だよな……」。多分、いろいろ何か悟ったのかもしれない。


 チュレットは思う。

 大団円だろう。

 まず、お友達にはなれたのだから。

 それからどうなるかは、ハントルールイとドーリンドール次第。

 そして、自分と、彼女も、きっと、これから。


 棚上げになっている人間化の魔術の研究を続けるかどうかも、きっとこれから。


そんなこんなで同棲でひと段落!(え)もうちょっと続きますよ?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ