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泣かないで

作者: 琴原 鈴音

あけましておめでとうございます。

今年も、ちょくちょくがんばっていきますゆえ、応援よろしくおねがいします。


 「どうして、そんなこと言うの?」


 「・・・・・・」


 「もういい。しばらく話したくない」



 私は、彼氏の家を飛び出していく


 喧嘩の原因は、狂った世界のしきたり・・・


 私たちの世界は赤ん坊が生まれると、政府から砂時計が支給される。


 そして、砂時計の中に入ってる砂が私たちの寿命。


 つまり、砂時計の砂が上から下へすべて流れ落ちた時、


 私たちは死んでしまうと言うわけだ。


 死にたくない、と言う人は「ずる」をしようとする。


 しかし、寿命の砂時計は特殊で、横に倒そうが、ひっくり返そうが


 砂が落ちることは止まんない。しかも、政府が砂時計につけてあるセンサーで


 「ずる」をした人は、何処かへつれて行かれて帰ってこない・・・・


 ここまでが、砂時計の話。そして「しきたり」というのは、


 もう1つの心臓のような砂時計を婚約者と交換し、将来の契りを結ぶことだ。



 私には彼氏がいる。現在進行形で喧嘩中の彼


 彼と私はもう付き合って何年も経つし、結婚してもおかしくはない年齢だ。


 なのに、彼は結婚を拒む。話の流れが結婚の事になりそうになると、


 話を変えようとするし、「どうして結婚してくれないの?」って聞いたときも


 笑ってはぐらかすだけだった。


 そんなまとまらない話をしているうちに、私の中で不安や苛立ちが募っていって、


 ついさっき、大喧嘩をして飛び出したのだ。


 


 (せめて、理由を教えてくれたっていいじゃない・・・・・!)


 




☆☆☆☆



 彼と連絡をとらなくなって、1週間が過ぎた。そんな時、


 彼の友達だと言う人から連絡が来て、今、急いで病院へ向かっている。


 教えてもらった病室へ入ると、連絡をくれた人だろうか?、1人の青年がいすに座って


 しゃべっていたが、そんなことは気にしてられない。


 

 「どうして砂時計の砂があと少しだってこと教えてくれなかったの!!」


 開口1番、怒気を丸出しにして、問いただす。


 彼は、座っていた少年を睨んだ後、冷水のごとく冷めた口調で言う


 「おまえは、俺と夫婦だと、何でも話してくれると勘違いしてないか? 

  思っていたなら、おまえは色ボケの馬鹿女だな。

  確かに俺の命は残り少ない。だからこそ残りの人生を楽しみたいんだ。

  おまえのような[遊び]の馬鹿女に残りの人生、付き合っている時間はない。」


 「・・っ!」


 大切な彼氏の口から出る。信じたくない言葉・・・


 「もう、ここには来るなよ。お前の顔を見てると、気持ち悪くなる」


 追い討ちをかける言葉に、踵を返して、彼女が病室を飛び出していく



 「・・・・・おまえ、なんであいつに寿命のこと教えた・・・」


 彼女が出て行ったことで、今度は青年に矛先が向いた。


 「そ、そんな怒った声出すなよっ・・・」


 「いいから、理由を言えよ。」


 「ん~、俺が見てる限りじゃ、彼女と会わなくなってから暗い顔してるから、

  てっきり会いたいんだと思ったんだけどな~」


 「・・・・そんなことねぇよ」


 「そうか、そうか。そんなら俺は今から彼女の所へ行って慰めてやろうかな~?」


 「・・・勝手にしろ・・・」


 彼は頭まで布団を被って、青年に背を向けた。


 その姿に苦笑しながら、青年も病室を出て行く


 

 (・・・・・・・・)




☆☆☆☆



 彼女のあとを追って辿り着いた病院の屋上 


 彼女は柵にもたれかかって、空を見ていた。 


 「お嬢さん♪そんな所でどうしたの?

    一緒にお茶でもいかかですか?」


 「あなたは・・・さっきの・・・」


 「はじめまして、あなたに連絡をした者です」


 「見苦しいところをお見せしてしてしまったわね」


 クシャっと泣くのをこらえる笑顔が痛い


 「えーと、はじめてあった奴に、こんなこと言われたくないかもしれないけど・・・・」


 「わかってるよ・・・。」


 青年の言葉をさえぎる。

 

 彼女は泣かないように、再び空を見上げ、ぽつり、ぽつりとつむいでく。 


 「1番、近くで、見てきたから・・・あいつが、嘘、ついてること、分かるよ・・・」


 「じゃあ・・・」


 じゃあ、なぜ、嘘をついて、彼女のことを嫌うフリをしている彼に黙っているのだろうか?


 「前ね。あの人が、話してくれたの・・・・」


 青年に話しかけるようで、空に語りかける。


 「私には、幸せになってほしい。そのためには、どんなことでもするって・・・

  だから・・・たぶん。たぶんだよ。私の憶測なんだけど・・・・、

  自分の死に付き合って、悲しい思いをしてほしくないからだと思うんだ・・・

  彼は優しい人だから・・・違う?」


 空から青年へ話し相手を戻す。


 「さすが♪あいつの彼女。けど、それじゃあ50%かな?」


 「50%・・・?」


 眉をよせて、複雑な顔をする


 「そっ、確かにお嬢さんを悲しくさせない為って言うのもあるけど、あいつは

  嫌なやつになって、嫌ってもらって、死んだ奴の事なんか忘れてもらって・・・・・

  新しい彼氏を作って幸せになってほしいからだよ。自分じゃ、幸せに出来ないことを

  充分ってほど、理解してるから・・・・他の人に、1秒でも多く幸せな時間を作って

  もらいたいんだ。」


 「1秒でも多くの幸せを作ってほしい・・・」


 それが、大切な彼氏の願い・・・


 「で、あなたはこれからどうするの?」


 「私は・・・・」


 私の願いは・・・・


 「・・・お話、聞いてもらって、ありがとうございました。

  私は、もうあの人会うことはしません・・・彼の願いのとおりに」


 「そうか・・・・・・」


 「彼のこと、よろしくお願いします」


 深く頭を下げる。彼を頼む意味と私が消えてからの意味


 「まかされたよ」


 承諾の言葉を聞いて、私は屋上を出て行く。振り返ったら泣いていまうから


 堂々と前だけを見て。




 (やっぱり、私はあなたの事を愛してるから・・・禁忌を犯しても、生きてほしい)


  



☆☆☆☆




 今日は12月13日、彼が病院に運ばれて10日たった。


 現在の時刻は午前10時、場所は彼の病室


 個室の部屋には、今、私と彼だけ、その彼も、寿命が近づき体力がなくなっているのか


 まだ、眠っていて、目を覚まさない。



 「ごめんね。あなたの友達には、来ないって言ったのに、来ちゃった。」


 サラサラの髪を撫でながら、1人で会話を進めてく


 「今日はね、お別れを言いにきたの・・・もう絶対に会うことは出来なくなるから

  最後に会っておきたかったの」


 そういうと、髪から手を離し、ポケットから、自分の砂時計を取り出す


 「あなたとの思い出もっと作りたかったな・・・いろんな所デートして

  おいしい物、食べ比べながら笑いあって・・・あっ結婚したら、赤ちゃんも

  欲しかったな・・・あんた似のかわいい赤ちゃん・・・それで、もっと・・・もっと・・・

  幸せな時間・・・を・・・作りたかった・・・」



 いつの間にかあふれて来た涙が彼の顔に落ちて、はじける

 

 その涙のせいなのか彼が、うっすらと目を開けた


 「んっ・・・どうしてここに・・・?」


 「ごめん。起こしちゃったね。」


 顔についた涙を拭いてあげて、笑う。


 「私ね、やっぱり、あなたと一緒じゃなきゃ幸せになれないから」


 「けど、俺は・・・」


 彼が言うことは分かる。彼にはもう時間がない


 「・・・私はあなたから、たくさんの幸せをもらった。

  だから、今度は、私が幸せにするばん・・・いままで数え切れないほどの幸せをありがとう。

  私は、あなたの事がとても大好きでした・・・」


 瞬間、自分の砂時計を床に叩きつける。

 砂時計は、当然のごとく粉々に砕けた。


 私は体が重くなっていくのを感じながら、話すのをやめない


 「こんなお話、知ってる? 寿命がまだある人が自ら、砂時計を割ると、

  自分の残っている寿命を愛する人にあげる事が出来るんだって・・・」


 「っ!!? それじゃあ・・・!」


 「言ったでしょ?今度は私のばんだって・・・

  ふふっ、私がいなくなっても前を向いて歩いてね。約束。」


 子供の時のように小指を絡ませた約束。こんなことしたの何年ぶりだろう。


 「ああ、もう時間がない・・・元気・・で・・・ね・・・・」


 そう言うと、彼の目を閉じさせて、


 今までで最高のキスをする。とろけるほど甘いキスを・・・愛し合った絆を確かめるように・・・



☆☆☆☆


 

 「もう、お嬢さんが消えて、5年か・・・・」


 「・・・そうだな・・・」


 ラベンダーが広がるこの丘は彼女が大好きで、よく2人で来た場所だった。


 キスのあと、目を開けるとそこに、彼女の姿はなく、

 代わりにいろんな種類の花びらが病室中に広がってた。


 この丘にはその時の花びらが埋めてあり、毎年、ラベンダーが咲く季節になると

 やってくることにしている。


                    





 ーーーーなあ、おまえは、ちゃんと天国へ行ったか?元気にしてるか?

     

     俺は、これからの人生、大きな失敗をするときもあると思う

 

     でも、おまえに再び会うとき、幸せな人生だった。って言えるよう頑張るからな。


     それまでの間、俺のこと、見守っててくれよーーーーーー



 


   


 


 


 

  


 


 

名無し短編、第3弾!!いや~今回は長かった・・・・


このお話作るのに、ものすごい時間かかりました・・・

しかも、明るいお話書きたいとかいいながら、何この暗いお話・・・

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