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元SE聖女、論理眼と現代知識で辺境のガラクタ遺跡を最適化! 〜魔王軍の残党を雇用してホワイトなダンジョン運営を始めました〜  作者: さくらもち


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通達

いつも通りの日常。

魔導回路の点検。

居住区画の換気調整。

食堂では、昼食の仕込み。


異常値は、ない。


「エルサ」


グロウルが、低い声で呼んだ。


三つの頭のうち、中央だけが彼女を見る。


「王都からの通信だ」


「……来たのね」


エルサは、手元の書類を閉じた。


魔導通信装置が、淡く光る。


内容は、短かった。


王国王子名義

死の谷管理区域に対し、

武装部隊を派遣する。

目的は制圧。

抵抗は敵対行為と見なす。


沈黙。


エルサは、ゆっくり息を吐いた。


「想定内」


それだけ言って、立ち上がる。


「……怒らないのか」


グロウルが問う。


「怒る理由はないわ」


エルサは答えた。


「理解できないものを怖がるのは、普通の反応だもの」


それが余計に、重かった。


ほどなく、各区画の責任者が集まった。


魔族。

魔獣。

ゴーレム。

種族は違えど、全員が“管理側”だ。


「王都が、攻めてくる」


エルサは、事実だけを告げる。


ざわめきは、起きなかった。


代わりに出たのは、質問だった。


「稼働停止は?」


「必要なし」


「迎撃体制?」


「基本は非武装」


「……被害想定は?」


エルサは、少し考える。


「最悪、施設の一部破壊。

 最良、何も起きない」


「人員の安全は?」


「最優先」


即答だった。


それを聞いて、誰かが言う。


「……逃げても、いいですか」


若い魔族だった。


エルサは、首を振らない。


「いいわ。判断は任せる」


「でも」


「でも?」


「ここ、居心地がいいんです」


その言葉に、空気が少しだけ揺れた。


エルサは、微笑む。


「ありがとう」


それ以上は、言わなかった。


会議が終わり、エルサは外に出た。


死の谷の空は、相変わらず澄んでいる。


「戦う準備は?」


グロウルが、隣に立つ。


「しない」


エルサは答えた。


「壊すのは簡単。でも、築くのは時間がかかる」


「相手は、それを分かっていない」


「ええ」


彼女は、遠くを見る。


「だから、見せるしかない」


「何をだ」


「管理された現実を」


沈黙。


やがて、グロウルが言った。


「……我々は、従う」


「ありがとう」


エルサは言う。


「これは、私の選択だから」


その背中は、きっと小さい。


だが、逃げる気配はなかった。


死の谷は、今日も稼働している。


戦場ではなく、恐怖でもなく、運用中の場所として。

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