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愛され竜人若夫婦のちょい足し魔道生活  作者: さまのすけ


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5 閑話 ハンスの会えない「誰か」1

 ハンス・シュトラウスはポートである。

 この水球(せかい)に多数存在するワタクシの入れ物。ワタクシはそれをポートと呼ぶ。

 ポートに入るまえのワタクシは、視覚と思考能力のある翡翠色のエネルギー体であった。

 ポートに入って初めてワタクシは形を得、触覚、聴覚、味覚、臭覚を得て、小さき者の世界を体験できる。

 ポートには自由に出入りできる。小さき者のなかにランダムに生成され、ワタクシが生成することはできない。ポートかどうかは近づけば解る。



 ワタクシは生まれた。視覚を得、水球を目にした瞬間、躊躇なくそれに飛び込んだ。

 ワタクシは理解していた。ワタクシがその水球(せかい)の管理者だと。この水球(せかい)を調製し、可能な限り小さき者で満たさなければならない、と。



 ワタクシが水球(せかい)に入ると、五体の竜、五体の狼、少しの陸地の上に何体かの小さき者がいた。

 小さき者を殖やすため、視覚しかなかったワタクシは、竜と狼に陸地を造ってもらった。巨大な竜と狼はワタクシの思うがままに動かせ、陸地を調えてくれた。できた陸地はいわゆる平らなところが少ないと解ったので、また竜と狼を動かして造ってもらった。



 もういい、と解り、何もすることがなくなった瞬間、いくつかのポートを知覚した。そしてそこに入ることができると理解していた。

 陸地造りは小さき者が殖えるのに十分な時間(とき)をかけられたらしい。

 いくつものポートに入り、様々な小さき者として、その世界を堪能することに夢中になった。

 竜や狼のことは思考から自然と消え失せた。

 


 何千、何万のポートを出入りし、やがてワタクシは小さき者の世界を学んでいった。

 そうすることが、水球(せかい)を小さき者で満たすのに必要だと理解していた。

 小さき者は殖えると自ずから減らし始めるから。陸地はまだ余っているのに…。

 ワタクシはそれを阻止し、ただ殖やさなければならない。この水球(せかい)を可能な限り小さき者で満たすために。もう限界と、解るまで。



 あるとき、ワタクシはなにかに呼ばれた。

 ワタクシを呼んだのは竜が小さき者に溶け込んでできた者だった。

 その者はワタクシの目の前で欠片になってしまった。

 ワタクシは欠片を集め、かつて竜といた小さな陸地に持っていった。

 小さな陸地には竜が小さき者に溶け込んでできた者の子がたくさんいた。

 その者たちは、元からいた小さき者よりも大きな力をもっていたので、危険だと思った。

 ワタクシはその者たちの力を奪い、小さな陸地に押し込めた。

 


 ワタクシは狼を思い出した。

 狼は五体とも陸地の割れ目の底や森で大きな音をたてて眠っているようだ。

 小さき者が惑っているから、やめてくれないか。

 せっかくの陸地に空きができてしまっているよ。ワタクシは満たさなければならないのだ。

 

 

 またそれからポートを何万と出入りし、次のポートを探している時、面白いポートを見つけた。あの小さな陸地に行くらしい。

 ワタクシは小さき者の世界を学んだことによって、感情というものを会得しつつあった。

 不安になったワタクシは、ハンスというそのポートに入って、小さな陸地にいってみた。

 


 小さな陸地は、力を奪ったことが効を奏したのか、ハンスの国よりも穏やかなものだった。

 小さな陸地の周りには、あの五体の竜の鱗が無数に散らばっていた。

 竜が小さき者に溶け込んでできた者の末裔はたくさんいたが、どれもその力が小さくなっていた。

 これならば、力を奪い、小さな陸地に押し込める必要はもうないかもしれない。ワタクシはしばらく観察することにした。



 ハンスというポートはワタクシの出入りに抵抗せず、非常に勝手が良い。このポートを使い続けた。

 古くなったので、そろそろ新しいポートにしようと探すと、小さな陸地にもポートが二つあった。



 その時、奪ったはずの力を感じた。どういうことだ。

 ポートの風の力は使えない。ワタクシの力を使った。

 無効化(オールクリア)する。

 古びたポートが壊れなくてよかった。



 目の前にワタクシと同じ存在がいた。翡翠色のエネルギー体。少し薄い色だ。

 竜が溶け込んでできた小さき者の末裔に染みついている。出入りは自由でないらしい。

 この水球(せかい)とは異質なるもの。干渉し、傍観するもの。

 この水球(せかい)を造り変える力をもつもの。



 ワタクシを邪魔しないで。

 その力を奮わないで。

 キミを幸せにしてあげる。

 そのポートはキミにあげよう。楽しい世界が体験できそうで魅力的だったけれど。



 幸くあれかし。

 幸くあれかし。

 

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