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愛され竜人若夫婦のちょい足し魔道生活  作者: さまのすけ


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18 初顔合わせ

「初めまして。私は鶯宿一慶(いっけい)。ぁの、名、一慶って貴方のほうが似合いそうだから、交換しませんか。ぁ、ぁ、…そうじゃなくて、そうなんですけど、えっと…お会いできて光栄です、ええっと、えと、先王陛下から芯のある優しい人だって聞いてます。仲良くしませんか?…ん…ん…やっちゃった……。あんなに考えてきたのに……」


・・・・・・・・・・  

『こんにちは。初めまして。檜原伊織、七歳ですっ。ご学友に来ました!ん?ん?ん?

 あの、えと、たくさんランタルニアの図録持って来たので、いっしょに見ませんか?』

・・・・・・・・・・


 一慶の慌てふためき落胆する様子に、伊織が初めてやって来たときのことを思い出し、ふわっと微笑んで、柾耶は言う。


「こちらこそよろしく。ご存じのとおり、私は松川柾耶。王太子だ。瑛都に出掛けるのが好きな暇人でもある。」



 かたや、波打つ黒髪に、細目の眉、垂れ目でもつり目でもない優美な金眼。首の鱗は白みがかった灰色。

 かたや、真っ直ぐの黒髪に、細くも太くもない眉、少し黄味が強めな凛々しい金眼。首の鱗は灰色。


 

 色味は似ているが、雰囲気は全く似ていない二人は、会いたい旨の文を認めた翌日、早速、竜舞城黄梅の間で顔合わせしていた。ここはかつて前側用人、鶯宿七海の部屋であった。なんとなく黄味がかった、至って簡素な、仕事をする部屋といった趣である。


「あの、早速ですが、私、いま、先王陛下の祐筆を始めたばかりで、この仕事を続けたいなって思ってて、王とか王太子とか考えたこともなくて。私、鶯宿で慈しんで貰ってて、貴方のものを盗ってたみたいで申し訳なくて、その、貴方が王になるべきだと思っているのですが。」


「避けて通れない話だから、腹を割って話そう。私は先ほど言ったとおり瑛都に出掛けるのが好きな暇人だから、王位に拘りはない。私は楠瀬家に庇護され、鶯宿殿にも支援して貰っていたそうだから、貴方に何かを盗られたとは思っていない。むしろ、王太子の身分を奪ったと思っている。貴方であれば、少なくとも王妃殿下の情は得られたであろうし。王家の正統たる貴方を差し置いて、誰が王になれる。貴方が王だ。」


「そうでしょうか。それはランタルニア人など、竜人以外で重視される考え方であって、こと竜人にあっては、あまり重視しても意味がないと考えています。竜人は卵生で、色味などが似ているという程度で、身形や才は親子に受け継がれません。いわば、色味の似た者を天から預かっているに過ぎない、と鶯宿七海と私は考えているからです。そしてそれ故、私は鶯宿に慈しまれて育ちました。子は自分のものではない、しかし一年の間、名づけ、慈しんだ子も幸せになって欲しい、そう思って貴方を支援したと父は言っています。私は自分が慈しまれて育ったという事実を前にして、王家の正統性なるものを重視することはできないのです。私は側用人になりたい。相応しい貴方こそを王として。真相を公表しなければ叶うことです。王になるのは嫌ですか?」



・・・・・・・・・・

 私は貴方が王、彼方(あちら)が側用人だろうと予想するよ。王の風格は他人に磨かれて生まれるものだ。貴方は努力でその磨きに耐えた。二十年かかって磨き上げられたものに彼方が今更太刀打ちできないからね。輝きに圧倒されて一瞬で決着してしまうだろう。貴方の努力の結果だよ。誇っていいんだよ。

・・・・・・・・・・



「嫌ではない。そう思って生きてきたから。職が選べる、鎖から解き放たれた、とは思ったが。竹丸に忍者として雇って貰おうと思ったな。」


 「相応しい貴方こそ」の言葉で、一慶と会うと決まった前日、思い悩む柾耶に微笑んでくれた紫矢の言葉が甦る。つくづく先を読むのに長けた人だと思う柾耶である。


「では貴方がそのまま王になってください。厚かましいついでに、名を交換して頂けると嬉しいです。『一慶』の名は私には強過ぎる。私は自分の本当の名、柔らかな響きの、『柾耶』が欲しいです。交換しましょう。」


「あい分かった。ふふ、一慶が私に相応しいかどうかは分からないが、柾耶は貴方に相応しいな。真っ直ぐだが優美だからな。では表では今の名だが、それ以外では交換しよう。私も父が名づけた名が欲しい。」


 ふふふ、終いには堪えきれなくなって、ハハハハハ、と笑い出す柾耶。


「失礼。初めの挨拶が、あれで、私のおっちょこちょいで可愛らしい弟分を思い出して、心配になったのだが、なかなかどうして、いつの間にか論破されて言い包められてしまった。聞きしに勝る聡明な人だ。」



 初顔合わせが笑顔のうちに終わり、控えていた紫矢、七海を呼び、話し合った内容を伝える。二人は名を交換することにしたこと以外は涼しい顔をして聞いていた。だろうね、と言わんばかりである。


「では、その様に。殿下も一慶殿も、多少の補佐があれば十分こなせるでしょうから、直ぐ即位ということでも宜しいですか?」


「私は、構わない。」


「私も構いません。」


「では、諸事その様に進めます。ところで、もし差し支えなければ、痣を見せて頂けませんか。七海殿に、襟元を覗く程度で見えると聞いたものですから。ふと思い出したことがありまして。」


 頷いた一慶に、ちょっと会釈して紫矢が襟元を覗く。痣を見た紫矢は前髪を掻き上げ、溜息を吐いた。


「なんと嘘から出た実というかまぁ…。この痣ならば、私の息子にもございます。とすれば、これが『嫡男の痣』で間違いないでしょう。伝承の類いと思っていたが、まぁ。」


「竜人に真の親子を確かめる術はないと思っていましたが、今のところ唯一それたり得そうですな。」


「確かに。息子は武術を嗜みます故、打ち身かと思ったので気にも留めませんでした。お見せ頂きありがとうございました。」


 王妃の言いがかりが思わぬ真実であったことに、呆れる一同であった。



     ◇◇◇◇◇



 国政に関しては概ね有能であった柾史のお陰で、然したる混乱もなく引き継ぎを終え、松川柾耶は竜舞国国王として即位した。

 即位にあたり、祝いや催しが行われることは特にない。大きな町の領主が代替わりした、それだけのことだからだ。事実、交易に沸く大湊の領主、楠瀬の代替わりのほうが余程、話しの種になる。商いに影響が大きいからである。

 約束どおり鶯宿一慶を側用人に登用し、楠瀬紫矢と鶯宿七海を大所、高所からの補佐の任にあたる参与に据えた。国政は滞りなく、城内も常のとおりだ。

 


 表向きには、王妃の静養に伴うため、国王が退位したことになっている。柾耶が実子でないということは箝口令が敷かれ、知る者はほぼいない。しかし、もともと城内には鶯宿の信奉者が多かったので、王妃が襲撃者であったこと自体は公然の秘密となっている。


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