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愛され竜人若夫婦のちょい足し魔道生活  作者: さまのすけ


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15 鉄面皮の焦り

 紫矢、柾耶、竹丸の三人が抜け道を出ると、伊織と倫子が抜け道を見守るように立っていた。足音がしたからだろう。


「やあ、どうも。お邪魔するよ。少し事情があってね、城の青蘭の間は改装してるんだよ。まぁ、こちらと似たようなものだがね。」


 紫矢はそう言うと、伊織と倫子の後ろを見て、眉をしかめる。

 まるでここが襲撃されたのかというぐらい、土間、式台、板間の辺りから廊下、畳まで、大きな足形がくっきりしたり曖昧なものも含め点々と付いている。障子にも引手や紙に砂のついた黄土色の手形が付いている。ときどき所々汚れた足袋かなにかで拭き取ったようで、汚した者の誠意は感じる。しかし、掃除しても取れなさそうだ。とにかく砂だらけだ。


「はぁ……。確かにこれはないな。あの障子はもう取り替えだし、その辺の畳も怪しいな。なんで土間に土まみれの掃き(はたき)が?」


「……箒じゃないのか?」


「竹丸、殿下に掃除をお教えしなかったのか。まったく世話焼きなんだから。」


 俯く柾耶と竹丸であった。



     ◇◇◇◇◇



「……殿下、少し落ち着かれましたか?」


 倫子と伊織には別室で竹丸が話をすることになり、紫矢はいま、柾耶と相対している。ふたりの手元には倫子の淹れた薬草茶が湯気を立てている。薬草に疲れがとれる魔道を施して、それを茶にした。売り物ではない。


「お気遣いありがとうございます。それで、鶯宿殿と会うかということでしょうか?」


「それもある。しかしそれと別に少し問題があってね。この国の王妃を捕縛するにはどうしたらいいと思う?町奉行は町の司法の権限を持っているが、城はどうだろうね。確かに町のなかにあるがね。」


「………。」


「全く前例のないことだ。仮に捕縛ができても今度は刑をどう決めるかもある。少なくとも捕縛は陛下の裁可が要るとすべきだろうね。町方を借りるとしても。それでね、まず、捕縛に関しては陛下が拒否できない状況にしたい。できれば陛下の目の前で王妃が貴方を狙うくらいがいい。今のままなら陛下の裁可は五分だ。陛下は王妃を盲信しているからね。」


「……。」


「勿論、このことと貴方が鶯宿殿と会うか否かは必ずしも関係しないよ。直ぐにでもというなら知らせを送る。ただ、鶯宿殿はもう貴方に会っているし、ふふ、薬舗に来て貴方を見ているんだよ。貴方の身を案じておられてね、一刻も早く王妃の捕縛をお望みでね…ふふふ。図らずも竹丸を護衛にしながら。」


「? 兄様をつけてくれたのは鶯宿殿だと?」


「ふふ。私がつけたのは兄としての竹丸。特忍にしたのは彼だ。彼というか貴方のお祖父様だね。まぁそういうわけで、ふふふ。ふ。鶯宿殿は伝達鳥に返信でなくて、書き損じを持たせて飛ばされてね。捕縛方法で頭が一杯のようだ。あのなかなか変わらない表情でどれだけ……。ふふ。さてまぁ、切れ者鶯宿殿を焦らせる大問題が解決するまで少し待ってくれるかな。」



     ◇◇◇◇◇



「母と思っていた人にそんな…。」


「あ、倫子さんそれは大丈夫っす。殿下は二人のこと、そういう名の案山子かなんかと思ってるはずです。たまーにどうでもいいこと言ってくる案山子っすね。本当の親のことしか興味ないでしょう。」


 薬作りの部屋ではこちらも倫子のお茶を飲みながら、襲撃の真相を竹丸が説明していた。


「それよか、ここから先がなぁ。駒をやっっと掴んだんだが、ここまでかかった奴だ、狡猾だし抜群の忠誠だ。口を割らねえ。紙屋の主人なんだがな、王妃も手紙だけで顔を知らねぇはずだ。陛下を黙らせるほど結びつけられねえ。」


 竹丸は瑛都の襲撃者を空にし、王妃の駒が襲撃者の募集を掛けに行かなければならない状況を作った。そして、王妃の実家があるので、次の募集が東湊で掛けられることを見越し、花鳥風月に東湊で見張らせたのである。大湊への買い物は襲撃の日の調整に一役買ったのだ。



「んー、『失われしマジック帝国』っていうの今ハンス殿と訳してるって言いましたよね。本当に色々な魔道があるもんだ、よく考えつくなーって思うんですけど、そのなかに、姿を変えるっていうのがあって。こんど僕の父様に使わせたいなーって思ってたんですけど、それ、使えませんかね。」


「姿を変える?」


「本にあるのは、鼻を高くしたり、なんですけど。ハンス殿が言うにはもっと色々できるって。倫子さんならいっそ特定の人にも変えられるかもって。ハンス殿そっくりにするとか。誰をどうするかは竹兄様と紫矢さまに考えて貰うとして、使えそうじゃないすか?」


「あぁ、伊織のお父上な…。銀さんで困ってそうだな。」


「はい。当人は銀さんの小説好きですけど。それで、倫子さん、ちょっと人に直に魔道使うのは不安でしょう?ハンス殿は薬にしたらどうか、って。塗薬でもいいし、粉薬もいいんじゃないかって。薬草茶も薬草じゃなくてお茶に魔道使うのが書物にあったっす。ポーションっていうらしいっすよ。挑戦してみませんか?」


「挑戦?」


「そうっす。石も文様の紙も無しですから。でも薬ならいつもそうだからどうです?いきなりじゃなくて僕の父様で気軽に試せます!僕ら、一冊しかない帝国の書物と僕の訳文集と全く同じものを作るのを切実にお願いしたいんすけど、その修練になるはずなんです。」


「えと、お父さまが道具かなにかみたいに聞こえるけど…。」


「そうです。僕、父様大好きっすよ。父様も大歓喜。父様は感謝しかしない筈。さぁ、やってみましょう!」


 どんどん味のいい薬草を準備し出す伊織に、竹丸も横でうんうん頷いている。


「それ、甘い味をつける薬草ね。味ってことはポー・・・?」


「ポーションっす。そうっすね…『魔道水』?『魔力水』?かな?」


「『魔道水』がいいな。なんか夢があるから。それ作ろうってことよね?」


「ええ。塗薬は汗かいたら取れるでしょ?父様、大きいんで塗るの大変だし。粉薬、飲みにくくて嫌いだし。」


「だな。あれは塗れない。大体身体を変えたいんだろ?一つ二つで足りやしないな。」


「お父さま、大きいんですね。」


「ええ、上品に言うなら。」


「一度見たら忘れられない。だから銀さんみたいに助けて貰おうって人が群がって家に帰るの大変なんだ。お父上は知らないが、こっそり花鳥風月がついてる。」


「いつもお世話になってます。で、姿を変えられたら大喜びするはずなんです。ささ、味は甘ければ良いですから、できたら何通りか作って試しましょう。」


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