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愛され竜人若夫婦のちょい足し魔道生活  作者: さまのすけ


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0 プロローグ


 …小さな島に人がいた。

  その上に赤、青、白、黒、金の五体の竜が舞い遊んでいた。

  ある日、神が降臨され、竜に陸を造るよう命じた。

  やがて神は『陸は成った』と言って、人に隠れた。

  竜もそれに倣い、人に溶け込んで竜人となった。

  竜人は次々番となり、余った青の竜人は王となった。

  強大な竜の力を持った竜人は子を成せず、王が神殿を建て、天に祈り、卵を下された。

  長き年月を経て、始めの竜人は次々息絶え、王は神殿に葬っていった。

  小さな島が竜人で一杯になったので、王は海を渡り戦って領地を拡げようとした。

  怒った神は王を滅し、竜人全てを島に閉じ込め、竜の力を封じた。

  愚かな竜人よ、島で地を這い生きるが良いと言い置いて神は去った。………



(これは禁書も(むべ)なるかな。まるで罪人だ。それに、真理ではない。)


 書物を読み終わった初老の男はその見かけにあわない軽快な足取りで神殿を去り、新月の夜の闇に消えた。


      ◇◇◇◇◇


「ふん。 はっ。 ふっ。」


 二の丸の一角で、濃紺の髪に山吹色の眼、首と頬に灰青の鱗のある青年が、羽織を翻し、息を吐きながら両手で持った長く黒い棒を突き出す。その度にどさりと重い音をたてて人影が崩れ落ちる。


「こんなもんかな。ふぅ~。………なーんちゃって。」


 手を止め、棒を片手に持って、空いた手で前髪を掻き上げる仕草をして、息を吐く。背後から襲って来た人影に、振り向くこともなく持ったままの棒を後ろへ突き出す。小さな呻き声とともに、どざっと音がして

人影は倒れ伏す。


「捕縛せよ。これでしばらく襲撃は止むだろう。祝いだ。今日は一本つける。ご苦労。」


 どことなく現れた羽織袴の男たちが、床に転がっている黒ずくめの男たちを縛り上げて、運んでゆく。


「終わったぞ~。もう外へ出掛けてもいいぞ。まずは、寝ろ。お疲れさん。」


 青年は夜具の上掛けを半分に折ってそこに足を入れて座っていた、青年とよく似た色合いの少し年若い青年に声を掛ける。

 灯が消され、辺りは静寂に包まれた。


      ◇◇◇◇◇


「なんだ?今日も襲われているのか?ほぉ~、ほ、ほ~。あ、終わった。よく見えるなここは。」


 二の丸の向かいにある本丸のとある一角から、襲撃を見ているふたりがいる。


「さ、柾耶(まさや)も無事でしたし、部屋に戻りましょう。冷えますので。」


 ふたりは仄かな灯の点った部屋に戻る。男は黒髪、女は白か灰色の髪のようだ。贅を凝らした机には、城下で評判の甘い香りの薬草茶が淹れられた椀が二つ。


「はぁ~、見たか、紫矢(しや)の息子。あれが国に二人しかいない特忍か。強い。一瞬だったな。最後のひと突きはなんだ。棒が後ろへ伸びたぞ。大湊の領主の息子だ、ランタルニアのマギーの棒だったりしてな。ハハハ。それにしても、蔦もよく気がついたな。」


「二の丸を探し求める足音がしましたので。」


 マギーだなんて馬鹿馬鹿しいことを、と呟いてから女は答えた。


「そういえば、少しざわざわしていたか。それにしても紫矢め、あれが息子なら守ってもらい放題攻め放題なんでもできるな。妻も息子も溺愛していると専ら有名だが、あれだけ鍛え上げたんだから、溺愛とやらも大したこと無いんじゃないか。ふん、切っ掛けはどうあれ、わしも妻を溺愛してるのは変わらんのに、冷たい目で見よる。」


「まぁ、そういう媚びない人を貴方が選んだだけでしょう。楠瀬は柾耶を可愛がっているようですし、貴方が柾耶へつれないからかもしれませんよ。」


「わしはわしが育てられたのと同じようにしてるだけだ。つれないのか?紫矢の息子みたいな世話焼きの護衛もいなかったぞ。仕事も紫矢に言われてやらせてる。わしはさせてもらえんかったがな。」


「さぁ。王家のしきたりがそうなのでしたら、わたくしが余計なことを申しました。」


「まぁ、今度、夕餉にでも呼んでやることにしよう。襲撃の原因もわしたちにあるのだろう?」


「あれを差し向けているのが鶯宿ですので。ここ近々は、『嫡男の痣』があるから我が子が王の子だ、とも申しているようで。」


「『嫡男の痣』か。また丁度良いものを。無駄に冴えてる男よな。それより、明日は月光石の耳飾りが届く。もう休もう。」


「何色ですか?もう青は嫌ですよ。それに、できればもう少し良い細工が欲しいです。」


「おまえには青が似合うから。深いものから翠に近いものまでいろいろあるだろう?」


「飽きました。他の色にしてください。(たま)にはわたくしの好みも聞き入れてくださいませ。ランタルニアの石、我慢しておりますのよ?」


 夜は更けてゆく。


   


マギー…マジック(魔法、魔術)のドイツ語風読み。

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