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転生した子供部屋悪役令嬢は、悠々快適溺愛ライフを満喫したい!〜二つの王冠の子〜  作者: 木風


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第3話「厳しさと強引な囁きと」①

……午前の授業を終え、控室に戻ると。

卓上には軽食が用意されていた。サンドイッチに果物、温かなポタージュ、焼き立てのパン。


「お疲れ様」


ソファに腰かけ、足を組んで微笑むエドの姿があった。


「なっ……なんでいるんだよ!!?」

「我が婚約者と食事を共にするのは、おかしいことかな?」


そういえば昨日、彼は囁いていた。


『……リエル。近いうちにまた会いに行くから』


結局、会いに来られる前に、私の方が王宮に呼び出されたんだけど……。

つまり、最初から知ってたな!?お妃教育が王宮で行われるって!


「君たちもご苦労だったね。呼ぶまで下がっていてくれるかな」


もう……なんで侍女下がらせるんだよ……下心見え見えかよ。


ぐったり椅子に沈み込み、スープをひと口。

胃にじんわり染み渡り、思わず声が漏れる。


「……生き返る……」

「パンも食べられるかな」


一口大に裂いたパンを、当然のように口元へ運ばれる。

ああ、これがマティルダが言っていたパンの裂き方か。……なるほど、全然わからん。

味は同じだろ!そのまま齧ったって絶対美味しいって!


スープを飲み、差し出される食事を受け入れるうちに、次第にお腹がいっぱいに。

「ふぅっ」と息を吐いて、ソファの背もたれに体を預ける。


「リエル……」


名前を呼ばれると同時に、エドの手が私の頭に添えられ、優しく膝の上に導かれた。

びっくりした……てっきりキスされると思ったのに……!


「すまないね。君が拘束されるような時間を嫌うのはわかっているのに……」

「いいって。キツイけど、私なりに頑張ってみるから」


……そういえば、エド全然食べてないな。

私の心配だけでここに来たのか。

優しく撫でる手の温もりに、張り詰めていた気持ちがほどけていく。


「目を瞑っていてもよいよ。時間になったら起こすから」

「……うん」


まぶたがゆっくり落ちていく。

その時、唇にふわりと何かが触れた気がしたけれど……。

……心配してくれた気持ちに免じて、今日は大目に見てやる。


経理官が数字や帳簿を次々と並べ立て、女官長が行事の日程を延々と説明していく。

うぅ……これ、完全に数学のテスト受けてる気分じゃん……。

理系だから数字自体は嫌いじゃないけど、分野が違いすぎて頭が悲鳴を上げてる。

しかも全部手計算って正気かよ。誰か、早くエクセルかスプレッドシートを持ってきてよ!!!


頭の中身が半ば石化しかけたその時……。


「まあまあ、そんなに堅苦しくしなくても大丈夫ですわ」


ふわりと入室した王妃の声に、空気が一変した。

経理官も女官長も慌てて深々と頭を下げ、そそくさと退室していく。

部屋に残されたのは、私と王妃だけ。


「わたくしも昔は、この授業が大の苦手でしたの。数字も帳簿も、さっぱりでして……」


そう言って、王妃は机の帳簿に視線を落とし、ふっと笑みを深める。


「ある日、孤児院に寄付するために『パンを百個』と書くつもりが、零を一つ多くしてしまって……」

「……千個?」

「ええ。結果、王宮の裏庭いっぱいにパンの山が築かれてしまったのです」

「えぇぇぇ!」


思わず声が裏返る。頭の中に、パンでできた小山を前に途方に暮れる王妃の姿が浮かんでしまった。


「結局、兵士たちや侍女たちまで総出で配る羽目になりましてね。

今では笑い話ですが、その時は冷や汗が止まりませんでしたわ」


え、そんなドジするんだ……可愛い!

王妃がくすくすと笑う声は、昨日のお茶会の時と同じ朗らかさで。


「だから、大丈夫ですよ、アリエル嬢。最初から完璧にできる人なんておりません。

大切なのは、誠意を持って向き合うこと。そして困ったときは、誰かを頼ることです」


そう言いながら、王妃は私の手をそっと包み込み、柔らかく微笑む。

その温もりに、胸の奥の緊張がじんわりほどけていくのを感じた。


「……それからもう一つ。エドが困ったことをしたら、いつでもおっしゃってね。

わたくしがすぐに、ゲンコツをしに参りますから」

「えっ……!」


あまりにさらりと言われて、思わず聞き返してしまう。

けれど王妃は真顔のまま、にっこりと笑っていた。


え、ほんとに、ゲンコツ!?あの完璧主義なエドに!?


「ふふ。今でこそあんな感じだから、意外に思うかもしれないけれど、あの子も昔は少々やんちゃでしてね……。

まだ十にもならぬ頃、授業を抜け出して庭で昼寝していたことがあったのです」

「抜け出して昼寝……!」


思わず素っ頓狂な声が出る。あのエドが、授業をサボって昼寝!?


「見つけたときに叱っても効き目がなくて、仕方なくゲンコツを落としましたら……。

大袈裟に泣いて、半日も拗ねておりましたのよ」

「ぷっ……殿下も拗ねるんですね」


思わず笑ってしまう。なんだそれ、可愛いじゃん。


「だから大丈夫。……いざとなったら、わたくしが再びゲンコツを振るって差し上げます」

「あはは!今の姿からは全然想像できないです!その時は、お願いします」


エドにもちゃんと子どもらしい過去があるなんて。

緊張で固まっていた肩の力がふっと抜ける。


厳しい授業の合間に訪れた、ほんのひとときの温かさ。

そのおかげで、もう少しだけ頑張れるような気がした。

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よろしくお願いします( *・ㅅ・)*_ _))ペコ

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