第16話「忘れ物のキスと、神さまへの誓い」①
まぶたを開けた瞬間、朝の光が差し込んで眩しい。
ぼんやり伸びをして……一糸まとわぬ姿なのに気が付く。
……あれ?……私、素っ裸……!?
慌てて布団をめくりかけ、すぐにガバッと閉じる。
隣ではエドが、涼しい顔でまだ眠っていた。私と同じくもちろん裸。
いやいやいや!神様!なんでこの人だけ絵画みたいに美しく寝てるの!?
均整の取れた筋肉質の身体……お前、Tarzanの表紙でも飾るつもりかよ。
コンコンコンッ。
「王太子妃殿下、朝のお仕度にございます」
外から侍女の声がして、心臓が飛び跳ねた。
やばいやばいやばい!さすがにこれは……いかにもな事後すぎて恥ずかしすぎる!
「えっ、えっと……ちょっと待って!!」
声が裏返りながらも必死に返事をする。
布団の端を掴んだまま部屋を見回すと、昨夜脱ぎ散らかしたネグリジェやらエドの服やらがベッドの下に無造作に落ちていた。
……あぁぁぁっ!なんでこんなとこに落ちてんの!!
必死に布団を握りしめつつ手を伸ばそうとすると、今まで経験したことのない違和感が身体のあちこちを走り、思わず悲鳴を噛み殺す。
バランスを崩しかけた瞬間、後ろから大きな手が抱きしめてくれた。
「……気を付けて」
……え、なにこれ……腰バッキバキなんだけど!?
ほんとに昨夜そんなに動いた!?私!?
いや、動いてたのほぼエドだった気がするけど……じゃなくて……。
振り向けば、半分寝ぼけ顔のエド。彼も素っ裸なのに……
「……おはよう、リエル」
「……いや、おはようじゃねぇよ」
体力バケモンかよ……!何キラキラ艶々してんだよ……!
「王太子妃殿下、そろそろ本日は神殿に祈りを捧げるお支度を……」
ちょ、ちょっと待って!?歩ける気がしないんですけど!?
え、マジでみんな初めての後ってこんな感じなの?
無理無理無理!ってか祈りって何?この状態で神殿なんて……拷問かよ!!
今『祈れ』って言われたら、このまま寝かせてくれって祈っちゃうんだけど……!
ネグリジェを拾って着ようと悪戦苦闘する私の横で、エドは手早くズボンとブーツだけを履き、侍女が待つドアを少しだけ開ける。
「すまないね、もう少し待っていてくれるかな」
短く伝えると、またベッドに戻り、私からネグリジェを受け取って着せてくれる。
「まいったな……このままベッドに閉じ込めてしまいたくなる……」
「……っ……そんな……」
甘い言葉に、昨晩のことが鮮やかに蘇り、顔から火が出る。
なんなんだよ。上半身裸のくせに、白いズボンに黒のロングブーツって……
一部の層にぶっ刺さりそうな癖丸出しの格好すぎだろ……!
ananの例の特集にでも出る気か!?
エドの手が頬に伸ばされ、そのまま唇が重なり、強く抱きしめられる。
「……こんなに離れ難くなるなんて、思わなかった」
思わず『私も……』なんて口走りそうになって、慌てて口を噤む。
「そろそろ侍女を呼んであげないと、ドアの向こうで困っているかな……。でも、もう少しだけ……」
最後にもう一度、深く長いキス。
それから彼はベッドを離れ、シャツを羽織りながらドアを開け、侍女を呼び入れた。
……ヤバい。なんだこれ。
シャツを羽織る姿から、歩き去る後ろ姿まで……昨日までと全然違う。
たった一晩で、なんでこんなに特別に見えるようになっちゃったんだろう……?
「王太子妃殿下、失礼いたします」
「私は一度、自室に戻るから、アリエルを頼む」
手早く昨晩の服を手に取り、部屋を出ていこうとするエドの後ろ姿を見つめる。
そうか……この部屋にはエドの着替えは無いんだもんな。
名残惜しく背中を見送った次の瞬間、くるりと振り返ってベッドを降りようとした私の前に、エドが再び戻ってきた。
「忘れ物をしてしまった……」
「え?何……っ」
言い切る前に、額にそっとキスを落とされる。
「また後で」
そう一言だけ残して、呆然とする私を置き去りに、颯爽と部屋を出て行ってしまった。
……なにそれ……反則じゃん。本当に昨晩まで童貞だったやつのやることかよ。
思わず侍女たちに視線を向けると、さすがというか『何も見てませんよ~』という顔で黙々と準備を進めてくれている。
ホッと息を吐いたのもつかの間。
「昨晩は滞りなくお済みになられたようで……」
「……は?」
一瞬で頭が真っ白になる。
耳から変な音が漏れそうになるのを必死で堪えた。
ちょ、ちょっと待って!?滞りなくって……。
あっ、そういえば前にもあった!何も無かったのに、エドが泊まった時に同じことを言われたじゃん!
でも今回は……確かに滞りなく、済ませたわ……。
「王太子妃殿下、お風呂のご用意も整えてございます」
!!!!!!!!
いやいやいやいや!!もう、事実だけど!!そんな改めて言わないでよ!!
「さぁ、すぐにお体を清めていただきましょう」
「その間に、ベッドも整えておきますので」
待ってましたとばかりに侍女たちが押し寄せ、あっという間に両脇を抱えられる。
「えっ、ちょ、ちょっと!?まだ立てないんだけど……!」
「お疲れでしょう、だからこそ香油でよくほぐさねば」
抵抗むなしく湯殿へと連行され、花弁が浮かぶ湯に沈められる。
温かな湯がじわりと沁み、思わず力が抜けそうになったが……すぐに髪へ、背中へ、腕へと侍女の手が伸びる。
まるで儀式みたいな念入りさに、もうなすがままにされるしかなかった。
髪を結い直され、頬に淡い紅を差され、香油を馴染ませられる。
磨き上げられていく自分の姿に、胸の奥がむず痒い。
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よろしくお願いします( *・ㅅ・)*_ _))ペコ
※本作には、この物語の前段階にあたるお話しがあります。
ご興味のある方はそちらもご覧いただけると嬉しいです。
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