第14話「ウェディングケーキとファーストバイト」①
挙式と誓約を終え、鐘の余韻に包まれながら、私たちは堂外へと導かれる。
外には王都の大通りを埋め尽くすほどの群衆。
旗と花びらが陽光を浴びてきらめき、兵士たちは整然と並ぶ。
民衆の歓声が高まるたび、石畳が震えるように感じた。
……ひぇぇ。これ、想像以上に人が多い……!
婚約式がアリーナなら、今日は完全にドーム級じゃん!?
転生デビューして八カ月で立っていい舞台じゃなくない!?
会場の規模、もうちょっと段階踏んでくれないと、ほんと心臓もたないよ!
公民館くらいから始めてもらわないとマジで困るって……!
「国民すべてが、美しいリエルに恋してしまうだろうね」
「!!?な、なに言ってるんだよ!?」
花嫁馬車が用意され、エドに手を差し伸べられて乗り込む。
扉が閉じる直前、彼がさらりと口にした。
「心外だな……少なくとも一人、君の目の前の男は恋しているのに」
「~~~~っ、だからっ……なんで……そんな恥ずかしいこと……!」
扉が閉じ、楽師が祝賀の曲を奏で始める。
行列がゆっくりと動き出し、沿道からは花びらが舞い、子どもたちの弾む声が飛ぶ。
「殿下ー!」
「花嫁様ー!」
その度にエドは堂々と手を振り、凛とした微笑みを浮かべる。
……さすが……王子様スマイル完璧……。
こうして見ると本当に絵にかいたような王子様なんだよなぁ。
ただ、ストーカー気質なのが玉に瑕なんだよなぁ……。
次々と浴びせられる歓声に背中を押され、思わず私も手を振り返す。すると、さらに拍手と声援が大きくなった。
ちょっとだけ……アイドルがファンサするときの気持ちが分かった気がする。
人生でこんなにも多くの人に祝福されるなんて、そうそう無い。
ありがたい……きっとエドが国民に愛されている証なんだろうな。
馬車は王都の大通りをゆっくり進む。花びらがひらひらと舞い、祝福の声は絶えない。
その光景はまるで豪奢な絵画の一場面のように華やかだった。
「きれい……!」
思わず漏れた私の呟きに、隣のエドは民衆に手を掲げながら、ちらりと横目で笑みを寄こす。
堂々とした姿、揺るがぬ所作……やっぱり王太子としての二0年は伊達じゃない。
……うぅ……ずるい。こっちは必死に笑顔作ってるのに。
歓声と花吹雪の中、私たちを乗せた馬車は王宮へと、ゆっくりと戻っていった。
祝賀のパレードを終えたあと、私たちは王宮の大広間へと導かれた。
……うわ。文字ベースで見ていたタイムスケジュールより、はるかにきっつい!
夜まで持つ気がしない。すでに体力ゲージが半分くらい削れてる気がするんだけど……。
天井に届くほど巨大なシャンデリアがいくつも輝き、金と赤を基調とした装飾がまばゆく光を放つ。
壁には王国の旗と三大公爵家の紋章が誇らしげに掲げられ、ここに立ち会う全員が『この婚姻こそ国の未来を支える』と無言で語っているかのようだった。
杯を掲げた国王が、威厳に満ちた声で高らかに告げる。
「エドガーとアリエルの婚姻を祝い、王国の繁栄と両家の結びつきを祝して乾杯!」
「乾杯!」
一斉に響く高らかな声。金と銀の杯が打ち鳴らされ、澄んだ音が重なり合って天井まで反響する。
楽師の奏でる華やかなファンファーレが広間を満たし、空気は一気に祝宴へと切り替わった。
隣に立つエドと目を合わせ、控えめにグラスを合わせる。
チンッと小さな音が心地よく響き、シャンパンが喉を潤す。
きりりとした泡の刺激が、疲れた身体をほんの少しだけ覚醒させた。
続いて、宮廷楽師たちが本格的に演奏を始める。
竪琴の柔らかな旋律、笛の澄んだ音色、そして重厚な弦楽器の和音。
重なり合う音が空気を鮮やかに彩り、広間全体をきらめかせる。
やがてその音楽が一度静まり、壇上に新たな人影が並んだ。
父であるクローバー公爵のほか、ヴァレンシュタイン公爵、ルーメン公爵……
『王国の三柱』と呼ばれる三大公爵家の当主たち。彼らが揃って祝辞を述べるために進み出る。
「この婚姻は王国の未来にとってかけがえのない結びつきとなるでしょう」
「我らもまた、この繁栄を守り続けることを誓います」
重々しい言葉が広間に響く。私は壇上の三人を見上げ、自然と息を呑んだ。
気になるのはただ一人……ヴァレンシュタイン公爵。セシルと共に帝国へ弔問に行った人物だ。
エドは『この結婚がセシルの助けになる』と言っていた。
けれど今の公爵の顔には、邪魔されたと怒る色はまるで見えない。むしろ静かで、底が読めない。
それは王と王妃の隣、一段下がった位置に座る后妃も同じだった……。
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よろしくお願いします( *・ㅅ・)*_ _))ペコ
※本作には、この物語の前段階にあたるお話しがあります。
ご興味のある方はそちらもご覧いただけると嬉しいです。
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