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転生した子供部屋悪役令嬢は、悠々快適溺愛ライフを満喫したい!〜二つの王冠の子〜  作者: 木風


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第10話「二つの王冠、跪いた王太子」②

「お嬢様、殿下がお越しです」

「えっ!?なんで今!?」


さっき王宮に戻ったから、もう安心してネグリジェに着替えちゃったのに。

まぁ、エドならいいか。


「しばらく二人きりにさせてもらえるかな」


そう言って人払いをし、ソファに腰を下ろす。

隣に座ったエドは、どこか言い出しづらそうに視線を伏せていた。

きっと、帝国の件だ。


「リエル……良い知らせと悪い知らせ、どちらを先に聞きたい?」


はぁぁ!?


「やめろやめろ!それドラマでしか聞かないやつ!!どうせ両方ろくな知らせじゃないだろ!!」


もったいぶった挙句に何を言い出すんだ、この男。

どこの海外ドラマだよ!!勘弁してくれ……!


「では、よい知らせから……」

「聞きたくない聞きたくない聞きたくなぁぁい!!」


思わず耳を塞ぎながら声を上げる。


「俺とリエルの結婚式が早まった」

「あぁぁぁぁあああああああああああああああ!!」

「悪い知らせは、セシルの婚約が決まるかもしれない」

「あぁぁぁぁあああああああああああああああ!!!」


……ん?


「それさ、良い知らせと悪い知らせ、逆じゃない?」


手を下ろし、エドに向き直る。

彼は困ったように眉を寄せ、それでも真剣な瞳で私の手を取ると、次の瞬間、わざわざ椅子から降りて跪いた。


「セシルの婚姻はただの婚姻ではない。相手は……帝国の皇女の可能性がある」

「……!」


帝国……。

セシルの結婚が政治利用されるってこと!?

まだ12歳の子なのに。私を姉上と呼んでくれたあの幼い笑顔が、脳裏に浮かぶ。


「俺は……セシルには幸せになってほしい」


その言葉に胸が締め付けられる。

私だって同じ気持ちだ。

セシルだって王太子だから、好きな人と結婚できない可能性はもちろん、政略結婚の可能性は理解しているだろうけど、よりによって帝国なんて……。


「わかった。私は何をすればいい?」

「それは……」


言い淀むエドに、逆に問いを投げる。


「結婚を早めれば……セシルを助けられるの?」

「……結果的には、そうなる」


エドはあの時、婚約式で交わした約束を守ろうとしてくれているのか。


『リエル!すまない、ずっと騙すような真似を……』

『二度としない。約束しよう……』


彼の声は必死で、こちらも胸が痛む。

結婚を早めるというのは、きっと並大抵のことじゃない。

『結果的に』という言い方の裏に、不確定な要素があることも察してしまう。


「……で、いつになるの?」

「……4月1日だ」


……は?


「ふざけんなぁぁぁぁぁ!!!残り3カ月切ってんじゃん!!!」


私の叫びが虚しく屋敷に響き渡るだけ、報告された時点で決定事項なのは目に見えていた……




応接室に入ったセシルは、まだ幼い手でカップをぎゅっと抱きしめていた。

指先がかすかに震えている。胸の奥が重く沈む。


「セシル……弔問に、本当に行きたいのか?」


問いかけると、セシルは一瞬だけ瞳を揺らし、すぐに伏せる。


「……お母様の望みなら、従うまでです」


静かな答え。けれど、それが強がりでしかないことは明らかだった。

たった12歳の子どもなのに、帝国という巨人を背負わせようとしている后妃の冷徹な意図が脳裏をよぎってしまう。

セシルは……どこまで理解しているのだろう。

彼の頭上に二つの王冠が載せられようとしていることを。


「セシル殿下……」

「姉上。ご心配、ありがとうございます」


声をかけると、セシルは無理に微笑んで答えた。

その笑みは痛々しく、必死に貼り付けた仮面にしか見えない。

こんなに小さいのに、やっぱり王子様で、自分の立場をしっかりわかっているんだ。

エドが手を伸ばし、セシルの頭にそっと置いた。


「困ったことがあったら、いつでも頼れ。俺はお前の兄だ。必ず守る」

「……はい、兄上」


小さな返事はかすれるほど弱々しい。

エドがセシルをどれだけ大切に思っているか。

そして、セシルがたくさんの物に板挟みになっていることが、痛々しいほど伝わってくる。

守ってあげたい。

守られるべきはずのこの子を。




お妃教育が週三から週七に増え……ガチの通勤令嬢、爆誕。

伏線回収とか、いらんて……!


転生悪役令嬢モノで、誰もこんなハードワークしてなかっただろ!?

小説のテンプレでは、ざまぁ展開やイチャラブシーンでうっとりしてる頃じゃないの!?


毎朝、眠気と戦いながら馬車で王宮に通い、午前は歴史と政治、午後は礼儀作法。

夜は衣装合わせや舞踏の練習。

ランチとディナーは一切気の抜けない王妃とのマナー講座……。

時々エドが同席してくれたけど、私に甘いことばかり言うから『退出なさい』と出禁を食らう始末。


気づけば寝落ち、気づけば朝。

なんだこれ、医者時代の当直よりブラックなんだけど!?


タイミングがあれば、またエドに街の本屋に連れて行ってもらって新しい本を仕入れたいな☆

……なんて妄想していたけど、そんな余裕なんてどこにも無い。


ついには溺愛シーンもカット。

ざまぁ展開?無い無い。

みんなが期待してるようなスカッと劇場、全カットでマジですみません。

こんなにブラックな扱いを受けてる悪役令嬢なんて、きっと私くらいじゃない?

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よろしくお願いします( *・ㅅ・)*_ _))ペコ

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