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怪盗K  作者: Yuyu
5/17

カスは勘違いされる

ド素人ってある意味無敵だよね

「よいしょー」


俺が投げた音が鳴るおもちゃは狙い通り俺と反対側に落ちてずっと同じ言葉を話している


「gdhdjd!?」


「vsjdkd!」


「「hb!」」


流石に対応が早い。軽躁な男が迅速におもちゃへと向かっていく


慎重におもちゃに近づいているが、それはただのモンスターを捕まえたって言うだけの機械です


何も罠なんてありませんよ


だが、その慎重さが俺には絶好のチャンス


音を立てずに迅速に一階との階段まで行く


やはりどうしても近くまで行くと足音が聞こえたのか、他の3人が張り詰めた顔をこちらにも向けてくる


「(ふっ馬鹿が)」


俺は心の中で言いながら、ポケットからだしたあるものを3人に吹きかける


「「「gdhwhd!!!」」」


今回吹きかけたのは熊撃退用の防犯スプレーだ


うちの親が最近市街地にも熊が出てくることを危険視しているようで、玄関にあったこれを拝借していたのだ


熊撃退用スプレーを吹きかけられた3人はまるでぎゃー!とでも言うような感じで悶えていた


そりゃそうだよね。急に吹きかけられたら防ぎようがないし、まして透明の俺からの攻撃だ、よっぽど勘が良くないと避けることなんて難しいだろう


3人の悲鳴を聞いた軽装の男が警戒しつつもこちらに戻ってきているが、その間に俺は一階への階段を登っていた


ーーーー


階段を登りきると、ドアが閉まっていたので開ける


開けた先には職員たちはおらず、受け付けのところにも職員どころか冒険者も誰一人いなかった


いや人はいた。ただ一人だけだが、髪の色は年齢により白髪が混じっているが、その肉体は鋼のように硬く、普通の冒険者ならばその威圧だけで震えてしまうようなたたずまいであった


さらに腰には現役のときから使っているドワーフに特注で鋳ってもらった業物の双剣を腰にないでいた


そして、その怪物が閉じていた目をゆっくり開けた


「ほう、扉は開いても誰もいない。いやいるにはいるのだろう、なぁ盗人よ」


「(な、こいつさっきの偉そうな奴がいそうな部屋にいた初老の男か?)」


普段あまり人の顔を覚えない小次郎であったが、初老の男、カルロ・グランバックだけは覚えていた


カルロ発する強者特有の圧迫感や経験豊富そうな佇まいを見て、小次郎は本能的にこの建物の中で一番の脅威はこの男だと感じていたのだ


「(まずいな、こいつあの要注意人物じゃねぇか)」


小次郎は地下の4人組よりも警戒していたカルロに会ってしまったことに、自分の逃走が難しくなったことを悟った


「盗人よ、貴様が何の目的でここに来たのかわからんが、我がギルドにある宝物庫の中を持っていってもらうわけにはいかないのだよ」


「だから、おとなしく捕まってくれないかね?」


「(さっきから何か言ってるけど何言ってるかわかんねぇよ)」


小次郎はカルロが何を言っているかわからないのでせっかくの投降の指示も意味をなさなかった


「ふむ、投降の意思はないか。ならば少し力ずくで捕まってもらおう」


そう言った途端にカルロが消えた


「ッツ」


小次郎が避けられたのは奇跡だった


カルロが消えた瞬間に小次郎は前へと跳んでいたのだ


ほぼ勘で動いたが、喧嘩もしたことがない小次郎が縮地で横まで来たカルロの斬撃を避けられたのは、ちょうど逃げようとした瞬間にカルロが攻撃をしかけてきただけだった


「ほう、これを避けるか。貴様のその透明になるのは固有能力ギフトか?それとも魔道具の類か?まぁ透明になれる魔道具など聞いたことがないからな、貴様のそれは固有能力ギフトだろう」


カルロが話しかけてきているが、小次郎はそれどころじゃない。カルロが消えたと思いきやすぐ真横に現れたのだ


こんなの地球じゃありえない運動能力なので、盛大に心の中で焦っている


「(あばばばばばば、や、やべぇぇぇぇ!!!こんなファンタジーな世界でいきなりこんなヤバい奴が相手なんてどう逃げればいいんだよ!俺はただの自宅警備員のアラサーだぞ!?)」


それはもう泣きそうな顔で焦っていた


「(ま、まずは落ち着け俺!別にあいつを倒さなきゃいけないわけじゃないんだ。逃げることだけを考えろ!)」


覚悟が決まったのか、小次郎はバッグからアイテムその2を取り出す


その間カルロは小次郎が動く気配がないことに疑問を感じながら罠かもしれないと動けずにいた


そうして、小次郎の準備が出来て手に持ったアイテムを開けて床に垂らしていく


小次郎が何を垂らしているって?


ローションである


このローションは小次郎が楽しいおもちゃで一人で遊ぶときに良く使用しているお徳用ローションなのである


それを透明にさせながら、床に垂らし準備を完了させる


準備は整った。あとはただ一つの行動を起こすだけだ


「ふっそこだ!」


案の定小次郎が行動に移した瞬間にカルロは今度こそ逃さないとばかりに小次郎の目の前まで縮地で迫ってきた


だがそんな状況で小次郎の口には笑みがあった


「(速い!だがもうそこはお前にとって躱せない場所になってるんだよ!)」


そう、地球では多くの人がお世話になっているだろうローションだが、こんな中世ヨーロッパみたいな世界でこんなぬるぬるするものなんてないだろう


人は滑る場所では転んでしまうものである


どんなに体幹が良くても、ローションがない世界の人が突然の滑りに対応出来るものは少ないだろう。転ばないにしても態勢を崩すことくらいはできる


カルロも例外ではない。むしろ縮地で来た分、より滑りが良くなっているようで、そのままずでんと頭から勢いよく転んでいった


「ぐあ!?」


思わず声を出してしまうカルロだったが、小次郎はそんなこと関係ないとばかりに窓へと走り寄っていく


「ッシ!」


ガシャン!


小次郎が手に持ったトンカチで窓ガラスを壊したのだ


小次郎は職員やあれだけいた冒険者がいないことにずっと疑問を感じていて、これは何かあるとうすうす勘づいていた


そして、周りに誰もおらず、一番強そうなカルロが一人で小次郎を捕まえようとするということは、もうこの建物は封鎖されているだろうとも一応大学を出ている小次郎にも推測することは出来た


だから、最初に入ってきた扉には鍵が掛かっているとして、トンカチで窓ガラスを壊したのだ


確かに扉には鍵が掛かっていて、なおかつ強引に鍵を壊そうとするという魔法が発動して麻痺をしてしまうところだったのだ


実はギルドのマニュアルで扉だけでなく、窓ガラスにもその魔法が発動するようになる手はずがあったのだが、今回は手違いで魔法をかけ忘れたという小次郎にとって超ラッキーな展開になっていたのだった


壊した窓ガラスから小次郎は飛び出し、なるべく足音を立てずにギルドから走り去っていく


そんな小次郎を、というか壊れた窓ガラスを見ていたギルドの周りを囲んでいたギルド職員たちは何が何だか分からなかったようにみんな困惑するだけだった


そこへ立ち上がっていたカルロが壊れた窓ガラスに手をかけて叫ぶ


「お前ら!盗人は透明の固有能力ギフトを持っている!」


カルロのその言葉に多少腕に覚えがある職員たちが表情を変える


「奴はまだ近くにいるはずだ!手分けをして探し出せ!」


「ポーラはいるか!?」


「っはい!」


ギルドの周りを囲んでいた集団から秘書のポーラが出てくる


「ポーラお前はマニュアル通り班を分けて、盗人を街から出すな!」


「かしこまりました」


カルロから指示をもらったポーラは急いで街に職員たちを派遣して、小次郎を逃さないよう手配する


そして自分自身も街の門のところへ行き、一時的に門を閉鎖して、何者も街から出られないようにする


ここまでの手際は完璧でまるで地球でいう消防の動きみたいに迅速で命令系統も忠実に動いていた


そう完璧ではあったのだが、肝心の盗人である小次郎は門に向かってはいなかった


小次郎は門反対側に向かっていた


「(せっかく街まで来たんだ。まだまだ財宝がありそうなところはあるよなぁ)」


ニチャアと欲望に染まった顔でさらに収穫しようと考えていたのだ


カルロの誤算はただ一つ


小次郎が熟練の盗みの達人ではなく、ド素人のただのアラサーの自宅警備員だったことだろう


本物の盗人だったら、あらゆる手段を持って自分がすでに脱出したと思わせ実は街に留まっているなど技術を使うが、小次郎のようなド素人の場合、そんなことまで考えつかないので追う側からしたら街のどこにも細工がされていない何とも不思議な状況に見えるのだ


確かにカルロたちギルドは盗人は熟練の者という想定で動いているため、小次郎の動きは奇想天外に見えていた


そのため、小次郎を熟練の盗人を超える者として手配されていた


さらに窓ガラスが行き違いで簡単に壊されるようになっていたのでそれも小次郎が達人と思われるような一因になっていた


ちなみに、窓ガラスに魔法をかけ忘れた職員は自分の失態に気づいていたが、カルロが思った以上に怒声を発して小次郎を追っていたので、怖くて言い出せなかったのも原因だろう


そうして、小次郎に対する誤解が解けないままその日は街が厳戒態勢で終わるのだった

ニチャア

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