カスの収穫
臭い
「ここが街か」
あれから色々あって俺は城下町にいた
え?展開が早いって?
だって道中何もなかったんだもの
道順は簡単だった。今回の財宝部屋の封鎖で慌ただしくしていた兵士たちが大勢門を出て馬や馬車を使って走り出していたから、慌てて馬車に潜り込んでみたところこの城下町に着いたというわけだ
「意外と街までは近いんだなぁ」
そうなのだ、城から街まで馬車で30分くらいで着いてしまったのだ
帰りに迷わないように目印となるような大木や岩を記憶しておいたから、多分迷わないで帰れないだろう
「さて、散策したいんだがここは城よりもさらに臭いな」
大勢の人が集まった匂い、屋台か何かの食べ物の匂い、排泄物が見渡すだけでたくさん見つかるような環境などとんでもない光景が広がっている
本当はこんなところにいたくはないんだけど、俺の目的のためにも入らなければ始まらない
「っく!ええい!男は度胸じゃ!」
大層な覚悟を決めているが、ただ臭い場所に入っていくだけである
だが、覚悟を決めた小次郎は頑張った
マスクを3重にしてさらに臭い対策を建てたりして頑張った
本当は持ってきていた制汗スプレーをぶっ放したかったが、怪しまれそうなので使わないで頑張ったのだ
そして一歩一歩進んで、何とかお金の羽振りが良さそうな家や店舗に浸入していく
街の外見は石壁やレンガの家が多くあって、日本でも見るような屋台とかもあり本当に中世ヨーロッパみたいに見える
ちょっと高そうな店では変な石を使った道具を使っていたり、羊皮紙を何故か燃やしていたりと中々にファンタジーな景色があちこちで見受けられる
だが一番に驚いた、いや怖かったのは武器や防具を持った集団が何かの動物の一部を持ってきて特定の建物に入っていくのが確認できた
これはいわゆる冒険者とかギルドとか言われるところではないだろうか
そう気づいた俺は、収穫がないのにも焦って前を歩いていく冒険者っぽい人たちのあとに気づかれないようついて行く
ギルドっぽいところに入っていくと、中は意外と広く、騒がしかった
至る所に怖そうな筋肉がムキムキの人が多くいて、ジムか何かかと思ったくらいだ
少数ではあるが、杖を持った人や女性もいたので冒険者って物理特攻じゃないんだなぁとワクワクもしていた
そうしてうまいことギルドっぽいところに入った俺は一階の受け付けなどをスルーして二階の職員しか入れなさそうな場所へ直行する
今は昼を過ぎて夕方まで時間がそんなにないのだ
なので、早速二階へ上がり職員が部屋へ入るときに一緒に通る
それを何度か繰り返し、二階の全ての部屋を見ることができたが、それでもあの見るだけで力を感じる本はなかなか見つからない
途中で、こっちへ来てから一番圧のある初老の男の部屋に入ったときにすごく肌が粟立って、マジで怖かった
多分気づかれていないと思うが、早いところこのギルドっぽいところから出たいと思ったときに、出られない理由が出来た
一階へ降りた時に一人の職員が、受け付けの裏にある階段から地下へ降りていったのだ
最初に見たときには階段なんて見つけられずにいたが、まさかの隠し扉になっているとは思いもしなかった
すぐにギルドっぽいところから出たいが、後からまた来るのならば、今のうちに済ませておこうと思い職員に続く俺だった
ーーーー
「…」
階段を降りた先には、大量の資料や本が置いてあり俺は心の中でビンゴと喝采を上げていた
どうやら職員は資料を探しに来ていたようで、目的の紙が見つかったのか、さっさと一階へ戻っていった
そして静かになった地下室で俺は音を出来るだけ立てずになんか力がありそうな本を探していく
本棚はどこの大図書館かというほどキレイにそして荘厳に纏められていて、街はあんな臭いのにこういうところは気をつけているんだなと思っていた
それから1時間くらい探していたが、全然見つからなかった
逆に俺が途中何度も降りてくる職員に見つからないようにするにが大変だった
ある程度、調べたがまったく見つからないので少し休憩しようとして横のレンガの壁に手をかけたところ、ガコンと音がして手をついていたレンガが押されていった
「はえ?」
俺の呑気な驚愕音とは別に、押されていったレンガの壁が大きな音を立てながら開いていく
「隠し扉!?」
そうまたしても隠し扉だったのだ
「一階といいここといい、この世界の奴らは隠し扉が好きなのか?」
そんな言葉が出てくるくらい俺は呆れていたが、それでも偶然とはいえ何かありそうな雰囲気がしていて笑顔で壁の先に入っていくのだった
ーーーー
「!」
ギルド二階のギルド長室
そこにいたカルロ・グランバックは地下にある隠し扉が開かれるのを感じ取った
「誰かが扉を開いただとっ!?っち!ポーラはいるか!」
カルロは焦ったように自分の秘書を大声で呼ぶ
「ギルド長!何かありましたか!?」
すぐに秘書のポーラが来てカルロに状況を確認する
「ああ、公爵様が仰っていた盗人がこちらにも現れたかもしれん」
「ま、まさか!?」
カルロは事前にこの都市を治めているドルトムンド公爵から、宝物庫に侵入者が現れ一部の財宝が盗まれたことを早馬で聞かされていた
奇しくもその早馬は小次郎が相乗りしていた馬車の隊列と一緒に来ていた者たちのことだった
「ああ、すぐに地下室に精鋭のギルド付きを向かわせろ!ネズミ一匹通らせるな!」
「かしこまりました!他にもギルド全体を封鎖して、今ギルドにいる冒険者にも対応に当たらせます!」
そうポーラが進言するがカルロから待ったがかかった
「いや、冒険者共はギルドから追い出せ。今回侵入された場所は地下の隠し扉だ。冒険者に知られて面倒なことにしたくない」
「っはい!ギルド封鎖までに留めます」
そう言ってポーラは足早に部屋を出ていく
指示をしたカルロも元1級の冒険者であった自分も地下に降りて、対応に当たろうと考え部屋を後にした
ーーーー
「うっしゃ!ここは当たりっぽいな!」
そう言いながら俺は隠し扉の中にあった小さな宝物庫に入っていく
宝物庫の中には、城よりは少ないが金銀財宝や何かの器具があった
城よりも何かの器具が多いところを見ると、こちらの方がより必要なものを収めていると考えられる
そして、何よりも小次郎が喜んだのは、何らかの力がありそうな本が3冊も置いていたのだ
「うっひょう!3冊もあんじゃん!すぐに帰らなくて良かったぁ」
喜色満面で俺は本をバッグに入れていく
今回持っていくのは本だけだ
今は時間がないのだ。隠し扉があんなに大きい音を立てて開いたのだ。すぐに関係者が来るだろう
その前にこの建物から脱出しなければならない
「さて撤収撤収っと」
そう言って、隠し扉から出て一階に繋がる階段に向かおうとしたが、ちょうど誰かが一階との扉を開けて入ってきた
「hsgすdbdgdydkd!」
「hsgsydjdbd!」
「hsgsysb」
「hsydjdbdbdkdkdjdhd!」
4人、剣を構えた男、盾を一番前で掲げている男、杖を持ったローブ姿の女、軽躁な服装をしてナイフを構えている無精髭の男がいた
「gstssjb!」
剣を構えた男が何か指示を出して、一階との階段の前で何かを探している
「(対応が早いな。隠し扉が開いた時点で気付かれていたということか)」
俺は隠し扉のところから透明状態で様子を伺っている
見たところ隙がなさそうだった
俺に武術や格闘の経験なんてないが、素人目でも何かやりそうな4人組に見えた
透明でなければとっくに捕まっているだろうが、この状態でも危ないかもしれない
どうしようか悩んでいるが、テレビのコンサルタントが出ていた番組では何事も早いほうがいいと言っていたのを急に思いだした
だが思いだしたということは、頭がそれが最善だと考えたのだろう
だからすぐに行動に移した
「よいしょー」
俺は持ってきていた音が鳴るおもちゃを力いっぱい俺がいる方向の反対側に投げた
だがそれがいい




