カスは考える
地球はキレイ
あれから体調が良くないこともあって、すごすごと温泉を出て家へ帰ることにした
帰る途中に何か交通事故でもあったのか警察が道路を封鎖していたが、今の俺にはそんなのに構っている余裕はなく足早に自宅への道を進んでいた
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「ふぅ」
家無事に着いて、自分の部屋に入ると俺は緊張の糸が切れたように椅子へと座り込んだ
もう今日は何もしたくないくらい疲れていた
「はぁ、しかしまさか途中で透明が解除されるとはな、何が原因で解除されたんだ?」
そう今回突然解除されたのは検証になかったことなのだ
俺に気づいたあの女児は、解除された瞬間を見られる前から俺に気づいていないことは検証が終わっていた
しかるにあの女児が特別俺を認識出来るということではないのだ
他には時間が考えられるが、家を出てから温泉で透明が解除されるまでに約4時間ほどだ。時間は昨日の時点で寝るまでに10時間以上透明になっていたので、これも違う
外部要因かクールタイムか、何が原因なのか考えたときに一番可能性があったのは俺の健康状態だった
透明が解除されたときの俺の状態は脱水症状でめまいが起きるほど具合が悪かった
となれば、俺が病気や怪我で体が弱っているときに透明状態は発生しづらい、または解除されやすいのではないだろうか
今はそれぐらいしかわからないが注意はしておこうと考えている
それに伴い、自分の弱点が発覚した気がした
俺の身長は190cm弱で体重は100キロを超えている。身体能力は長年の自宅警備員のためにアラサーの平均よりは低いだろう
言ってしまえば、俺の弱点は運動不足につきるだろう
今回みたいに温泉程度なら大丈夫だが、それよりも遠く、または山や海など自然が相手の特殊な環境などが来てしまえば俺はただ、透明人間になれるだけのアラサーのおっさんだ
そこまで考えた俺は一つの目標を掲げた
「あの古美術の本っぽいのを集めよう」
そうだ、あの本は俺に透明になれる能力をくれた
なら他にも何かの力が手に入れられるような本もあるのではないかと考えたのだ
「まずは、まだちょっと気分が悪いから明日から頑張ろう」
そう言って、俺は夜ご飯も食べずにベッドにて大の字で眠るのだった
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皆さんおはようございます。昨日は爆睡をかましまして、翌日、つまり今日の昼まで寝ていた俺です
「バッグよし、懐中電灯よし、非常食よし、飲み物よし、トンカチよし、その他もろもろよし!」
押し入れの穴を塞いでいる本棚をどかして、空いた穴を通る
石壁を通って絵画の扉を聞き耳をたてながらゆっくり開ける
キィ
透明の状態で財宝部屋に入るが、兵士たちはいない
もう一度財宝部屋の中に本があるかもしれないと見て回ってみるがやっぱり見つけられなかった
そうしてこの財宝部屋の確認はだいたい終わったので、今日の目的を遂げるために行動を起こす
コン
ガシャン
バン!
「fsysんwvdygすd!?」
「gdhづdbdhづj!」
ほら来た
やったことは単純だ。兵士たちのいる扉をノックして、異変を感じた兵士たち扉を開けてもらうというやり方だ
扉が開いた後は簡単だ。透明状態で扉を通るだけだ
そうして俺は悠々と兵士たちの脇を抜けて初の財宝部屋の外へと出るのであった
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扉の先はどうやらかなりの大きさの城であった
だが、城と言ってもそんなチャチなもんじゃなかった
城がデカすぎるのだ
俺が大雑把にだが、調べて周るのに1時間もかかってしまって、汗でいっぱいだった
しかし、なんとなくこの城の全体像把握出来たと思う
まずこの城は大きく分けて3つの階層に分かれていて、一階には調理場、食事処、図書館、収容人数が半端ないホールがある
2階にはそれぞれの居室なのか、私物が置かれている部屋が多かった
そして、地下もあって、大量の保存食らしきものや何かの実験をするのか、よくわからない器具がある広い部屋、そして中世で出てきそうな檻が多かった
もちろん他にも細かい部屋があったが、大雑把に分けるとこんな感じだった
俺は探索しているうちに例の本を探していたりしたが、最初に見つけた透明状態になれる本みたいな見るだけで力を感じる本は見受けられなかった
一番の候補であった図書館はよくわからない言語で書かれたただの本だけで期待外れだったし、2階にある偉そうな奴がいた部屋にも本はあったが、こちらもただの本だった
あちこち探しても透明状態になれる本みたいなものは見つけられなかったということは、もしかしたらすごく貴重なものなのではなかったのだろうかと今さらに考えてしまう
よくよく考えたら、あの本は財宝部屋にあるようなものだ
ならば、金銀財宝に劣らずのとんでもないお宝だったのかもしれないことに気づく
俺の背中に冷や汗が流れてくる
「あれ?これやばくね?」
そうなのだ。もしそんな大層な本が消えていることに気づかれたら、財宝部屋にいた兵士たちと同じようにこの城にいる大量の兵士が厳戒態勢みたいのを取ってくるんじゃないかと思う
俺がそう考えた瞬間、城内が慌ただしくなっていく
「…」
何を言っているのかはわからないが、兵士たちが大きな声を出しながら様々な場所を封鎖しているように見える
よく見てみれば、俺が出てきた財宝部屋の方が一番騒がしい
「(このままだと帰り道がなくなってしまうな)」
財宝部屋は地下の奥まったところにあって、兵士たちの間を抜けながらどんな風になっているのか確認してみると、2人だけだった兵士が十倍くらいになっていて、さらに厳重になっていた
「(やばぇな、これじゃ自分の部屋に帰れねぇぞ)」
俺はもうこの世界が地球じゃない異世界か、もしくは異空間的な場所だと認識している
流石の俺もここで人生を送るのはごめんである。俺の生活基盤は地球なのだ
何よりも地球のほうが、過ごしやすいだろうし、中世ヨーロッパみたいな世界の定番に違わず生活環境がキツそうなのだ
明らかに泥だらけなのに気にしていなかったり、食材を汚れた手で扱っているし、何よりも臭いのだ
汗の匂いや、動物の獣臭さ、息の匂い、そして排泄物の臭い
全てが地球の清潔な環境で生きてきた俺には耐えられないような臭いだったのだ
だが、どれだけ臭くても俺は探索をやめなかった
透明状態弱点がわかったので、それをそのままにしておくのは俺の悠々自適生活を送るためにはもっと力がほしいのだ
だから、一応持ってきていたマスクとアルコール消毒液で自分の身を守りながら汗をかくくらい頑張っている
「(いやぁ、石壁や兵士を見てから、異世界とかだったら怖いから予防策建てておいて正解だったな)」
異世界ものだとすぐに街とか、人とかと接触しているが、実際は目に見えないウイルスや病気、不可思議な現象とかあるかもしれないのだから、予防は大切だろう
「(まぁマスクと消毒液でどこまで対応出来るかわかんないけど、やらないよりはましだろう)」
実際、地球ではマスクを着けたときと着けなかったときの飛沫物での感染力の差は大きい
些細なものではあるが、俺は絶対に病気にかからないと言えないので、少しでもマスクやアルコール消毒液で予防策を打とうと兵士たちを見た瞬間に頭の中に浮かんでいたくらいだ
さて、これからどうするか。このまましばらくは財宝部屋の封鎖は解かれないだろう。この城には特に何もなかったし、別当の兵士たちがよく行き来している場所、多分兵舎かな?にも武器はありそうだが、俺が求めている本はなさそうだ
一応、この城の中にも隠し部屋とかありそうな雰囲気はあったが、それは封鎖が解かれてからゆっくりやろうと思う
となれば、この城を出てから多分あるであろう城下町に行こうかなと考えている
期限はバッグに入っている非常食なくなるまでだ
こんなときのために親には友人のところに泊まりに行くと言っておいて良かった
いやー本当にありがとう架空の友人君
友達がいたのねという親の言葉に俺の心は泣いていたが
過去のことは忘れて早速行動に移す。城から見た限り門までだいぶ遠いいから、早くしないと日が落ちてしまう
今はまだ昼近くの朝なので大丈夫だろうが、なるべく夕方には城に帰ってきたい
じゃあ、出発だ!
異世界は汚い?




