カスは結婚する
プロポーズは一瞬
「ではそういうことで、あとは1週間後に必要なものを送付しますのでよろしくお願いします」
そう言うおっさんこと九十九明と別れた俺達は送ってもらった駅を歩いていた
「…」
「…」
どちらも無言である
ある程度人が少ないところで家に転移した俺達は、気まずい空気の中にいる
俺は目線を合わせれないし、ジュリアはずっと俯いたままだ
だが、意を決してジュリアに話しかける
「あー、ジュリア。さっきのことだが、俺と夫婦ってことでいいな?」
頭の中ではごちゃごちゃ考えていたが、なんかもう面倒臭くなって直球で言ってしまった
言ったあとに後悔したが、もう後には引けない
びくびくしながらジュリアのほうを見ると、彼女もこちらを見ていて、時が止まった感じがした
この一瞬が永遠に感じられる中で、ジュリア口を開く
「はい、私は小次郎様がいいです」
たった一言、それだけで俺達は身体の関係から夫婦になった
「じゃ、じゃあそういうことで」
「ふふ、はい」
何か可愛いものを見るような目で見られている感じがしたが、今の俺に気づく精神性はなかった
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そして、あれから1週間後九十九のおっさんから戸籍とか仕事に必要な物を用意出来たと連絡があった
おっさんは戸籍と一緒に俺達の入籍もしといてくれたらしく、俺とジュリアは晴れて夫婦になった
嬉しいことだが、それよりも今はやらなくてはいけないことがある
それは、異世界へと繋がる穴をどうするかである
本当は就職と同時に日本妖魔対策課が用意してくれるという家に引っ越したいと思っていたのだが、これがあるので引っ越せないでいる
「うーん」
「どうしましたか小次郎様?」
どうしようかと悩んでいると、ジュリアが話しかけてくる
「あー、えっとな、この異世界に繋がる穴をどうやったら別の場所に移せるか方法を考えていたんだ」
「小次郎様の能力ではダメなんですか?」
「一度やろうとして、失敗した。なんか家がちょっとだけ揺れたんだよね」
あのときは、マジで焦った。付与の能力で穴ごと家が持ち上がったんだもん
幸い土台部分には影響なかったらしくて、倒壊なんてことにはならなかった
俺があのときの失敗を思い出していると、ジュリアが解決策を言ってくる
「でしたら、魔導具で試してみるのはいかがですかか?」
「魔導具?」
「はい。私たちの世界では日常の生活のことから、大規模な儀式に至るまで魔導具を使うことがあります」
話を聞いていくと、どうやら魔導具というのは地球でいう水道やコンロ、そして電気の役割を果たしているとのこと
さらに、規模が大きくなると、人が住めなくなった場所を住めるように大気汚染を浄化するなど大きく人々の生活に関わっているようだ
その中でも物と物を入れ替える魔導具が存在しているのを、領主のところにいたときに知ったのだという
「珍しい魔導具らしいですが、国に最低でも十個はあるとされているようです」
ふむ、それなら1個くらいもらってもいいか
「ちなみにその魔導具の名前は?」
「入れ替え君です」
「うん?」
「入れ替え君です」
どうやら聞き間違いじゃなかったようだ
「えっと、その魔導具相当珍しいものなんだろ?なんでそんな名前に?」
「魔導具の名前は開発した者がつけられることになっておりまして、当時でも相当頭がおかしいと言われている研究者が作ったときにそう名付けたそうです」
ジュリアによると、魔導具の名前はたとえ王様であっても変えることは出来ないのだそう
「その研究者、ヤバいな」
そう言って、俺達は早速その魔導具を探しに行く準備を始めた
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「さて、やってきました財宝部屋!」
実に2週間ぶりである
流石に兵士たちはいなくなっていて、部屋中はがらんとしていた
「じゃあ、今回も頼むぜ折り鶴くん」
そう言って、折り鶴に付与の能力をかけて入れ替え君という魔導具を探しに行ってもらう
「さーて、方向はどっちか、な?」
浮かんだ折り鶴は財宝部屋の一角に行き、止まった
俺とジュリアは顔を見合わせて、そこに行ってみると、折り鶴が一つの魔導具の上で浮かんでいた
俺はその魔導具を鑑定を付与した伊達眼鏡で見ると、名前が入れ替え君となっていた
「あれ?見つかっちゃった?」
「あはは、みたいですね」
せっかく途中で食べるお弁当も持ってきて、張り切っていたのに、まさかのミッションコンプリート
やる気でいたのに、この張り切りはどこにぶつければいいんだよ
そうして変な空気になったので、自分の部屋に戻ってお弁当を食べることにした
結婚生活は一生