カスと秘密だらけの部屋
自分だけの秘密の部屋っていいよね
ジュリアの村をあとにした俺達は、転移で最初の財宝部屋に行く
相変わらず兵士たちはいるが、気にせずジュリアと会話をする
「さてジュリア、実は俺は異世界の人間で今から隠し扉を通って俺のいた世界に帰ろうと思う」
「えっと、異世界?というとおとぎ話の勇者様がいた世界のことでしょうか?」
「は?勇者?そんなもんがいたのか?」
「はい。昔に攻め滅ばされる寸前の国が別の世界から勇者を召喚して逆に相手国を併呑したという実話があるんです」
ジュリアはさも当然というように言ってくる。どうやら、この世界の者たちには当たり前の話であるとのこと
現在、勇者を召喚する方法は失伝しているようだが、要注意のこととして覚えておくことにした
「まあいいや、これから俺の世界に行くためにジュリアにも来てもらう。これはお願いじゃない、強制だからな」
有無を言わさずに連れていくという姿勢を見せるが、ジュリアはわかっていますよと言うように頷いてみせた
「よし、あそこに絵画の隠し扉があるだろう?あの隠し扉を通って俺の世界に行くんだ」
そう指を隠し扉に向かって示すとジュリアがおかしなことを言う
「…あの、絵なんてどこにもありませんが?」
「は?」
俺には見えている絵画はジュリアに見えていないと聞いて思わずこいつ視力大丈夫か?と思った
絵画は他にはなく、一目見ればわかるくらいなのにだ
だが、ジュリアの戸惑いは本物で、本当に絵画が見えていないらしい
俺は何が原因なのだろうと思いつつも、一つ検証をする
まだ兵士たちがいるが、それを利用する
兵士たちの目の前で行き、実際に絵画を揺らしたり叩いたりするのだ
このときは消音のアイテムを外している
しかし結果として、音が出ているというのに兵士たちはまったく気づかない
こんなすぐ見つかるような行為をしているのに、兵士たちは無反応で、ついでにジュリアもこいつ何やっているんだという顔を向けてくる
これは本当にジュリアの言っていることが合っていて、どうやらこの絵画の隠し扉は俺にしか見えていないようだった
じゃあ、今まで泥棒のようにコソコソしながら財宝部屋に入っていった俺の頑張りが無になってしまったじゃねぇかと虚しくなった
だが、これは好都合だ。いつ絵画の隠し扉がバレて俺の部屋に繋がっている石壁を通って世界を渡られたら、すごく面倒なことになっただろう
俺はふと思った。俺にしか見えていないのなら、見えていないジュリアはこの隠し扉を通れるのかと
俺の懸念は不発に終わった
なぜかというと、俺が絵画の隠し扉を開けた瞬間にジュリアがえ?急に道が出てきたと大声で叫んでいたからだ
「ん?見えるようになったのか?」
「は、はい。小次郎様が壁に手を掛けたかと思ったら、急に奥へと続く道が出てきました」
どうやら、俺が開けることでこの世界の住人のジュリアにも隠し扉が認識出来るようだ
相変わらず兵士たちはこちらを認識出来ていないことから、隠し扉は俺と接触しているかつ、俺が隠し扉を開けないと認識すら不可能ということなのではないだろうか
なんて俺に優しい設計をしているんだと感謝しつつ、ジュリアの手を引いて隠し扉の中へと入っていく
そうして、手を繋ぎながら石壁を通って俺の部屋への空いた穴を潜る
「ただいまっと」
「ここが、小次郎様の世界の景色…」
隣でジュリアがぽかーんとしているが、俺は早くシャワーを浴びたかった
なのでジュリア手を引きながら、母親にバレないように2人で風呂場へ向かう
風呂場についたときにはジュリアもここが何をする場所かわかったようで、服を脱ぎだした
俺の意図がわかったようで2人でシャワーを浴びていく
「あー、1日の疲れが取れていく感じがするわー」
「はい、これは凄いですね。お湯が勝手に出てくるなんて、なんて技術力」
ジュリアはシャワー1つとっても、驚きのものらしく、びっくりしながらも癒されるように湯を浴びている
「さて、ボディーソープっと」
「なんですか?その白くてねばねばしたものは?」
「狙って言ってる?」
「はい?」
「まぁいいや。これはボディーソープっていって、これを泡立てて身体を洗うと汚れと臭いが消えるんだ」
「え!?そんなものがこの世にあるんですか!」
ジュリアの世界にはやはりこういうものはないらしく、石鹸が貴族などの権力者の間で使われるのがせいぜいらしい
「わぁ!これ石鹸違って、すごくいい匂いがしますね!」
ジュリアにシャンプーやコンディショナーも説明したら、もはや絶句していた
そして、ジュリアに背中を洗ってもらったり、逆に背中を洗ってあげたりと鼻の間が伸びそうなことをしながら、シャワーを終える
母親がいないことを確認して、コソコソと俺の部屋まで戻る
部屋に戻ったあと、俺はジュリアに聞く。本当に良いんだなと
「はい。私の人生は小次郎様のものです。お好きになさってください」
そう言って、ジュリアは覆っていたバスタオルをとってその美しい裸体を見せつけてくる
ただ、ただ美しかった。胸とお尻は大きいのに腰は内臓が入っているのかってくらい細い
それにお風呂上がりなのもあるが、同じシャンプーを使っているはずなのに、なぜか男の俺と違ってめっちゃいい匂いがする
もう辛抱たまらんとばかりに俺も腰に巻いていたバスタオルを取り去ってジュリアを押し倒したのだった
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「…」
「あ、あのそんなに気を落とさないでください。初めての方は結構なるようですよ」
ジュリアが慰めてくれるが、俺は顔を合わせるのも恥ずかしいとばかりに部屋の隅っこで体育座りで黄昏れていた
なぜこんな状況になっているかというと、俺の初めての合体は1秒で終わってしまったのだ
知識だけでは知っていたから、大丈夫だと思っていた
だが現実はそうじゃなかった
いざ、目の前に女性の裸があると、緊張してしまってうまく出来なかったのだ
ジュリアは歴戦の元娼婦らしく、優しく俺を導いてくれたが、やっと本番かと思ったら、1秒でフィニッシュしてしまった
そして現在にいたる
「あの、大丈夫ですよ。これから何回も経験を積めば慣れてきますから」
それよりも、とジュリアは続けた
「なんか、私の身体おかしいんですが、小次郎様は何か知っていませんか?」
その言葉に顔を上げると、ジュリアは困ったように、嬉しそうにこちらを見ている
「あのですね、私娼婦の仕事をしていたじゃないですか。それで、やっぱりそういう仕事をしていたら身体に負担がかかるんですよ」
俺はジュリアが何を言いたいのかよくわからなかった
「つまりですね、私の身体もそのだいぶ中古といいますか、使われた分劣化していたはずなんですよ」
「それが、先ほど小次郎様のお相手をさせていただいた際に、色素の沈着や処女膜が再生していたりと、まるでまったく経験がない、そう、初期状態に戻ったみたいな身体になっているんです」
「ああ、そんなの魔導書の効果じゃねえのか?」
「そう、なのでしょうか?」
「まあ、俺にはそんくらいしか思いつかないからな。なんだ嫌だったか?」
「いえ!嬉しいんです。身体が綺麗になるのは女にとって嬉しいことですし、何よりも小次郎様に初めてを捧げられましたから」
そう言って、ベッドに出来た赤い染みに目線を向けているジュリアであった
俺もそう言われると、悪い気はしなかった
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話は変わるが、俺の部屋には家族の誰も許可なく入ってはこない
母親はご飯を持ってくるときに来るが、それ以外は関わろうとしない
それにこの部屋には消音のアイテムを置いてあるので、早々ジュリアが見つかることはないだろう
ジュリアにも俺が許可を出すまで、部屋から出ないように言い含めている
異世界に繋がる押し入れの穴に金貨がたくさん入った拡張されたポーチ、そして異世界から来た住人のジュリア
この部屋には、たくさん秘密にしなければならないことが増えたのだった
自分だけの異性っていいよね