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怪盗K  作者: Yuyu
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怪盗はカス

カスは治りません

「うっしゃぁあ!!行ける!行けるぞこれは!」


俺の名前は粕谷小次郎、今年で30歳になった実家を守ってその対価を親から貰っている自宅警備員だ


今日も今日とて自分の部屋でネット対戦をしながら、警備の対価として親が持ってきた昼メシを食べながら過ごしていた


「よっしゃ!あと一人で勝てるぞ!へへざまぁ!チャットで俺にレスバなんかしてくるから弾が当たんねーんだよぉ!」


俺がやっているのは、いわゆるバトルロワイヤルで銃などの武器を拾いながら相手を倒していくオンラインネットゲームだ


このゲームの経歴はちょうど10周年になっていて、俺は発売当日からのプレイヤーというのもあって、この業界ではある程度の知名度があった


「へいへーい、隠れてないでちゃんと戦えよぉ!」


操作しているキャラクターを使って変な踊りや相手を嘲るチャットをしながら煽っていると俺のキャラクターが倒された


「…は、はぁ!?な、なんだよそれ!そこにはスナイパーなんてなかったはずだぜ!?」


そう相手のキャラクターはいつの間にかスナイパーライフルを持っていたのだ


そのスナイパーライフルはこのゲームでは有名で、落ちているのは10ゲームに一回といえるくらい激レア武器であり、拾えばそのゲームを制することができるくらい最強の武器であった


確かに俺は相手キャラクターがいた場所ではスナイパーライフルは見なかったし、そこで他のプレイヤーを倒した時にも見つけられなかった


そんな激昂しながら疑問に思っている俺に相手からチャットがきた


[コンテナの影に隠れてたんだよm9(^Д^)プギャー笑そんなことにも気づかないなんてさてはお前ニートだな?社会経験がないやつはだからダメなんだよ笑]


「ックソが!」


そうチャットが届いた瞬間には俺はパソコンの電源を切っていた


「クソが!クソが!何が社会経験がないだ!俺はネット界隈じゃてめぇなんかより有名なんだよ!」


立ち上がって、ベッドに近づき枕に八つ当たりをする


ある程度枕を殴ったあと、ドアの向こうから控えめな声が聞こえてきた


「小次郎ちゃんどうしたの?大丈夫?すごい音が聞こえてきたけど…」


そう問いかけてきた人物は俺の母親である粕谷小百合だった


「何でもねぇよ!うるせぇな!」


「あ、ご、ごめんなさい。でもご近所に音とか聞こえちゃうかもしれないから…」


俺が住んでいるのは住宅街であり、周りにも家は建っている


母親が言っていることは当然のことであるが、近所のやつらが俺が家に引きこもっていることなんて当然知られている。近所の奴らは自分に関係ないのに自分以外に悪いところがあればすぐ噂を流すクソな集まりなのだ


俺が大声や音を出せばまたすぐに近所のやつらの井戸端会議のネタになるだろう


そんなことにももう慣れているが


「っち!」


俺の舌打ちが聞こえたのか、息を潜めるように母親は下に降りていった


俺の住んでいる家は2階建てで、一階はリビングや両親の部屋で2階に俺や姉貴、兄貴の部屋になっていた


父親は定年を迎えてもまだ働いていて、母親は専業主婦だ


姉貴は何年も前に嫁いでいて、兄貴は都心のほうでバリバリ働いているエリートだ


俺に関して両親や兄貴は何も言ってこないが、姉貴は実家から車で約30分のところに住んでいるから、よく旦那や甥や姪と一緒に帰ってくる


そのたびに俺は息を潜めながら過ごさないといけないし、用事があって一階に降りたとしても顔を合わせるたびに蔑んだ目で見てきて、甥や姪とは絶対に会話をさせないようにしてくるのだ


俺としては、逆に会話しなくてラッキー程度には考えているが、姉貴のその態度には苛ついている


だが、苛ついたからといって怒ってしまえば、家での立場が危うくなるし、姉貴の旦那は元ボクシングをしていたとかで暴力でも負けてしまうのだ


だからまだ怒って当たり散らしたりはしていないが、もしそんなことがあれば俺は叩きのめされるだろう


苛ついていたこともあって、嫌なことを考えていたからか、また怒りが湧いてきて思わず昔使っていた公式野球ボールを思いっきり投げてしまった


「あっ」


投げた先には押し入れがあって、ものが多く押し込められていた


ちょうどガラクタの隙間を通ったのかドゴッという音とともに壁が壊れる音が聞こえてきた


「…」


タラーという擬音が似合いそうなほど、冷や汗を流す俺である


なぜかというと、隣の部屋は元の兄貴の部屋であり、普段俺に興味がないようなやつなのに部屋に入ると家族の誰であってもすごく怒るのだ


部屋の中には兄貴が集めていたミリタリーなコレクションが多くあって、実家の部屋には今の住んでいる場所に入らなかったものがある


俺は押し入れのガラクタを取り出して、壁に空いた穴を見る


「やべぇ、これ絶対に兄貴怒るかなぁ」


そう言いながら、壁を見ながら焦っていると、なぜか穴から空気が流れている感じがした


「?」


俺は隣は兄貴の部屋に繋がっているのに、何でひんやりした空気が流れているんだ?と疑問に感じながら穴の中をふと覗いてみるとそこには石壁があった


「は?」


文字通りクエスチョンマークが俺の頭に浮かんでいるくらい困惑した顔をしただろう


「ゴシゴシ」


思わず目をこすってみるが、依然と石壁は目の前にある


「は?何で石が?うち木材で出来てるよな?」


そう俺の実家は日本では一般的な木材で出来てるはずだ


こんなヨーロッパにあるような古代の石壁なんてあるはずがない


まして、兄貴の部屋に繋がっているのに石壁なんてあるはずがない


しばらく部屋の中をウロウロしながら悩んでいたが、俺は意を決してパソコンの机に置いてあった懐中電灯を手に持って空いた穴をさらに広げ、人が一人入れるくらいの隙間を作ると石壁の中に入っていった


ーーーー


石壁の上に立ってみると、意外と作りはしっかりしていて部屋で履いているスリッパごしの足を支えてくれている


「うぉぉぉぉ、石壁、いや石床か?まぁいいや、石って結構冷たいんだな」


率直にそう感じたことを言う俺だったが、独り言でも言わないと心臓の鼓動が耐えられなかったのだ


ドキドキしながら、恐る恐る石の床を進んでいると数歩歩いて曲がったところにすぐに光が見えてきた


その光はなにか扉の隙間から漏れているような線がかったものだったが、俺は蛍光灯に集る虫のようにその光に近づく


「…何か声が聞こえる?」


俺はいつもの癖で気配を消すことは得意だったこともあって、抜き足差し足で扉の前で聞き耳をたてる


「fsjwぇgtsy」


「gっsyskんs」


「hsgsysk、hsyすsんs?」


「sっgsgshsb」


「#############」


「#############」


どうやら、2人の男が何か聞き取れない声で話しながら笑い声を発していた


「どこの言葉だよ?英語じゃねぇし、アジア圏でもないよな。でもヨーロッパ圏だったらわかんないしなぁ」


聞こえてきた言葉は一応大学を出ている俺でも聞き慣れない言語だった


懐中電灯の他に持ってきていたスマホを操作してみると、電波は届いていたみたいで、スマホの標準機能に入っていた翻訳アプリを試してみるが、どの言語にも該当していないようだった


「マジでどこだよこの国。…ちょっと覗いてみるか?」


どうしようか悩んでいる俺であったが、少しだけ扉を開けてみることにした


キィ


「!?」


思ったよりも大きな音がして焦った俺であったが、開いた扉を覗くと中には誰もいなかったみたいで、声の主達は違う場所にいるようだった


「うぉ、すげー!」


あまり大きな声を出さないようにしていたが、少しだけでも声が大きくなるくらい目の前の光景は凄まじかった


金銀財宝はもちろん、芸術品や何に使うのか分からないようなガラクタらしきもの、他にも宝箱などとんでもない光景だった


部屋の大きさは俺の部屋の3倍くらいだから20畳くらいだろうか


この部屋の至る所に山盛りになるほどの財宝だ。これだけで子々孫々何世代まで豪遊できるのだろうか


昔の英雄が持っていた財宝もこんな感じだったのだろうかというほど目の前の光景は圧巻だった


「すげっ、こんなにあったら何でもできるじゃん」


俺は誰もいないことを確認してから扉を潜っていく


「あ、これ扉じゃなくて絵画だったんだ」


俺が通った扉はどうやら絵画だったようだ


その絵画の人物はヨーロッパによくあるような過去の偉人達の肖像画に似ていたが、芸術なんてよくわからない俺には何の価値も興味もなかった


それよりも目の前の財宝だ


俺は足元にある金貨らしきものを手に持ってみると、くすんでいるが、小さいのに重さもしっかりしていて素人目でも本物じゃないかと思うほどだった


「へへ」


俺はニヤケ顔で満たされた顔で金貨を見つめていた


「へへへへへ、こんなにあったら今の生活はおさらばじゃねえか」


目の前にある金銀財宝を持ち帰ってしまえば俺は億万長者だ


もちろん、金銀財宝の出どころに目をつけられる可能性はあるかもしれないが、うまくルートを作ってしまえばさばけるだろう


「へへ、俺を見下していたやつらも俺に遜るんじゃねかなぁ」


そんなことを思いながらも一応大学を卒業した俺の灰色の脳細胞は有能だった


「おっと、こんなところで浸っている場合じゃないか。そんなことはあとからいくらでもできる、今は、他の価値あるものを探さないとな」


そう言って、俺は金銀財宝ではなく、ガラクタらしくところへ行く


「ランプ、机、よくわからないガラクタ、何か動物の毛皮」


家具やガラクタ、動物の一部など俺では価値があるのか分からないものが多くあったが、俺の目についたのは一冊の本だった


その本はこんなに金銀財宝があって、ガラクタも多々ある中でこの部屋に一冊しかないのだ


そう本はこの部屋に一冊しかないのだ


俺の灰色の脳細胞がピンときた


これは価値のあるものに違いないと


早速手に持って開いてみると、中には白紙だけだった


「あれ?俺の灰色の脳細胞ポンコツだった?」


最初のページから最後まで1ページずつしっかり見ていくが、結局最後のページまで何も書かれていなかった


「はぁ、なにか価値あると思ったのに、ただのノートかよ」


俺が先ほどのオンラインネットゲームで負けた時よりもがっかりしていると、急に本が光だしたのだ


「うぉっ!?」


突然のことにびっくりして思わず手を目の前にかざして光を遠ざけようとしたが、光はすぐに収まった


「はぇ?な、なんだったんだ?」


俺は戸惑っていたが、変化はすぐにわかった


「あれ?本どこ行った?」


そう持っていたはずの古美術みたいな本がいつの間にか消えていた


なんで?どこ行ったんだ?と考えていると、俺が通ってきた扉と違って反対方向にあった扉開けられるような気配があった


「や、やべっ!ど、どどどどうすればいい!?」


俺が焦っているうちに扉は空いてしまう


もうダメだ!と思いながらもそれでも何とか隠れようとするが扉は虚しくも空いてしまった


「fsyjsんjs!?」


「hsgyっsjdsthdbdんdく?」


「hshすsjd!」


「hdyづっdbdb」


「hいl」


「…」


俺が声も出せずに見ていると、なぜか古代の鎧っぽい服装をして偽物か本物か分からないような剣をかまえながら兵士らしき男2人が入ってきた


男たちはどこの言語か分からないような言葉を発しながら辺りを警戒しながら、部屋の中を見回っているが、異常が見受けられないような態度で部屋を出ていった


「…」


俺は今だに固まりながら口を聞けないでいた


それから10分くらいだろうか、緊張が解けてきた俺はさっきの現象に疑問を感じていた


「…なんで、俺の目の前にいたのに俺に気づかなかったんだ?」


そうなのだ。先ほどの兵士らしき男たちは俺の目の前を通っていたのに、あたかも俺がいないようにしていたのだ


「なんでだ?ドッキリか?」


ドッキリか何かか疑う俺だったが、それよりもまずはここを脱出しようと考えるのだった


ーーーー


絵画の扉を開けて元の石壁の道を通って、自分の部屋に戻ってくると、とりあえず押し入れの穴を部屋にあった昔の本棚で塞いでおいた


「はぁ」


俺はため息をつきながらパソコンの机にある椅子にもたれかかっていた


もう何が何だか分からなかった


興味本位で空いた穴を通ってみたら、石壁があって、その先にあった絵画の隠し扉らしきものを通ると金銀財宝があった


そして金銀財宝に浮かれて、古美術みたいな本を開くと光を放って消えてしまった


それに驚いた俺の声に別の扉の前にいたらしい兵士っぽい男2人が入ってきた


気づかれると思ったが、何故か兵士たちは俺に気づかなかった


「まとめるとこんな感じか?」


自分でも何を言っているのかわからないが、実際に起きたことだから受け止めなきゃいけない


「なんで気づかれなかったんだろうかなぁ?」


そう確か、あのときは隠れなきゃ、気づかれたら終わりだと考えていた


なら、あのときと同じ思考をすれば何かあるんだろうか?


俺はそう考えながらなんとなしに隠れようと思考してみた


「え?」


すごく驚いた


思考して、やっぱり何もなかったかと思いながら部屋の端にある姿見を見ると俺が映っていなかった


「ど、どうなってんだ?」


姿見に近づいて本当に映っていないのか色々な動きをしてみるがやっぱり映らない


他にも姿見を触ったりしてみるが、特に変な部分はないようだった


「…モノホンのファンタジー現象ってことか?」


そう考えついたらもう止められない


「マ、マジでか!これもう勝ち組じゃん!透明人間なんて何でもし放題じゃん!」


一人部屋の中でアラサー男がはしゃいでいる。周りが見たら、いい年して何やってんだと言われるかもしれないが、今の俺は透明人間なんだから見られてすらいないのだから


「げへへへ!…あ、一応本当に透明人間かどうか確認しておかないとな」


俺は浮かれていたことを抑えて部屋を出て一階に向かった


「…」


ソロリ


キィ


「?風かしら?」


ゆっくりバレないように母親の前まで行ってみるが、どうやら気づいていないようだ


目の前でパントマイムや変顔をしているのだが、まったく気づいていない


その後も10分くらいバレていないか確認していたが、本当に気づいていないことを確信したのだった


ーーーー


「くくく、どうやらこの力に消費や突然切れるということもないみたいだな」


あのあと、部屋に戻ってくると一度透明の状態を解除して、姿見の前に行く。解除後はしっかり姿見に自分が映っていた


そしてまた透明状態になるが、クールタイムとかはなくすぐになれることを確信した


そして数時間透明状態だったが、何の問題もなく過ごせていたし、他にも出来ることを確信した


「さて、今は夕方の5時か。…よしもう一回財宝部屋に行ってみるか」


透明状態で出来ることを確認して、これならばさっきの兵士たちが来ても大丈夫だろうと考えていた


一度目は驚いてしまって、金貨とか何一つ持ってこれなかったし、兵士たちが来た扉の向こう側も見てみたい感情があったのでもう一度行くことにしたのだ


「懐中電灯よし、バッグよし、飲み物よし、非常食よし、カメラよしその他もろもろよし」


持っていくものを確認していざ押し入れの向こう側へ突入する


「へへ、透明状態なら持っているものも透明になるのは嬉しい誤算だったぜ」


石壁の中を歩きながらそう独り言を呟く


透明状態なら体に触れていれば物は透明状態になることが分かっている


これが俺以外の人物では透明になるのかはまだ分からないが、いずれ信用個の出来る人間で試すつもりではある


そうこうしているうちに扉の前まで到着した


「さて、と」


キィ


俺は音が出ないように絵画の扉をゆっくり開けると、事前に耳を澄ましていた通りに財宝部屋の中には誰もいない


「ふひひ」


俺は笑い声を出しながら再び金銀財宝のある部屋の地に足をつけた


「ここからは時間の勝負だ」


俺は急いで鞄からエコバッグを取り出して、価値がありそうな金貨のみを音を立てないように中に入れていく


「早く、早く、早く、早く、ふへへへ」


俺は真剣にやっているが、どうしても顔がニヤけてしまう


この金貨を財宝を自分のものに出来ると思えば、しょうがないだろう


持ってきていたエコバッグと、背負ったバッグの中を満杯にした後は、音を立てずにゆっくりだが迅速に自分の部屋に繋がっている絵画の扉に潜っていく


「ふぅふぅ、ふぅふぅ」


欲望に比例した量の金貨を持っているせいか、少しの距離でも汗をかくくらいの運動量になっている


ましてエコバッグを両手の指の全てに引っ掛けているせいで、指が変色するくらい痛い


だが、自分の部屋すぐそこだ


「ふぅふぅ、っふぅ。やっと着いた」


時間にして10数秒だ。だが、俺にはすごい達成感があった


「どっこいしょっと」


一つ一つエコバッグを穴を通して自分の部屋に入れていく


そして最後の一つを入れ終わって、自分自身も穴を通ると本棚で穴を塞いでミッションをコンプリートした


「ふへへへ、これで大金持ちだぁぁぁあああああああああああああ!!!」


俺は近所の目など関係ないとばかりに大声で勝利の雄叫びをあげるのだった

カスでも勝ち組になれます

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