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『異世界迷宮は和食のあとで』―その男の料理、食えば無双―  作者: 二天堂 昔
第一章『迷宮攻略は和食のあとで』

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第28話『腕利き鍛冶屋登場!新たな武具との邂逅』



鉄板の上で飛竜肉がじゅうじゅうと音を立て、香りが夜空を焦がしていた。

街の人々がなだれ込むようにして訓練場に集まり、笑い声と歓声が絶えない。


そんな喧噪の中――

どっしりとした体躯、頑固そうな眉と炎を宿す瞳をした一人のドワーフが、人混みをかき分けて前に出てきた。


「……飛竜だと? 殻虫キングだと?」


低く響く声。

周囲の冒険者たちが「聞いたか?」とざわめき、俺は箸を止めてそのドワーフを見た。


「なんだ? アンタ、興味ありそうな顔だな」


そう声をかけると、ドワーフはふっと鼻を鳴らした。


「興味どころか……血が騒ぐわい。飛竜と殻虫王の素材なんぞ、そう簡単にお目にかかれるもんじゃねぇ。ましてや、それを持ち帰った連中と会えるとはな」


鉄板焼きの煙に目を細めながらも、彼の視線は肉や酒にではなく、俺たち四人へ――いや、正確には俺の背に揺れる亜空間収納の光に注がれていた。



翌朝。


宿の前。

まだ日が昇りきらぬ時間帯に、昨日のドワーフが正座していた。


「ねえ、あれ……」

フィリーネが呆れた声を出す。


「ほんとに正座してる……」

リリナは目を丸くして尻尾をふわふわ。


クロフィードは腕を組みながら「……律儀なやつだ」と小さく笑った。


ドワーフは背筋をぴんと伸ばし、深々と頭を下げた。


「我が名はバルドラン。ドワーフ仲間と鍛冶屋をやっている。……昨夜は失礼した。だが、どうしてもお前たちに頼みがある」


その瞳には一切の迷いがなかった。


「飛竜の鱗、殻虫キングの甲殻――もし本当に持ち帰っているのなら……見せてほしい。いや、それだけじゃねぇ」


ごつごつした拳をぎゅっと握りしめる。


「俺に作らせてくれ。アンタらに相応しい武具を」



心臓が高鳴る。

彼の言葉には、一夜の酒宴よりもずっと熱い火が宿っていた。


新たな武具との出会い――それは俺たちの旅路を、さらに加速させる予感を孕んでいた。



さて、どんな武具を求める?

それは次なる試練と未来を大きく変える選択になるだろう――。





「火は嘘をつかん! 鉄も嘘をつかん! 鍛冶は直球勝負だ!」


「料理も同じだ! 素材はごまかせねえ。嘘をつけば舌に暴かれる!」


宿の中庭に、早朝から熱血のシャウトが響き渡った。

拳を突き出してぶつかり合うのは、俺とドワーフ鍛冶師バルドラン。


「熱と鉄と槌でしか、真の刃は生まれん!」

「火と水と包丁でしか、真の味は生まれねえ!」


ガッシィィィン!

男同士、戦場帰りの戦士のように両手を握り合う。


 


「……なにこれ」

フィリーネが眉間を押さえてため息をつく。


「おぉー! すごいすごい! なんか熱いー!」

リリナはキラキラ目でぱちぱち拍手。


クロフィードは影の中で肩を震わせながら、心でつぶやく。

(興味深い……これぞ男同士の魂の共鳴……観察対象追加だな……!)


 


そこへ、ドリスが人型の姿でひょこっと顔を出した。

「……おまえら、朝からうるさいのじゃ! ワシまだ寝たりぬのじゃが……って、なにやっとるんじゃこれは?」


「「哲学合戦だ」」


俺とバルドランが同時に即答する。


「……はぁ!? 寝起きにそんな暑苦しいもの見せられても困るんじゃが! ……って、でも、なんか……楽しそうじゃのう……」


ドリスの顔は赤い。

どうやら“暑苦しい”と言いつつも、内心は少しだけ惹かれているらしい。


 


バルドランはごつごつした手を俺に差し出す。

「なぁ煮介! お前の和泉一文字――俺に見せてくれ! 鉄を研ぐように、味を磨くように、最高の武具を打ってやる!」


俺はにやりと笑って返した。

「いいぜ。ただし条件が一つある」


「なんだ?」


「鍛冶をする時は、俺の飯を食ってからだ」


沈黙――からの爆笑。


「アッハッハッハ! いい! 最高だ!」

バルドランは腹を抱えて笑った。


 


「ちょ、ちょっと! なに勝手に話まとめてんのよ!」

「ふわぁ……でも楽しそうだよ!」

「……観察対象二名の熱量が上がりすぎて、未来予測不能……だが、素晴らしい……」


そしてドリスは腕を組んで、駄々っ子のように宣言する。

「ずるい、ずるいぞ! ワシもその“飯鍛冶”とやらに混ぜろ! 鍋と槌と炎と……なんか全部混ぜたら最強に見えるのじゃ!」


 


鍛冶哲学と和食哲学、そこに竜娘の駄々っ子まで加わって――

新たな武具誕生の予感は、熱と煙と笑いに包まれながら膨らんでいった。



さて、どんな武具が生まれるのか?

大きな楽しみを抱きながら笑い合うこの瞬間を俺は謳歌していた。





バルドランが和泉一文字を眺めながら低く唸った。


「うぅんむぅう……見れば見るほど、ええ剣じゃな。だがまだ伸び代がある。飛竜の素材で打ち直せば、攻撃力も耐久も桁違い。さらに火属性まで宿せるぞ。……いや、殻虫キングの素材なら素早さと器用さが伸び、水の力が宿る。どっちを選ぶ?」


俺はしばらく腕を組んで考え、にやりと笑った。

「なら……和泉一文字は殻虫キング素材で強化。さらに飛竜素材で二の太刀を作る……どうだ?」


沈黙の後――四人の視線が一斉に突き刺さった。


「……はぁ!? 贅沢すぎるでしょ!?」

フィリーネが真っ赤になってテーブルを叩いた。

「強化と新作を同時にって、アンタ正気? 欲張りにもほどがあるわよ!

アンタがその気なら私だって双剣を二組作ってもらうわよ!」


「にしし……でも、二本あったら二刀流とかできちゃう?」

リリナが尻尾をふりふり。

「にすけ二刀流~! かっこいい~!

わたしもレイピア二刀流できるかな〜?」


「……むぅ、お主ら...」

クロフィードが低く唸る。

「料理人よ、貴殿はただでさえ人外じみた剣技に、属性付き二本とは……世界が震えるな。

我の盾も二組希望する...」


ドリスは腕を組み、目をきらっきらさせながら叫んだ。

「ズルい! ズルいぞ!ワシもその“二刀流ごっこ”混ぜろ! ……いや、ワシ用の竜刀も作れ! 尻尾用と角用の二刀で!!」


俺は苦笑しながら手を振った。

「おいおい……まだ一振りの話ししかしてねえぞ? なんで五振り六振りになってんだよ」


「「「「おまえの欲張り提案のせいだー!」」」」


訓練所に仲間たちの総ツッコミが響き渡った。




場所は変わりギルドの奥にある簡素な会議室。

机の上には殻虫キングの甲殻と飛竜の鱗、角、爪が整然と並べられていた。

バルドランが腕を組み、真剣な声で言う。


「さて……ここからは“鍛冶会議”だ。お前ら一人一人、どんな武具を求めるか言ってみろ」


俺は思わず笑ってしまった。

まるで鍋の献立会議みたいだな、と。


 


◆フィリーネの要望

「双剣と弓ね。速さと切れ味はもちろん、風魔法との相性を最大限に引き出せるようにして。あと軽くて扱いやすいのがいいわ」

そう言いつつ、ちらりと俺を見て赤くなる。

「……べ、別にアンタを守るためじゃなくて、自分のためなんだから!」


バルドランは顎髭をしごき、うんうんと頷いた。

「風をまとう双剣、飛竜の翼膜を組み込めば実現できるかもしれんな」


 


◆リリナの要望

「リリナはね! レイピアもっとぴかぴかにして! あと光魔法をびかーってした時にもっと強くなるやつ!」

両手を広げて“びかー”を表現するリリナ。

「あと、柄はもふもふにしてほしいの!」


「も、もふもふ!? 武具にか!?」

バルドランは目を丸くしたが、リリナは譲らない。

「だって……かわいいほうが強くなれる気がするんだもん!」


 


◆クロフィードの要望

外套の奥で目を細め、静かに言った。

「盾は漆黒に塗装済みで問題ない。だが……闇魔法をさらに深める触媒がほしい。

防御と同時に、影を伸ばし敵を縛れるような……“絶対防御領域”の次の段階を見据えたい」


「名前は後で考えろよ」

俺が呆れ混じりに突っ込むと、フィリーネが鼻で笑う。

「ほんっとアンタたち、領域領域って……それ流行ってんの?」


 


◆ドリスの要望

最後にドリスが机に両手を突き、乗り出した。

「ワシはな! 人型でも竜型でも使える武具が欲しい! 角に装着する飾りでもいいし、尻尾に巻ける刃でもいい! いや、両方じゃ!」


「……欲張りすぎだろ」

俺が呆れると、ドリスは頬をふくらませて駄々をこねる。

「ずるい! みんな二つも三つも言っとる! ワシだって言いたいんじゃ!」


 


◆にすけの要望

みんなの視線が俺に向いた。

「俺か? ……和泉一文字の更なる強化だな。殻虫キングの素材で水属性付与、そして素早さと器用さを伸ばす。

そして飛竜素材で――二の太刀だな」


「「「「結局それかーーーっ!」」」」



会議室に笑い声とため息が混じる。

だがその空気は不思議と温かく、仲間と職人の絆が、鉄よりも固く鍛えられていくのを俺は感じていた。




バルドランは腕を組み、どっしりと答えた。

「……これだけの素材、そして要望の数々。妥協はせん。ワシと仲間の鍛冶師八人、総がかりで十日だ」


「十日……!」

俺は思わず口笛を吹いた。

フィリーネが眉をひそめる。


「そんなにかかるの? いや、当たり前か……これだけの素材と注文なんだから」


バルドランはさらに言葉を重ねる。

「代金は金貨二十枚。……決して安くはない。だが、これ以上の値切りはワシの誇りが許さん」


「き、金貨二十……!」

リリナの耳と尻尾が一斉にぴょこーんと跳ね上がった。

「そ、そんなに!? リリナ、数えきれない!」


クロフィードが低く笑った。

「……桁が違うな。だが、それだけの価値があるということだ」


俺は顎に手を当てて考える。

銀貨100枚で金貨1枚になるとすると銀貨で2000枚必要って事か。

確かに高い。だが、殻虫や飛竜の余剰素材を換金すれば、十分に捻出できるはず。

それに――屋台での和食無双がある。

稼ぐ手段なら、もう身についてる。


「……わかった。払うさ。必要なもんは、ちゃんと稼いで手に入れる。料理も剣も同じだ。段取り八分ってな」


バルドランがにやりと笑った。

「その心意気、嫌いじゃねぇ」


俺は深呼吸をして、仲間たちを振り返る。

「よし、話はまとまったな。そうと決まれば――まずは腹ごしらえだ!」


ドリスがぱぁっと顔を輝かせた。

「おおっ! そうじゃそうじゃ! 空腹では武具談義も冴えぬ! 腹を満たすのが先決じゃ!」


リリナは両手をぶんぶん振りながら尻尾を膨らませる。

「にすけごはん! にすけごはん!」


フィリーネはため息をつきながらも、口元がほころんだ。

「……ほんっと、アンタって何でもご飯に繋げるのね」


クロフィードは外套の奥で小さく肩を揺らす。

「フッ……だが、否定はできんな。和食で結んだ縁が、この場を支えているのだから」


俺は笑いながら手を打った。

「じゃあ決まりだ! 飯だ、飯! 屋台で腹いっぱい無双してやる!」


こうして、金貨二十枚という高額契約も、いつも通りの和食流に笑い飛ばしながら、一行は腹ごしらえへと向かうのだった。




次話へ続く――。



◆あとがき◆





にすけ:「ふぅ……金貨二十枚か。なかなかに高いハードルだけど、あのバルドランの目を見れば騙されちゃいねぇな。あれは本物の職人の目だ」


フィリーネ:「ま、まぁ……金額聞いた時は心臓止まるかと思ったけどね。でも……アンタの剣も、私の双剣も、きっと今より強くなるんでしょ? 悪くないわ」


リリナ:「リリナ、武器ぴかぴか! もふもふグリップ絶対つけてね! 約束だよー!」


クロフィード:「……闇の触媒。結界の次の段階へ……ふむ。鍛冶師の言葉には力があった。あのドワーフ、信用に値する」


ドリス:「ワシは! 尻尾用の刃と角用の装備! どっちも! どっちも絶対欲しいのじゃあ!」


バルドラン:「おいおい、ひとまず一つずつにせい! ……ったく、どいつもこいつも欲張りよのう。だが――そういう欲が、ワシを燃やすんじゃ!」


にすけ:「ははっ……結局みんな欲張りってことか。……まぁ、俺も二刀流とか言い出したしな」


フィリーネ:「あ、やっと自覚した?」

リリナ:「にすけ、やっぱり欲張り!」

クロフィード:「……否定はできんな」

ドリス:「おぬしが一番じゃ!」


(全員で大笑い)


 


──その時、黄金の光が会議室を満たす。


女神アリュ・エイン:「ふふっ……ずいぶん盛り上がっているわねぇ?」


にすけ:「うおっ!? また勝手に出てきやがったな!」

フィリーネ:「で、出たわね女神!」

リリナ:「ひかってるー! ぴかぴか女神ー!」

クロフィード:「……出番を取りに来たか」

ドリス:「ズルい!ワシもピカピカ光りたいのじゃ!」


女神アリュ・エイン:「はいはーい、恒例の次回予告行くわよー!」


「第29話――『金貨20枚の約束――十日間の屋台無双!』。鍛冶代を稼ぐため、にすけたちが屋台で大暴れ! 果たして金貨二十枚は手に入るのかしら?」


リリナ:「リリナ、いっぱいお手伝いする!」


クロフィード:「……香りと味の暴力。その観察、実に興味深い...」


ドリス:「ふははは! ワシの看板娘ぶりを見せてやるのじゃ!」


女神「……って、本編での私の出番は!? ねぇ、出番はあるのよね!?」


にすけ:「さぁな……」


一同「お楽しみに!!」

女神「私にも出番をちょうだぁあああい......!!」

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