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第14章 束の間の平和 第1話 リガー戦の後処理

 みなさま、大変ご無沙汰しておりました。

 この間、他サイトにおいて、エリトニー興亡記の続きを書いておりまして、この度めでたく完結致しました。なろうさんでは、独立戦争第一戦のリガー海岸戦が終わるところまで書いたのですが、この度、第二戦のエレーナ峠攻防戦、最終のエリトニー城攻城戦を書き終えました。残りは16話あります。

 なので、お待ちになっていた方も大変少ないように思いますが、本日から毎日午後5時台にアップしていきたいと思います。アップの時間は定期的に、お昼にしたり、朝にしたりして、たくさんの読者様の目に触れるようにしていきますので、どうぞご理解下さい。


 なお、この作品、なろうさんではサッパリですが(泣)、他サイトでは根強いファンがおられ、この間、沢山のファンアートやファンソングを頂いております。今回、新たに頂いたアートやソングを、適切なエピソードに掲載しておきました。エピソードのタイトルに「挿絵あり」等と入っているのがそれですので、既読のエピソードでも、宜しかったら、アートを鑑賞しに行ってください。とっても素敵ですよ!


 エリトニーが完結しましたら、これまで書き溜めてきた短編がいくつかありますので、順次アップしていきたいと考えています。

 またしばらく宜しくお願い致します。


 2026年2月6日

 小田島 匠

(アロイス視点です)


 リガー海岸上陸戦が終わって6日後、エリトニー軍の精鋭7000人は、殆ど無傷のまま、首都エリトニーに凱旋した。


 8月終わりの陽光が斜めに照り付ける中、楽隊の勇ましい演奏に乗って、僕を先頭に4列縦隊でウォレニー広場を進む。普段ここに駐屯しているスロベニーの援軍は、今日は遠慮して貰って港の方に移って貰い、代わりに5万人以上の大観衆が広場を埋め尽くしている。

 既に、リガー海岸戦が大勝に終わり、ホランドに甚大な被害を負わせて撃退したことは首都に伝わっているので、兵士を歓迎する国民の歓声が広場を包み、口々に「やったぞー! よく勝ってくれた!」「王様! ほんとにありがとうねー!」「次も頼んだぞー!」と叫ぶ声が聞こえてくる。

 ああ、本当に勝ててよかった。今回は上手くいったけれど、僕らはまだまだ小さくて弱いから、一つでも負けたら今ここにいる人たちも巻き込まれて、大勢死ぬかも知れない。大勝に酔うのは今日限りにして、すぐ次に備えないといけないな。

 

 そんなことを考えながら、僕が馬に乗ったまま、笑顔で手を振って広場を進むと、左右の女性から、「キャー、王様ー! かっこいいー!」「こっち向いて-っ!」という黄色い声が一斉に上がった。ふふふ、やっぱり女性から声援が飛ぶのは嬉しいな(笑)。

 が! それと同時に、「ちょ、ちょっと、誰あれ? 背高いー。すっごいハンサム!」「あっ! マケドニーのミシェル王子様よ! エリトニー軍に入ってくれたんだって!」「まあ、なんて素敵な方なの!」などという嬌声も上がっている。ミシェルもあっという間にエリトニー女子の心を掴んだようだ。

 しかし、しばらくすると、 「あれ? ……だけど、セシル様と並んで仲よさそうにしてるわね」「ああ、セシル様! 頬を染めて嬉しそう……」「ふーん、へー、なるほどねえ……」と言う不興声もヒソヒソ聞こえてきた。やっぱり「女の第六感」は恐ろしいね(笑)。二人はそんなこと言われているとはつゆ知らず、楽しそうに笑顔を振りまいていた。

 

 広場を抜けて、お城に続く海上の回廊に差し掛かったところで、首都を守っていたクレマンと、エリトニー市長と、ゲルマー商会会頭のシルバートリオが出迎えてくれたので、僕は一旦馬を降りて三人とガッチリと握手を交わした。

 クレマンは、「お帰りなさい! やってくれましたね! さすがです! こっちは平和で暇でしたけど、毎日お祈りしてましたよ!」と笑顔で称えてくれた。

 本人は「暇」なんて言うけれど、スロベニー軍の世話や、港や鉱山といった国全体の経済の運営、それにリガー海岸戦の武具や食料など兵站の維持、やることはいくらもあったはずで、謙遜としか言いようがない。クレマンのような、内政に特化した「縁の下の力持ち」がいてくれるから、僕たちも安心して前線で戦えるというものだ。どちらが戦功が大きいというものではない。


******


 僕はお城に入り、早速、クレマンら大臣と一緒に、戦後の処理を検討した。

 まず、捕虜にしたホランド兵3000人弱のうち、40歳以上の老兵は、労働や兵役の能力に限りがあるうえ、予算のこともあるので、家族を残しているなど、帰国を希望する者はホランドに帰すことにした。それにより、「アロイス王は慈悲深く、今後も投降すれば助けてくれる」という噂も広まるだろうから、一挙両得というものだ。


 なので、帰国する捕虜と講和の使者を一緒にして、北側のエレーナ峠を越えて派遣することにした。

 講和については、権威主義的なゲルンハルトの性格を考え、まずは、「今回は、攻めてこられたのでやむなく迎撃しましたが、もともとエリトニーは戦いを好むものではありません。今後も以前のような友好を維持していきたいと思っています」と下手したでに出たうえで、「独立を認めてくださるのであれば、現在なら年間2500億ゴールド程度は支払えると思いますし、鉄鋼についても、原価にプラスして輸送費程度の価格で卸すことも検討できると思います」と、思い切った代償案も提示して交渉することにした。

 要するに、僕が独立を宣言する以前に、ホランドが得ていたものと同等かそれ以上の利益を差し出し、「戦争するだけ損」という情況をよく理解させたい。


 また、使者の派遣と並行して、腕利きスパイのカンネイとベラを、ゲルマー商会の商船でマケドニーに送り込み、同国が今後もホランドにつくのかを探り、その後ホランドに入って情報収集に当たって貰うことにした。


******


 捕虜たちは、差し当たって、半分ずつに選り分け、港湾の拡張工事とポルコの鉱山の採掘に当たって貰うことにした。みんな力自慢なので、役に立つことだろう。


 ところが、労働を始めて貰った後に、老兵を中心にした帰国者を募ったところ、意外なことに、殆ど希望者が出なかった。いいとこ200人くらいか。

 どうしてなのか、ポルコに視察に行ったときに、鉄の鉱山で働いているジョナタンに会って事情を聞いたところ、「アロイス様。そりゃ、帰国したら、また軍に取られて戦争の最前線に送り込まれるからですよ。投降した奴の扱いなんて、そんなもんです。今回の戦いで、エリトニー軍がすごく強いって骨身に染みたので、みんな戦いたくないんですよ」ということだった。


 僕が、「えー? そういうこと?」と驚くと、ジョナタンは、「そのとおりです。まあ、エリトニー軍の装備のために働くというのもちょっとアレですけどね」と頷き、続けて、「あと、アロイス様、俺たち捕虜なのにすごく待遇がいいんですよ。狭いけど寮はばっちり完備で、飯は量があって美味いし、労働時間もきっちり8時間でノルマもない。休日は街の出入りが自由な上に、小遣いまでくれて、しかも目標達成するとその分増やしてくれる。要するに居心地がいいんです」ということだった。

 

 なるほどねえ。それで僕が、「まあ、捕虜とは言っても、ついこないだまで同胞だったわけだし、健康害したら労働効率だって落ちるからなあ。やる気出して頑張って貰った方が、お互いプラスだろ?」と言うと、「だから帰らないんですよ。ホランド軍なんて貧乏所帯で、みんな食ってくだけで精一杯だったし、帰っても兵隊に取られるくらいなら、ここでアロイス様に世話になって、戦争終わったら生きて帰ろう、って思ってるんです。だからアロイス様、ホランド兵の評判いいですよ。『あれこそ王だ』 『ああいう王様の下でやりたい』って(笑)」とのことだった。


 そうか。まあ、帰りたくないというなら、仕方ない。エリトニーのために尽くしてもらおうか。でも、街で悪さしたり乱暴働いたら厳罰を徹底しよう。そこは甘くしちゃいけないな。


******


 内政と経済については、クレマンを中心に、ゲルマー商会とも連携してさらに拡大を図っている。ホランドとマケドニーとは国交は途絶したが、両国とも鉄鋼は必要なわけで、実態には目をつぶって「ゲルマー商会が仕入れて売りに来た鉄製品」という扱いで、「ゲルマーから買っている」というていで、輸入している。

 僕は会頭と示し合わせ、ここぞとばかりに高値をふっかけ、さらに武器に転用が難しいように、低~中等品の輸出だけを許可した。じわじわ困らせてやらないと、講和の前提条件が整わないからね。

 

 また、国営銀行の融資と組み合わせた、ペルシャ絨毯や重油など中東製品の市場は、予想をはるかに上回って成長し、スタートアップ翌年には売り上げが5倍に膨らんだ。だんだんと、首都エリトニーがナーロッパ全体の経済の集積地になりつつある。

 ゲルマー商会の利益は年間2兆ゴールドを超え(エリトニーの役人を出向させてるから誤魔化せないんだw)、うち、3割の6000億Gがエリトニーの国庫に納められる。そのほか、鉄鋼の輸出の利益もあるわけだから、だいぶ国家財政にも余裕が出てきた。お金はいくらあっても困らないので、ありがたい話だ。


 ゲルマー商会の会頭など、もう完全にエリトニーに住み着いてしまい、先に購入した自宅の周りの8軒分を買い上げて(地上げかw)、自宅兼ゲルマー商会エリトニー支部を立ち上げ、100人近い社員が熱心に働いている。エリトニー市民からは、「会頭の絨毯御殿」と揶揄されつつも、その朗らかな人柄で親しまれている。


******


 これら国力の増強に努めるのはとても大事だし、しばらくホランドも兵を出す余裕などないとは思うけれど、次の戦いに備えて、軍備を整えておくのは必須だ。

 マケドニーからミシェルとアラン、そして精鋭2000人が抜けてしまったため、次戦は連合を組んで海から攻めて来る可能性は低い。

 したがって、一番可能性が高いのは、北の山脈の中で、唯一開かれた通路、エレーナ峠だ。もともと火山島が大陸にぶつかって出来たエリトニー半島は、北側が2000m級の山脈になっている。それで、200年ほど前から、先人が土木工事を行ってきたが、剣俊な山の中をつづら折りで細い通路が通せただけで、広いところでも幅は数十メートル程度しかない。

 ただ、峠の出口は扇状地になっていて、エリトニー側に向かって開けているうえ、こちらに向かって下っているため、ここに大軍を展開されると、我が軍も厳しい。

 それで僕は、去年から数千人規模の人足を投入して、扇状地を整地してフラットにしたうえ、左右に土を盛って、幅を狭くした。要するに、峠道の出口に、左右が丘になっている狭い通路を作り、そこを抜けないとエリトニーに侵入できないようにした。

 通路の長さは約1km、幅は30m程度か。リクソンなら、すぐに攻略のアイデアを練るだろうし、迎撃する僕の考えも薄々想像がつくとは思うが、やはり大軍を一気に展開させないことが何より大事だ。


******


 このように、まだまだ小さくて力もないエリトニーは、戦勝ムードに浮かれる暇もなく、すぐに山積する課題に取り組まないといけなかった。僕も、毎日、全方位的に立ち回って、本当に身体が5つ欲しいくらいだったが、そんな中でも嬉しい誤算があった。

 ミシェルの参謀だったアランが、すごくいいんだ。まさに掘り出し物。

 彼は、兵術の知識が豊富で、頭も切れるし、穏やかで思慮深い。もちろん、リクソンと比べてどうかまでは分からないけれど、軍事に関しては、僕の留守の間の代理も十分(つと)まる能力の持ち主だった。

 なので、アランはミシェルの下からは外れて貰って、僕の直属の部下にした。ミシェルは「えー?」って言ってたが、アランが「ミシェル様。我々、今はアロイス様に仕えているのですから」と説得し、ミシェルも最後は渋々同意した(笑)。


瓢箪ひょうたんから駒」ではないけれど、こうして、アランが、我が国初の「軍師」に抜擢され、軍事全体の統括者である僕の片腕として活動することとなった。


 あれ? すると、アランは、副将軍のミシェルより位が上になっちゃったんだな。


 まあ、でもウチは能力と人柄優先で抜擢するんだ。悪く思わないでくれよ(笑)。


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