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第11章 オマケ 初代ミス&ミスターエリトニー

(アロイスの視点です)


 少し涼しい風が吹くようになった初秋の日曜日、お城の謁見の間には、即席のステージが作られ、上手かみて下手しもてに舞台袖もしつらえられた。

 今日は、お城の職員や兵士など大勢の選手が参加した、「第1回 エリトニー国王杯ボディメイク大会」が開かれているんだ。すでに午前の予選の部が終了し、これから午後の決勝審査が行われる。


 広間が観客の熱気に包まれる中、司会のカンネイが、

「さあー、みなさんお待たせしましたーっ! いよいよこれから女子の部、フィットネスビキニ部門の決勝審査を行います! 決勝に残ったのはやっぱりこの3人の美女だったかーっ!」と、場内を盛り上げにかかる。しっかし、この人、こういうの上手いねー(笑)。感心しちゃうよ。


「それではどうぞ!」の声と共に、楽隊が華やかな曲を演奏する中、選手が笑顔を向けて入場してくる。スッと背筋を伸ばしたウォーキングがエレガントだ。


「おっと、先頭は、ステラ選手です! 水色のビキニがエリトニー美人特有の白い肌と金髪にマッチしていますねー。いや、しかしこれはデカいぞ! 20㎝ヒールと相まって、217㎝! さすが美しき摩天楼!」って叫んだら、ステラが、(余計なこと言わないでよ)って顔で、ホッペをプーってやってカンネイを睨んでる。はは、可愛いな。


「さあ、続いては誰だーっ?」の声と共に入って来たのは、あ、お姉ちゃんだ! 

「おっとー、こちらもエレガント! 漆黒の髪と揃えた黒ラメの極小ビキニです! しかもサイドは紐! いやー、真っ白な肌に映えて、これもいいぞ!」 人気者の登場に、城内も大歓声だ。


「続けて、最後の選手はー? あ、これは諜報隊員のベラ選手です! 山賊時代からの愛用コスチューム、緑色のセパレートで登場です! こんがり焼けた小麦色の肌にマッチして、これはセクシーだ! 見てくれ、惚れちまうね、この谷間!」って、おいおい、司会、忖度とセクハラやめれー(笑)。


 ステラにはマチアス率いる装甲騎兵隊の、お姉ちゃんには弓隊「チームセシル」のメンバーが親衛隊となり、客席の一角を占め、大声で声援を送っている。

 特に、お姉ちゃんの親衛隊は小隊長のステファンがまとめ上げ、金色のビラビラで縁取ふちどりした揃いのウチワを両手に持って応援している。なんか変な歌うたいながら、ワッショイワッショイ踊ってる。突き上げたウチワを左から読むと、「セクシーダイナマイツ!!」って書いてあって、クルっと裏返すと「燃えろいい女! セシル!!」になってる。よーやるよ、ほんと(笑)。


******


 決勝のポーズの前に、3人がそれぞれ笑顔で手を振り、場内に愛想を振りまく。持って生まれた抜群のプロポーションに、筋トレで鍛えたナイスボディ。いや、これはチャーミングだなあ。

「あー、盛り上がってますねー。いやー、ステラ選手とセシル選手の応援がすごいです。それに引き換え、ベラ選手、孤立無援! まさに四面楚歌です! 頑張れ、ベラ! 今日は特にいい女だぞ!」 さすがにこれには、場内から、「おーい! 司会、司会! 公平にやれ、公平に! えこひいき禁止!」との声が湧きあがり、カンネイがチロっと舌を出す。


「いや失礼致しました! さて、三人の女神が勢ぞろいしたところで、いよいよ決勝のポーズ合戦です! 参ります、フロントポーズ!」というカンネイの声とともに、並んだ三人の美女が足を拡げ、左手を腰に、右手を肩の高さでしなやかに「すっ」っと伸ばし、穏やかな笑顔を浮かべる。場内からは、選手の名前を連呼する声がこだまして、もう音楽も聞こえない。

 その後、胸と細い腰を強調し、髪をかき上げたサイドポーズ、ステージ上は暑いのか、皆、汗を肌に光らせ、それが胸元の谷間に吸い込まれていく。おー、眼福、眼福、ってみんな思ってることだろう(笑)。

 そして後ろを向いてバックポーズをとり、ほとんどTバックのヒップをツンと突き出したところで、後ろから「ブーっ!」との声が響き、驚いて振り返ると、ステファンが鼻から血を噴き出して、周りの仲間に介抱されているところだった。あーあ、刺激が強すぎたんだ。エッチな想像して現実に鼻血出した人、生まれて初めて見たよ(笑)。


 一回りして、最後にフロントポーズをとったところで、最終の採点が行われる。

 ステージ下の最前列で真剣に選手を見つめる本日のジャッジは、エリトニー市長と、たまたま来てたゲルマー商会会頭の「名無しコンビ」(笑)、そこにクレマン大臣を加えたシルバートリオだ。しかし、この三人、ちゃんとジャッジできるのかなあ……。一応、「思った通りに順位つけて下さい。忖度は一切ご無用です」と言ってあるけど。


******


 集計されたジャッジペーパーがカンネイに渡され、いよいよ順位発表。


「さあ、集計整いました。まず第3位から!」の声に合わせて、太鼓の音が、ドコドコドコと鳴り響く。まあ、ステラなんだろうなあ。背が高すぎるうえに、騎兵だから体重制限があって、どうしても細く見えるもんなあ。

 と思っていたら、案の定、「第3位は、『エリトニーのツートップ』、装甲騎兵のステラ選手! 240点! 皆さん、大きな拍手を!」の声とともに、場内から大声援と拍手が湧いた。うすうす予想してたステラも、笑顔で応えている。240点だから、3人のジャッジ全員が3位の80点を入れたんだな。


「さあ、そして第2位はどちらだーっ!」の声に、会場の大半を占めるセシル推しがベラの名前が呼ばれることを期待したが、ドコドコドコ……

「第2位は……、『戦場の黒薔薇』、セシル大臣! 合計280点! おめでとうございます!」の声が響き、後ろの親衛隊が「あーっ!」の声とともに、脱力して崩れ落ちる音が聞こえた。だけど、お姉ちゃんはさすがスポーツマン、清々しい笑顔で会場に手を振り、最後にベラに両手を向けて称えていた。だけど、280点だから、一位票を一票取ったんだな。激戦だったんだ。


 最後にカンネイは、「そして、初代のミス・エリトニーは誰の手に!」って、もう分かってるくせに、楽隊も太鼓をドコドコ叩いて引き延ばして、

「……優勝は、『中世の女スパイ・マタハリ』、くノ一のベラ選手です! 290点! 皆さま、どうぞ盛大な拍手を!」と声に、おお、なんか場内の中年男性から熱い声援と拍手が送られているぞ。そうか、中高年は健康お色気よりも妖艶さか! そういや、ジャッジの年齢構成も偏ってたな。このあたりは来年の課題だ(笑)。

 

 最後は涙ぐむベラのもとに、ステラとお姉ちゃんが駆け寄って称え、それぞれ肩からサッシュをかけて貰い、トロフィーを持ってステージの一番前で優雅な立ち姿を披露する。宮廷画家が素早くコンテを動かして下絵を書いている。


 僕は、会場のみんなと一緒に、大きな拍手を送りながら、(さて、僕もそろそろ出番だな)と、控室に移動した。


******


「さあ、 豪華で華やかな戦いのあとは、本日のメインエベント、男子ボディビルクラス決勝審査! 選手入場です!」 カンネイのアナウンスが響き、楽隊の勇ましい音楽が流れる中、最初に登場したのは、

「エリトニー史上最強騎兵、マチアス選手! 201㎝、80㎏! いやー、細いけど引き締まってますねー!」 それを見て、客席に帰ったステラとお姉ちゃん、そして親衛隊が大声援を送っている。


「さあ、続いては。おお、これは大本命が登場! ロングボウ&重装歩兵隊長、イワン選手! 182㎝、95㎏! いや、これはすごいバルクです! これはもう決まりかー!」 場内にも「まあ、イワンだろうな……」という諦めムードが漂う中、

「そして最後、3人目は、なんとこの方! エリトニーの救世主、全能の天才、アロイス王様! 158㎝、60㎏!」 意外な展開で、城内は興奮のるつぼと化し、「キャーっ!」「おおーっ!」との嬌声とどよめきが広がっていく。


「いやー、王様、素晴らしい肉体です! 完璧に絞り切って胸も肩もキレキレです! これは相当に鍛えています。きっと内緒でプロテインを倍も飲んでいたんでしょう!」などどいう無責任なアナウンスが入り、さっきの声援は一斉に、「なんだとー? 職権乱用だ! ブゥーーーっ!」とのブーイングに変わり、僕は、「違う違う! フェイクだ!」と手をぶんぶん振ってアピール。ちょ、ちょっとカンネイ、持ち上げといて落とすんじゃないよ!


 そして、音楽に合わせて、決勝のポーズ合戦開始!

 サイドチェスト(胸)、ラッドスプレッド(背中、肩)、アブドミナルサイ(腹筋)、ダブルバイセプス(両腕)等、3人で次々とポーズを繰り返すと、

「キャーっ、王様ー。カッコいー。こっち向いてー!」

「腹筋板チョコかーっ! バッキバキだー!」 という僕のへの声援と、 

「イワン! デカい、デカいぞ! 肩にダンプカー乗せてるのかーっ!?」という、ロングボウの筋肉軍団からの野太い声援が場内を飛び交ったのだった。


******


 いよいよ順位発表、第3位は……まあ、マチアスだろうな。がんばったけど細さは如何ともしがたい。やっぱり騎兵はボディビル向かないよ……。

 案の定、3位はマチアスで、本人も予想通りだったのか、満面の笑顔で場内に手を振って頭を下げてる。


「さあ、そして、問題の2位。どっちだ? この瞬間に、第1回のミスターエリトニーが決まります! バルクとサイズのイワンか? バランスとキレの王様か? これはジャッジも迷うぞー! さあみんなどっちを呼んで欲しいー!?」って、カンネイが耳に手をあてて場内を煽り、観客も呼応して僕とイワンの名を叫ぶ声であふれかえる。楽隊も、発表があるまで、ドコドコドコと太鼓で引っ張る。

 バルクで言ったら、全然敵わないけど、イワンは演習もあるからね。スタミナが要るから、どうしてもハードに減量できず、だいぶ余裕残しだ。絞り切った筋肉のカットと、全身を這いまわる血管の見栄えは僕が勝っている。さあ、異なる二つの価値観。ジャッジはどっちをとる?


「……第2位は、…………エリトニーの父、小悪魔アロイス王様! 270点。よく頑張った! 皆様、盛大な拍手を!」 あー、負けたか。しかも全部2位票。完敗だ。やっぱりバルクとスケールでだいぶ負けてたからなあ。まあ、仕方ない。やるだけやったさ。僕は、イワンに駆け寄って、握手してハグ、そして両手でイワンを差して称える。


 最後に、「さあ、栄えある初代ミスターエリトニーはー!?」って、分かってるくせにまたカンネイが引っ張って、「……ゲルマー生まれの筋肉番長! イワン選手の頭上に輝きました! 本当におめでとう!」


 その瞬間、イワンは、この半年間の苦しいトレーニングが脳裏に浮かんだのか、思わず表情を崩して男泣き。場内はヤンヤの大喝采だ。


 その後、表彰式で僕からイワンに、大きなトロフィーと副賞の「お城の食堂の肉料理パスポート(1年分)」、そして今日の眼玉、金色の短パンとタンクトップを授与した。これはミスターエリトニーだけが翌年の大会まで1年間着ることを許された、名誉のウェアなんだ。

 イワンは、金のウェアを嬉しそうに受け取り、頭上に高く掲げ、「お、俺、この金のウェアに恥じないよう、これからも精進します!」などと、殊勝なコメントを残していた。ロングボウ部隊から、悲鳴にも似た祝福の声援が響いてくる。


 このようにして、『第1回エリトニー国王杯ボディメイク大会』が盛況のうちに終了したのだった。来年は、一般市民からも選手を募ろう。


******


 その日から、職員と兵士たちの筋トレ熱が高まって、ますますジムが賑わうようになった。


 イワンも喜々として、金色の短パンとタンクトップで汗を流している。 

 それを、お姉ちゃんと僕の準優勝コンビが、プロテインを飲みつつ眺めている。


「ねえアロイス。イワン兄ちゃん、張り切ってるわね」

「うん。ミスターの称号がモチベーションになったんだな」

「だけど、あのウェア、ぴっちりムチムチしてて、色も変だし、かえってカッコ悪いんじゃ……。なんか大道芸人みたいよ(笑)」

「だめ、シーっ(笑)!」


 そんな会話が交わされているとはつゆ知らず、イワンはキャッキャと楽しそうにバーベルを挙げ下げしていた。

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