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第10章 オマケ ついにジム開設! ほか一編

1 アロイスの大発明(アロイス、イワン、その他)


 僕は一日の仕事を終え、城内の食堂で軽く夕食をとった後、ジャージに着替えて、とある一室に移動する。

 おお、やってるやってる。やっぱりこの時間は混んでるなー。早朝の方がよかったか?


 ジム内では、大男たちが口々に「ウッ!」とか「クハーッ!」とか叫びながら、重いウェイトをガシャガシャ上げ下げしている。ああ、熱気がこもってるな。またこの汗と錆の匂いが、たまんないね(笑)。

 トレーニングしているのは、主に、イワンから「全身鍛えろ指令」の出たロングボウ部隊だけれど、騎兵のマチアスも交じっている。あれ? お姉ちゃんとステファンまでいるぞ。君たち、マッチョ関係ないだろ(笑)。

 

 ジム名は、イワンの鶴の一声で「筋肉工場」になった……。入口の木製看板に黒々と墨書きされている。

 もちろん僕は、「そんなガチな名前やめようよー。『なんちゃらフィットネス』とかでいいよー。せっかくお城の職員全員に解放してるのに、そんなんじゃ若い女子が来ないだろー。君たち貴重な出会いの場をむざむざ放棄してるんだぞ?」って言ったんだけど、「いやいや、もともとボディビルジムとはそういうもの」とガチ勢に押し切られた……。


 僕がジム内のマットでストレッチしていると、

「お、アロイス様じゃないか。身体鍛えにきたんだ!」と言いながら、タンクトップと短パンのイワンが近づいてきた。汗ばんだ巨体から湯気をたてて、これはまた暑苦しいなあー。

「うわー、イワン。ずいぶん身体デカくなったねー。エリトニーに来た時と迫力が全然違うよ!」って、一応褒めておくと、

「ふふふ。そうだろう。だけどやっと90㎏になったとこなんだから、『元に戻った』って言ってくれよ(笑)。これからまだまだデカくするぜ!」って、鼻高々だ。


******


 僕は、今日は胸の日と決めていたので、しばらくベンチプレスの順番待ちしていたんだけど、ロングボウ隊員が「アロイス様、どうぞお先にやって下さい!」と言ってきたので、「いやいや、それはよくないだろう。それじゃ、補助しながら交代でやろうか」ということで、1セットずつ交代で、ベンチプレス(80㎏)を3セット、次いでダンベルフライ(片方20㎏。種目名は分かんなくていいです)を3セットこなした。


 もうちょっとやりたかったけど、皆の邪魔をしてもよくないから、今日はそれで切り上げて、ジムの端っこのチェアに座り、トレの風景を眺めつつ、持参のスペシャルドリンクをシャカシャカした。


 そしたら、イワンが目ざとく見つけて近づいてきて、「アロイス様。それ何?」って、興味深々に聞いてきた。

「これ? ええとね、僕は、『チキンシェイク』って呼んでるけど」

「へー、『チキンシェイク』ねえ……。何が入ってるの?」

「ササミや鶏胸肉を干して粉にしたのと、ミルクと、砂糖。これに卵入れてもミルクセーキみたいでいいかもね。トレする日は、厨房に頼んで作って貰うんだ。肉が苦手な人なら大豆の粉もアリだな。そっちはさしずめ『きな粉シェイク』だね!」


「ぐえー、ドロドロしてる。そんなの美味いの?」って言うので、

「いや、美味い不味いじゃなくて、身体のために飲んでるんだ。トレ後は破壊された筋肉を再生させるために、タンパク質と糖質が必要なんだよ。これ飲んでたら、どんどん身体大きくなると思うよ」と答えたら、

「へー、いいな。それじゃ、ちょっと一口くれよ」って言いながらイワンは、僕からシェイカーをひったくって、グビっと一口飲み、「あ、これ。そんなに悪くない! 身体が求めている味がする! てか美味い!」って、大声立てて驚いた。

 そしたら、「へー」って言いながら大男たちがぞろぞろ集まってきたので、一口ずつあげたら、「美味い! これいい! アロイス様、俺たちにも作ってください! どんどん筋肉つく気がします!」と皆が僕に頼み込んできた。


「えー、そう? それじゃ、厨房に掛け合って、毎日ジムに運んで貰おうかな? だけど厨房の仕事も増えちゃうから、なくなり次第終了ね。トレ後に一人一杯ずつだよ。ズルはなしね」

「おお! ありがとうございます。アロイス様!」

「どういたしまして。みんなの身体が大きくなるの、大事だからね。名前もチキンシェイクじゃあんまりだから、ちゃんとしたのつけた方がいいな。えーと、そうだな、イワン、タンパク質だから『プロテイン』はどうだろう?」

「そのまんまだけどな(笑)。まあいいんじゃないか」


「それじゃ『プロテイン』に決まり! 合言葉は、『トレ後に一杯プロテイン!』。はいっ!」 そう僕が一声かけると、ノリよく、「「「「「トレ後に一杯プロテイン!」」」」」と、大男たちが唱和する声が城内に響き渡ったのだった。


******


 このようにして、お城のジムにプロテインが導入された。皆の好みに合わせて、イチゴ、チョコ、バニラ、ちょっとひねってコンポタ(これオツな味。笑)など、フレーバーも各種揃え、牛乳が苦手な人には大豆を使ったものも用意された。

 ジムの端っこには、「プロテインバー」と称する一角が設けられ、専用の職員が一人つき(この人もトレーニーで、嬉々としてやってくれている)、注文に合わせて一杯ずつ作ってくれる。


 それを励みにして、ロングボウ部隊が毎日ハードトレを繰り返したところ、実に一か月に平均3㎏というハイスピードで体重が増えていった。集団のロングボウの飛距離も、これまで250mだったのが、300mに近づきつつある。いい感じだ。

 いや、我ながらいい飲み物考えたな。


 そしたら、イワンが、「アロイス様! このレシピは門外不出にした方がいいぜ。大事な国家機密がスパイにバレないように、ジムに警備を付けよう!」とか言ってきたけど、僕は笑って、「いや、怪しい秘薬じゃないんだから。そんな特殊なもんじゃないって。誰だって一生懸命トレして、沢山ご飯食べたらこうなるって」って、取り合わなかった。まったく筋肉のことになると大げさなんだから(笑)。


 しかし、僕も、その時には、まさか600年後に発明される飲み物を、先取りして作ってしまったとは、夢にも思っていなかったのだった(笑)。



2 ハニートラップ? (アロイス、マチアス、ステラ)


(客観視点です)


 ある日の午後、公務の空き時間を使って、アロイス王が城下町を視察して歩く。街の賑わいや、人民が幸せそうにしているか等、自分の眼で確かめたいからだ。後ろには、槍を持ったマチアス&ステラのツインタワーが護衛についている。


 人望があり、若くハンサムな王様は、どこに行っても大人気だ。特に女性の人気は絶大と言ってよい。

 今日も今日とて、王様が市場に入って青果店を覗くと、「キャー! 王様よ、カッコいいー♡」とか、「王様! 今日はいいリンゴが入ったわよ! 持って行っておくれよ!」などと口々に言いながら、お店の年配女性や、小さな女の子が近寄ってきてハグしたり、握手したりしている。


 マチアスもステラも、人民から深く愛される王様を誇らしく思い、柔らかに微笑んで見守っている。

 

 んが!


「きゃー、王様ーっ! ステキー! 握手してくださーい!」と、20歳前後の妙齢女性二人が駆け寄ってくると、瞬時にステラが「王様、危ない!」と叫び、バッと間に割って入り、両手を広げて通せんぼする。そして、エメラルドの瞳を冷ややかに細め、2m近い長身から、じっと女性たちを睨みつける……。


「いや、ステラ。危ないことはないんじゃ……」と、王様が背中の後ろから小さく声をかけても、「ハニートラップかも知れないわ! 若い女は特に危険よ! 私が王様を守るわよ!」と聞く耳を持たず、顎で二人を「シッシッ!」と追いやった。女性たちは、その権幕にタジタジとなり、恐れをなしてすごすご退散する。

 周りからは、「美人なのにねえ……」、「よっぽど王様に惚れてるのね……」等と、ヒソヒソ話す声が漏れ聞こえてくる。


 いつもは穏やかで、誰にも優しいステラだが、程なくして、エリトニー中の女性から、「鬼大女」、「巨大番犬」、「摩天楼」などという、不名誉なあだ名を頂戴することになった(笑)。

 

 

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