第十七話 初討伐
魔力だまりから生まれてきたのは、前に見た青色のスライムだった。
見覚えのある魔物だったのはまだ良い。
けれど、3体いるのだ。もう一度言う、3体いるのだ。
「…っ!!」
思わず後ろに下がる。これが魔物。
本当に自然発生するものだったなんて。
「魔物がもうすぐ発生しそうとは聞いてたが。いつもは1体しかでねぇのに今回は3体か…お前、運いいな」
どこがよ!
普通は1体しか出ないのに、今日は3体も出現したんだから、運悪いでしょ!
「もしかして、お前が魔力だまりを踏んだから、お前の魔力と反応したんじゃね?」
うそ!私のせい!私のせいなの!
「構えろ臥龍岡。練習通りにやれば倒せる相手だ」
パニックになっている私とは違い、猪狩さんは平然としていて、魔物に対して魔法を放つ様子もない。
そりゃあ、私の初討伐のためにここにいるんだから、私に魔法をうたせるためだろうけど…
「1体だけ!お手本で1体だけで良いから討伐してください!」
一旦、冷静になりたい。
そのための時間稼ぎをさせてほしい!
猪狩さんは私の言葉にきょとんとしたが、次の瞬間、1体のスライムに小さな火柱が立った。
「ほらよ」
ほらよ、じゃない!
なんでそんな一瞬で倒しちゃうのよ!時間稼ぎにも、お手本にもなってないじゃない!
数秒後に火だるまにされていたスライムは、コロンという音と共に魔石に変わった。
「っ!」
「動きも遅いし、殺傷能力も少ない。殺されることはまずない。大丈夫だから…お前もやってみろ」
…覚悟を決めるしかない。
若干震える手を胸の前で合わせて、自分の身体の中にある魔力に集中する。
ふわっと暖かいものを感じたら、それを目の前の標的に向かって放つ。
次の瞬間、2体のうち1体に、小さな氷の柱が刺さっていた。
「…できた」
達成感と共に、なんだか心がモヤモヤするように感じる。なんでだろう…
「2体とも一気に倒せただろ」
褒められるとは思ってなかったけど、わざわざ言う必要ないでしょ!
猪狩さんをジトーっと睨むと、猪狩さんはサッと私から顔を背けた。
改めて集中して、もう一体にも氷の柱を突き立て、数秒後には3つの魔石が残るだけとなった。
「よし、初討伐完了だな。少し物足りなかったかもしれねぇが。」
「……」
黙ったままの私を猪狩さんは訝しげな顔で見てきた。
「おい、とにかく、魔石を回収して帰るぞ」
ずっと何も喋らない私に、猪狩さんはそれ以上何も言わずに、魔石を黙々と回収して、その場を後にしたのだった。
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