第十五話 知らないとは驚きの
ガタガタと車が大きく揺れ、舗装道路の有り難さがよく分かる。
いよいよ、初の討伐。緊張しないわけがない。
「今日行くところは、比較的小さめの魔力だまりだ。出てもせいぜいスライム程度。まあ、力試しと思え」
緊張をほぐすためか、運転してくれている猪狩さんが、時々励まし?の言葉をかけてくれる。
「分かりました」
今日は2人ともスーツで、表向きは森林の定期的な実態調査らしい。
横目に景色を見ていると、そこには長閑な田舎が広がっている。
現地で手続き的なことが必要かと思っていたが、それは既に済ませていて、必要ないらしい。
一度車を降りて、現地の人に軽く挨拶をしたのち、また車に乗って森へと入っている最中だ。
「そういえば、魔力だまりってどんなところに出来やすいんですか?」
前に説明を受けた際には、解説されなかった部分だ。
凸凹道の急カーブを通過したところで猪狩さんに聞いてみると、こちらの方を見てきた。いや、前向いててくれないと、危ないんですけど…
「俺、お前に話してなかったか?」
「はい。前のお話では、魔力だまりについて、簡単な説明を受けただけで、どのような場所で発生するかまでは伺っておりません」
猪狩さんは少し項垂れたが、すぐに前に向き直り、ハンドルを右に大きく回しながら話し出した。
「魔力がどういう性質か、未だに解明されてない。だが、魔力がたまりやすい場所としては、山頂の窪みとかカルデラ、動物の巣穴とか洞窟、湖、あとは家周りだと裏庭とかかな」
指を折りながら猪狩さんが教えてくれる。
だから、車!運転中に片手離さないで!
私が焦ったのが伝わったのか、猪狩さんはスッと手を元の位置に戻した。
なるほど、山の窪んだ部分、巣穴や洞窟、湖、そして裏庭…うらにわ!?
「家?民家の近くにも魔力だまりができることがあるんですか?」
驚いて聞き返すと、猪狩さんが少し不機嫌になったのが、横顔を一目みただけでも伝わってきた。
何よ。質問くらいしたって良いでしょ。
「ああ、特に人が住まなくなって、廃屋になった家の裏庭に多い」
「なるほど」
何らかの基準があるんだろうけど、今聞いただけではその共通点は見えてこなかった。
「もう一つ、質問いいですか?」
「…あぁ」
明らかに、めんどくさっているの分かる。
だけど、もう一つ、重要なことを聞いておかなくてはならない。
「あの、魔力だまりってどうやったら分かるんですか…?」
私の言葉に、今度こそ驚きを隠せないという表情で完全にこちらを向いた。
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