第十話 歓迎会
あの後、鳳条さんに社宅まで案内してもらい、キャリーケースを部屋に置きにきていた。
「じゃあ、30分後に玄関口で集合ね」
そう言って、鳳条さんは自分の部屋へと言ってしまった。
中に入ると、1人1部屋らしいが、そこそこの広さがある。
部屋の中には、ダンボールが大量にあって、配達業者さんが私の荷物を入れてくれたらしい。
家具付きの部屋だから、持ってきた荷物はそこまで多くないけど、それでも部屋の半分以上は、ダンボールが占めていた。
「うわー。今から開けるには時間ないし…帰ってきてからにしよ」
キャリーケースの中の物だけ片付けると、私は玄関口へ向かった。
♢♢♢
「それじゃあー、臥龍岡くんがこの班に入ってくれたことをにー、かんぱーい」
歓迎会、というから、てっきり大衆的な居酒屋に行くのかと思っていた。
外観は居酒屋で間違いないのだが、中には私達とお店の人しかいない。
「あ、ありがとうございます」
違和感を感じつつ、オレンジジュースを一口飲む。
本当はお酒を頼もうとしたのだが、猪狩さんに止められたのだ。
「今日2回も気絶したし、身体に魔石ができる時にかなりの負荷が掛かっている。まさかと思うが、酒なんて頼もうとしてないよな?」
って笑顔で凄まれた。怖い。
「ここのお店はー、第一班から四班の人間しか使えないお店なんだよー。福利厚生の1つー」
私が疑問に思っていたことに、若干顔の赤くなった東雲さんが答えてくれた。
「はんちょー。今日私お酒飲めないのに!お酒飲まないでくださいよー!」
「苺花、班長に対してそんなことを言わないの」
苺花さん、今日お酒飲めないって、なんか理由あるのかな?
「うー、今日夜勤なのが憎い!」
夜勤!確かに、勤務形態とかに夜勤あるって書いてあったな。
でも、夜勤なのにここに来ていいの??
「電話がならないことをー、祈るしかないねー」
東雲さんがそう言った瞬間、苺花さんが持っていた電話が鳴り始めた。
「はい、三班の鳳条です」
苺花さんは、ワンコールも鳴らないうちに電話に出たかと思うと、だんだん表情が険しくなっていく。
「はい、はい…はい、承知しました。すぐ現場に向かいます…」
そう言って電話切ったかと思うと、勢いよく振り返った。
「はんちょーが電話の話するから!」
「ごめんねー。噂をすればなんとやらだねー」
「もう、もう!歓迎会楽しみにしてたのにー」
半分涙目の苺花さんは、お店から出て行ってしまった。
「よし、仕切り直すか…って、おい、それ俺のさk」
「あっれー世界が回ってる」
なんだか、ふわふわする。おかしいなぁ。お酒頼んでないはずなのに。
そもそも、そんなにお酒弱くないし。
「これはー。別日に仕切り直した方がー良いかもねー」
遠くで東雲さんの声が聞こえた気がした。
第一章、出勤初日編はこれにて完結です。
明日、番外編を一話投稿します!
ぜひ見てください!!