第一話 出勤なんてしたくない
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新連載はじめます!今日は3話更新予定です!
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世界は、この数百年で様々な分野が進歩した。しかし世界には、未だに解明できないものがたくさんある。
異世界外来種対策特殊班。
この班は、公には知られていないが、市民の日々の生活を脅かすものを密かに排除する部隊であるーーー
♢♢♢
「申し訳ありません。もう一度おっしゃって頂いても宜しいでしょうか」
馴染みのない言葉に、杏和は問い直す。
「君は今日からこの部署、異世界外来種対策特殊班に配属になった」
目の前の男性から発せられた聞き馴染みのない言葉。
いつも人前ではポーカーフェイスを大切にしていた私だが、何を言われたのかさっぱり分からず、「はぁーー!!」という大声と間抜け面を晒してしまったのだった。
時は少し遡る。
「お父さん、お母さん、行ってきます」
「気をつけるんだぞ」
「頑張りなさい。でも、辛くなったら、帰ってきても良いんだからね」
スーツに身を包み、キャリーケースを持った私は、今日からの会社に勤めることになった。
私が就職活動に熱心ではなかったが、見かねた父に今年で家を追い出すと脅されたのだ。
その後から、とりあえず色んなところに応募しまくったものの、どこからも内定はもらえず。
結局は、父の知り合いの人の、更に知り合いの人が、ちょうど良い人を探しているらしいからと、紹介してもらった。
人事?の人、なんか胡散臭かったんだよなぁ。他に受かったところなんかないから仕方がないけど。
でも社宅あって、家賃もめっちゃ安いし。ただし、出勤初日からしか入っちゃいけない決まりなんだとか。
「はぁ…今日から社会人かぁ。もう少し学生やってたかったな」
黒髪に染め直し、ポニーテールにした髪を弄りながら、指定された住所まで電車とバスを乗り継ぐ。
さらば私の金髪。もう一度染められるのは何年後になるのやら…
「…ここ?うわ、いかにもやばいことしてるとこって感じ」
指示された場所には、廃ビルが建っていた。建物の一階とか配管に植物の蔓が巻き付いている上、窓のガラスが何箇所も割れている。
「やばいことと言えばやばいことだけど。仮にもお前が就職するとこなのに、よくそんな言葉吐けるよな」
突然後ろから男の声がした。
独り言を聞かれると思わなかった私は、びっくりして振り返る。そこにはシャツにジーパンとラフな格好の男性が立っていた。
「お前が臥龍岡杏和だな。教育係の猪狩裕也だ」
両腕を組み、仁王立ちしている。
うわ、こんな偉そうな奴が私の教育係か…
「失礼しました。臥龍岡杏和と申します。本日からどうぞよろしくお願いいたします」
礼儀作法は厳しく叩き込まれたが、つい油断してしまった。
ここからでも取り返せるだろうか…
「今更お淑やかにされてもな。班長にお前を迎えに行けと言われて渋々来てみれば…とんだじゃじゃ馬娘だな」
めっちゃ腹立つ。何なのこいつ!
上品にしているなんて無理だ。今すぐ1発殴ってやりたい。
どうにか怒りを悟らせないようにするが、口元が引き攣っている気がする。
そんな私を見ていた彼はフッと鼻で笑った。
「こっちだ。ついて来い」
「…はい」
この職場、やっていけないかもしれない。
出勤初日、いやまだ出勤していない段階から、私は心折れかけていた。
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