バーのママ?と女子高生?の会話 三個目
「ほっ、賑やかじゃの、わらわも負けぬわ!」
女子高生?に負けじと叫ぶバーのママ?!
「分身!」
すると、大妖狐の姿が、ぼうっと、揺らめき、
―バァッ、と数十に分かれてはじける。
小さな何十もの九尾狐が舞い踊り、白犬の姿をかき消すほど。
「―うわ、わっ!」
本体のシロンが尻もちをつき、白犬の残像が消え去ってしまう。
体勢を立て直し、ばっと向き直るシロン。
「やるじゃん」
見ると九尾の狐の分身たちは、右後ろ100mほどのところで合体し、一体に戻っている。
「へー、すごいね。アンタもそんなコト、できんだ」
「驚いたか?、ぬしの残像だけとは違い、全てが実体のあるわらわの分身じゃ」
大妖狐の言葉を、上目遣いに返す。
「えー、何かぁ、自慢してるぅ?」
「それってーぇ、マケオシミ、って言わなーい?」
先ほど煽られたお返しとばかりに、煽り返す。
「ねえねえ、『でんせつのきゅうび』とかさぁ、いばってたけどお?」
「バカにしてた『コムスメフゼイ』から逃げちゃうんだー、あははっ」
「ほほ、言うのう」
「その『イマドキのぢょしこーせー』の言い方には腹が立つが…」
「まあ、わらわを僅かでも引かせたことには素直に敬意を払おう」
「流石、犬神の娘であるな。幼いながらも、『禹歩』や『反閇』にあのような工夫をこらし、実戦に応用するとはのう」
「ウホ、ハンベー…?、なにそれ??」
キョトンとする。
「あ、それってぇ、ゴリラの名前が『はんべえ』ってイミか?」
苦笑する九尾狐、ゆっくりと首を振る。
「玉女反閇局法の一つ、禹歩や反閇は陰陽道の秘呪とされておる特別な歩術じゃ」
「術師が邪気を払い除き、吉を呼び込むために…、…は、などと言うても分からんじゃろうの?」
「難しーコトは分からん!」
あっさりと言ってしまうシロン。
「でもあのステップするとなんか、チョーシ良くなってさぁ!」
「だからアタシは『ラッキーステップ』って言ってる、文句ある?」
「やはりそんな感じか…、ふん」
「まあ、『イマドキのぢょしこーせー』の分かりやすい言葉で言えば、そうじゃのう…」
「魔法の歩術を踏めば、こちらの地勢の属性が有利になり、自分の運や速さ、力の能力まで増加する、それも歩術を踏み続ければ、ずっと継続する…、というところか」
「おお、分かりやすいじゃーん、解説ありがとね」
「…でもぉ」
「手加減は、しないよーお?」
シロンの右足が、ガリガリと地面を掻く。
「調子に乗るな小娘」
口許から皮肉な笑いが消える九尾。
「えー、今チョーシに乗らないで、いつ乗るってのさぁ!」
タ、タタ、タタタンッー、シロンが軽やかにステップを踏み始める。
「このまま、行っちゃうぞぉっ!」
サイドステップを踏むシロンの姿がさっきのように、幾重にも重なり見えだす。
「悪いけど、カクゴしてッ」




