領都の街中で買い出し。
「鎧は高いな……」
全員の防具を見に、武器屋から防具屋に向かったのだが……
「全員の防具を買いたいけど、前に出るグリズの防具が最優先だからな」
見たり買ったりした物は、後でショッピングに追加された事があるので……
念入りに店内を見る事にして、グリズの防具を探す。
「やっぱり、1度は実物を見ないとね」
鎧の種類とか盾の種類とか、革とか金属の素材の違いとかも…… 実物を見ないとわからないからね。
「全体的に…… 女性物は少ないですね?」
「女の装備かい? あんまり売れなくてな…… 女の現役は短いんだよ」
防具屋の店主が言うには…… 女性の冒険者や傭兵に騎士は、現役の期間が短いらしい。
「魔物達には…… 女子供を優先的に狙う奴が多く、女の冒険者や傭兵に騎士の被害は毎年出るし、適齢期になると…… 引退しちまうからな。あんまり物が作られないし、置かないんだよ」
「不用在庫になるからですか?」
「まぁな…… これなんかは、どうだい? 胴まわりと胸部が別れるから…… 胸部を胸当てなどにすれば、成長しても使えると思うが?」
店主が取り出したのは、革鎧に部分的に金属板を取り付けた物だった。
「全金属の鎧よりは軽く、革鎧より致命傷を避けれる…… 合成鎧だ」
大事な心臓や腹まわりなどに金属板が貼り付けてあり、それ以外も…… 合わせ目を守る加工がされていた。
「調節もできるし、女でも着れると思うが?」
「確かに…… 着れそうですが…… ちょっと、女性には重いかな?」
「う~ん…… これを着たら、逃げるのに走る自信は無いわ」
「ラフディ君には、丁度良いんじゃない?」
「そうですか?」
「まぁ、優先はグリズの防具だから…… グリズの盾を見てから決めよう」
「そうですね」
「そのあんちゃんの盾かい?」
「冒険者でも、味方を守れる奴が良いんだけど…… ある?」
「冒険者だけど護衛騎士の様にか…… これはどうだ?」
店主が横幅が1メートルの縦幅が120センチの盾を取り出す。
「こいつは、縦幅が変わる盾だ」
「縦幅が…… 変わる?」
「内側につまみがあるだろう? そいつを回すと二枚重ねの表面の金属板が動く仕組みでな…… 縦幅が2倍になるんだ。特殊な合金素材で防具としての性能も高いぞ」
「面白い仕組みだけど…… グリズ、どうだ?」
「重さは…… 大丈夫ですが…… 伸ばすと重心がズレるので、訓練が必要ですね」
「盾は、それが良い?」
「はい」
「じゃあ、グリズのを揃えるか? 店主、さっきの鎧と同じ様な手足と頭の装備も見せてくれ」
「はいよ」
全部で金貨5枚したので、グリズの分だけを買った。
「俺だけ…… 良いんですか?」
「グリズは、敵の前に出るポジションだからな…… 気にするな」
「次は食料?」
「生活品もだな…… ラフディ達も教えてくれ」
「了解しました」
防具屋から市場に向かった。
・
・
・
「塩や砂糖、香辛料は…… 高いのかしら?」
織倉さんと里山さんは、ラフディ達に聞くと……
「塩や砂糖は地域によりますが…… 香辛料?は高いですね。ある物は他国にしか無い場合があるので……」
スパイス系は貴重らしいので、買うのは諦めて…… 食料と生活品を見て回る。
「料理道具を見付けたけど…… ちょっと高いわね」
「食器類は?」
「木製なら大丈夫? 金属食器は高い見たい」
値段を見ながら…… 食器類などの生活必需品を買う。
「次は…… 食料か?」
織倉さんの魔眼スキルを頼りに……
「これは…… 消費期限が4日後…… それはダメです。鑑定できない奴」
危険を避けながら、安全な保存食料を銀貨5枚分程買って、詰所に戻ると……
「離せ! その魔物を狩れば見習い卒業なんだ!」
俺達の魔物車の前で…… 門番と少年達が揉めていた。
「この魔物は従魔だ! 危害を加えるのは認められない!」
「何が従魔だ! 魔物は倒すもんだろうが!」
「やめんか! 貴様の様な者では、この従魔には勝てん! 大人しく見習いの仕事に戻れ!」
「舐めんなよおっさん、俺達は破落戸に勝てるんだぜ? 馬車を引いてる魔物なんかに負けるかよ!」
門番の制止を振り切り、少年達が今にも金さんに攻撃しそうだ……
「ラン、あのな……」
俺がランに耳打ちすると……
「うん…… やってみる……」
ランは、金さんの方に集中すると……
「いくぜ!」
少年の1人が門番の制止を振り切り、金さんに迫り剣を振った……
「空気壁……」
ランが唱えると、振り下ろした少年の剣が空中で止まる。
「な、うわぁ!?」
空中で止まった剣に驚いた少年…… その身体が首から下は地面に消えた。
「何が…… ぎゃあ!?」
「うわぁ!?」「ヒィ!?」
「ちょっ!?」「助け!?」
門番と揉めていた少年達は…… 頭を残して、首から下が地面に消える。
「お待たせしました」
「おう、来たか」
「ええ、用事も済んだので…… 街を出ても?」
首から上だけの少年達を無視して、門番と街を出る話を進める。
「ああ、また変なのが来る前に行ってくれ」
「そうですか…… それでは」
門番に一礼して、金さんが引く魔物車に乗り込むと…… 織倉さんと里山さんにランとラフディ達は、既に乗り込んでいた。
ガウ♪
首から上だけを地面から出した少年達の顔の横で…… 金さんが軽く鳴いた。
それだけで、少年達は顔を青くして震え出した。
そんな少年達など知らぬと言う感じで、金さんが引く魔物車は堂々と領都をあとにした。




