領都籠城戦!
「あれが…… 人狩り小人…… 見た目は、漫画やアニメのゴブリンだな」
ライフルのスコープから、領都に迫る魔物達の姿を確認すると……
「あ、御輿を担いだ…… 人型の豚、オークか?」
「え!? 凶人豚もいるんですか?」
「きょうじんとん…… って、何だ?」
「豚系の頭をした人型魔物の事です。人を食い、女子供を襲い拐う魔物で、その…… 人狩り小人と同じくらい女性に嫌われています」
あ、あっち系の魔物なのね……
ラフディが説明に躊躇した事から…… 薄い本に出る様な生態らしいと推測する。
「俺の処の物語と同じか…… となると、織倉さんと里山さん、ニィーナとラミィにランが危険だな」
「あの数です…… 俺達も危険ですよ」
「奴等には、男は食料ですが…… 主なら拐われそうですね」
「マジで?」
全員が無言で頷く……
あれ? おかしいな…… 俺、淫魔に転生したの?
「あの数…… 領都は防衛できると思うか?」
「城壁がありましたが…… 凶人豚が複数いると厳しいかも知れないですね……」
「強いのか?」
「凶人豚が複数いるって事は、集団を率いる魔物がいるって事です」
「集団を率いる魔物……」
「その魔物は上位種…… 王のジョブ持ちかも知れません」
「王のジョブ持ち…… 魔物の王…… 魔…… 王!?」
勇者(仮)より先に…… 魔王と遭遇した様です。
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「トアエン様!」
「状況は?」
騎士団を率いて…… 伯爵の次男トアエンが城壁の上に到着し、城壁に集合していた兵長に状況を聞く。
「領都の外の避難は完了しましたが…… 状況は悪いです」
「魔物か…… 数は?」
「外から避難した者の話と斥候の情報から…… 人狩り小人が150から200。それに……」
「それに何だ?」
「複数の凶人豚と…… それを超える影を見たと……」
「「「「「「!?」」」」」」
「凶人豚だと!?」
「しかも複数…… 見間違いでは無いのか?」
「自分が確認しました…… 間違い無く、豚頭でした……」
「くっ、それに影が気になる…… 人型だったか?」
「避難した者の報告では…… 2本足だったと……」
「まさか…… 巨角人!?」
「馬鹿な! 奴等は小人や豚頭も食らう、一緒に行動するなどありえん!!」
「それが……」
「どうした?」
「豚頭達が小人を乗せた御輿を担いでいたと……」
その場いた者達に緊張が走る……
「まさか…… 人狩り小人に王種が生まれたのか?」
「で、伝令!!」
「何事か?」
「魔物の群れが目前にぃ!!!」
「来たか…… 全員、防衛準備! これより…… 籠城戦を開始する!!」
覚悟を決めたトアエンの号令に…… 領都の騎士団と兵達が迅速に動き出した。
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「アギャ? ジャマナ…… マァイイ…… オレノネドコニスル。サァ…… オマエラ、アノマチヲジュウリンシロウ!!!」
凶人豚が担ぐ御輿の上、似つかわしくない杖を振った小人が怒鳴ると……
アギャギャギャギャギャアー!!!
200以上の人狩り小人達が一斉に叫びを上げ、領都の城壁に走り出す!!
「イケィ! イッテ、オレニオンナコドモヲササゲルノダァ!!!」
御輿の上で小人が小躍りする様に騒ぎ出す。その後ろで……
グウゥゥゥゥゥ……
3メートル近い巨体が低い唸りを上げた。
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「き、来た!?」
「怯むな! 弓を構え、城壁に取り付く前に射落とせ!!」
領都の城壁目掛け、駆け出した小人達に矢が降り注ぐ!
アギャ!? アギャギャギャギャアァァァァァ!!!
急所に命中した小人は倒れるが…… それ以外の小人達は、怯む事無く領都の城壁に走る!
「止まれ…… 止まれよ…… 隣の仲間が死んだろう? 何で…… 何で、向かって来るんだよぉぉぉぉぉ!!!」
怯む事無く矢の雨を駆ける小人達の姿に…… 領都の兵達が恐怖する。
「落ち着けぃ!!! 奴等は魔物…… 人の様な知性を求な! ただ眼前の敵として射てぃ!!!」
兵長の1人が…… 迫る小人を矢で射抜き、兵達を鼓舞する!
「「「「「おう!!!」」」」」
兵長の鼓舞に応える様に…… 兵達は弓を構え、小人達に矢を射った。
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「ギギ…… ナマイキナ…… オマエラモ、ブキ…… ツカエ」
杖を振る小人の声に…… 小人達が別の武器を持ち出す。
「サァ…… ハヤク、ヤツラヲコロセ……」
アギャギャギャギャギャアァァァァァ!!!
その武器の中に…… 魔石が付いた杖と弓が見えた。
「よし、矢を持って…… ぎゃあ!?」
「な!? ぎゃあぁぁぁ!!!」
隣の兵が射抜かれたのを見て、動きを止めた兵が焼かれた。
「な、水だ! はやく火を消せ! 小人が魔法攻撃だと…… まさか!?」
その様子を見た騎士は、城壁から小人を見る……
「魔導具!? 弓と杖持ちを」
言い終える前に騎士の身体が宙を舞い…… 城壁の下に落ちた。
「くそ! 魔導の杖と弓を持つ奴が現れました!」
魔導具の武器持ちの登場に…… 形勢が魔物達に傾く。
「魔導の杖と弓だと…… まさか、ダンジョンの魔物!?」
魔導具の武具は、ダンジョンで発見される事が多く。
その事で、ダンジョンに多くの人が挑戦するのだが……
ダンジョンの魔物の餌食になる事も多かった。
その時、挑戦者の持ち物をダンジョンの魔物が拾い…… 使う事がある。
「隠されていた未登録ダンジョンが…… 溢れたか……」
小人達が持ち出した武器は、ダンジョン挑戦者の持ち物……
人の欲望で隠されたダンジョンが…… 人に牙を向いた。




