伯爵領の領都へ……
「思ったよりも時間がかかったな…… 領都で補給と情報収集したら、状況しだいだけど…… 辺境に急がないとな」
ランの魔法威力が強力過ぎて…… 安全な魔法を覚えさせるのに時間がかかった。
「まさか、生活魔法が四属性の複合魔法だったとは……」
ランに姫様の塔で回収した魔導の杖を使わせて、火魔法と水魔法を覚えさせる事に成功したら…… 何時の間にか、生活魔法も覚えていた。
「俺も覚えたし…… まぁ、良いか」
生活魔法の清潔が使える様になったので、ランの魔力暴走の危険は回避されたけど……
姫様の体調が完全に戻るまでは、ランの魔力を姫様に譲渡する朝の日課を続けている。
「王都を出て7日目…… 今日は、何故か8人で移動中」
「織倉さんとランちゃんの冒険者登録の為です」
「あ、はい」
天魔の双子は、妖精とメイドさんが見てくれると言うので……
今日の昼前には領都に着く予定なので、領都の冒険者ギルドで2人を登録する事にした。
「今後の事を考えて、移動しやすい方が良いですから」
「一緒が良いです」
ラフディとグリズの話では、冒険者もクランとかファミリーとか団体を作れるらしいので…… ついでに作る事にしました。
「名前…… どうします?」
「リーダーがヨミ君でしょ? ヨミファミリーとか?」
「自分の名前が入るのはちょっと……」
「じゃあ…… 青少年少女の家」
「それだと、成人したら出ないとダメな感じですよ」
「そうですね。それじゃあ……【クリアファミリー】は、どうでしょう?」
「クリアファミリーですか?」
「無色透明とゲームとかの攻略したって意味のクリアで、クリアファミリーです。無色透明と攻略には、種族や奴隷なんか関係無し…… 難関を攻略するに家族って感じに…… ダメですか?」
「「「「良い」」」」「わ、わたしも!」
ラフディ達とランは賛成らしい。
「無色透明な家族ですか…… いずれは、私と……」
「家族…… この子達と…… それも良いですね!」
織倉さんと里山さんも…… 反対では無い様だ。
「それじゃあ領都で、織倉さんとランの冒険者登録と一緒に登録しようか?」
「「「「「「「はい」」」」」」」
意見が一致したので、破壊熊の金さんに魔物車を力強く引いてもらい、領都に急いだ。
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「「「「!?」」」」
「主、臭いが!」「あるくおと…… いっぱいの……」
領都に向かう中…… 俺と里山さんに金さんとイナバから異変を報せる信号が、ラフディとラミィも感じたらしい。
「音がいっぱい…… ラフディ、何の臭いかわかるか?」
「鉄と血の臭い…… 何よりも強いのは、人狩り小人達の臭いです」
「人狩り小人?」
「だいたいニィーナやラミィより、ちょっと大きな子供くらいの…… 人型の魔物です」
「人型…… ゴブリン?」
「ひ、人ですか……」
「人……」
「魔物です。ゾンビやスケルトンのアンデッドと同じ様な…… 敵です」
「て、敵……」
「魔物……」
人型と聞いて動揺する里山さんと織倉さん…… ランは、よくわかってない様だ。
「ラフディ、標的は…… 俺達か?」
「いいえ…… どうやら、俺の目的地の領都が標的の様です」
ラフディ達の感覚から推測すると…… 人狩り小人…… 俺達的にはゴブリンみたいな魔物が集団で、領都に向かっているらしい……
「それって……」
「ええ…… 領都が魔物に襲撃されます」
「人狩り小人は…… 街を襲うのか?」
「いいえ…… 普通ならば、ありえません。ですが……」
「ラフディ?」
「奴等の上位種が生まれた…… 可能性があります」
ラフディの顔が強張るのを感じた。
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「大変です!」
「何事か、騒々しいぞ!」
「ま、魔物の襲撃です! 人狩り小人の集団が領都に迫って来ます!」
「何だと!?」
領都の領主である伯爵邸で、伯爵の次男の【トアエン】は魔物の襲来の報告を受けた。
「くっ、父上と兄上が盗賊討伐に出ている時に…… 急ぎ、城門を閉じよ! 城壁に兵を集め、籠城戦の準備を!!」
「「「「「はっ!!!」」」」」
トアエンの命に、聞いた部下達が急いで部屋を出て行くと……
「俺も出る。戦の仕度を…… 頼む」
トアエンは、執事達に指示を出しながら着替えに走る。
「俺は騎士団に行くので、避難勧告と指示を頼むぞ」
「トア様…… 了解しました。ご武運を」
「うむ…… 行くぞ!」
騎士甲冑に着替えたトアエンは、馬に跨がると執事達に避難を指示して、城壁に走り出した。
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伯爵領の領都へ続く平原を…… 土煙が領都に向かって迫る。
グギャギャギャギャギャギャガァ!!!
カビの様な緑や黒の肌をした子供の様な影が…… 奇声を上げながら歩く。
この世界では、人狩り小人と言われる人型魔物の集団だ。
「イケェ! ニンゲンタチノマチヲクライ、オンナヲウバウノダ!」
1匹の小人が…… 声を上げる。
フゴオォォォォォォォオ!!!
その小人が乗る御輿を…… ブタの顔した人型魔物達が担ぐ。
「イケェ! イッテ、コノオレニエモノヲササゲロ! オレガオウダ!」
小人が杖を翳す…… その杖は王が持つ王杖の様に見える。
「オレガ…… コノチノオウダ!」
小人が杖を振ると…… 杖が妖しく光った。
グガアァァァァァァ!!!
その光に反応する様に…… 小人とブタ顔の後ろから雄叫びが響いた。




