見習いっ娘育成計画……
「移動手段と遠距離攻撃を手に入れたし…… そろそろあの娘の育成を始めるか」
伯爵の領都に着く前に…… 魔力過多に苦しむ見習いっ娘のLvを上げて、魔法スキルを覚えさせたい。
「理想としては生活魔法なんだけど…… ハンドガンの魔導具があれば、土魔法と風魔法を覚えると思う…… ジョブが何になるか?は、わからないけど」
そろそろ姫様の状態も戻りそうだし…… あの娘自身が魔力を使う事を覚えないとな。
「ふむ…… なら、双子とニィーナとラミィはあずかろう」
「お願いします」
「ミナ姫様の体調も良いし…… 双子は勿論、あの2人にも会いたがっていてな」
「それは良かった…… ニィーナ、ラミィ、姫様と仲良くね」
「「うん」」
「それじゃあ…… 行こうか?」
「は、はい」
メイドさんにニィーナとラミィをあずけて、見習いっ娘と魔物車に向かった。
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「まぁ、せっかくだし…… 投擲スキルも覚えようか?」
「は、はい」
ひょこひょこと付いて来る見習いっ娘……
「ひょっとして…… 足、怪我してる?」
「え、あ…… 小さい時…… 怪我して……」
そう言えば…… 虐待されていたって言っていたな…… 俺に治せて事か?
「何処を怪我したの?」
「え、あ、このあたりです……」
見習いっ娘が左の太股の付け根…… 股関節の辺りを指で示す。
「小さい時にか……(赤ん坊の時に足を怪我したのか? 歩行に障害が出てるって事は…… 骨折でもして、骨が変形してしまったのか……)う~ん…… ちょっと触っても?」
「え、あの…… わかりました…… ど、どうぞ……」
手繰り上げたメイド服のスカートの中から、細い足が見えた。
「じゃあ…… 触るよ」
「は、はい…… ぅん……」
(やっぱりか……)
付け根から少し下の太股の骨が…… 少しボコっとしている。
どうやら骨折したのに、ちゃんと治療されなかった様だ。
「(試して見るか……)ちょっと舐めるよ」
「え、ひゃ…… ぅん…… はぁ……」
織倉さんの火傷を治した様に…… 見習いっ娘の太股を浄回しながら舐める。
「ちょっ!? な、何してるんですか!!!」
「は、ハレンチです!!!」
見習いっ娘の治療をしていたら、織倉さんと里山さんに引き剥がされた。
「いや…… あのですね……」
「この娘には…… そ、そうゆうのは、はやいので…… わ、私に!」
「そ、そうです! 私にして下さい!!」
「いやちょっ…… 治療していたんですが……」
「「え、治療……」」
「足が…… じんじん…… します……」
「大丈夫かい? ちょっと歩いてごらん」
見習いっ娘の手を引いて、足の動きを見ると……
「あれ…… 足が…… 何時もと違う……」
「どうやら治せたみたいだけど…… 何時もの歩き方が身に付いたから、逆に歩き辛いのかな…… しばらくは歩行訓練しようね?」
「は、はい……」
「今日は、弱い魔物を遠距離から攻撃しようね?」
急に足が治った違和感から不安になったのか? 少し落ち込んでるみたいだから、弱い魔物でLv上げする事にした。
「そう言えば…… 名前は? 俺の事は、ヨミって呼んでくれて良いから」
「よ、ヨミおにぃちゃん…… わ、わたしは…… らん…… 小町 嵐です……」
「胡蝶蘭? お花みたいな名前だね」
「そ、そんな事は…… おかあさんは…… おとうさんに〝いらん〟って…… 言われたから付けたって…… 言ってました」
「(いらん…… いらないって事かよ。 それを名前に…… 間違いなくクズだな!)ランちゃんって呼んで良い?」
「え、あ、あの…… ちゃんはいらないです……」
「じゃあ…… ラン、これからは一緒に冒険もしようね」
「冒険…… も?」
「うん、君は大丈夫…… 俺達と一緒だから」
「一緒…… 一緒にいてくれるの?」
「ああ、君が嫌じゃないのならね?」
「う、うぅん…… いやじゃない、わたしも…… わたしも、ヨミおにぃちゃんと冒険する!」
「よし、それじゃあ先ずは…… 投擲の石拾いだな」
「うん!」
ランと一緒に石を探す俺……
「良いな…… 私もそんなお兄ちゃんが欲しい……」
「小さい娘の面倒を見る少年…… 尊いわ…… やっぱり、小学校の先生の方が……」
その様子を見て、織倉さんと里山さんがちょっと変な感じになったけど…… 放置した。
「主を兄と…… グリズ」
「わかった。主の妹さんを守る」
ラフディとグリズは、ランの警護にやる気が出た様で良かった。
「じゃあ、始めるか?」
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「お、ランのLvが上がった」
「ほんとに?」
俺達は、ランの安全の為に…… フィールドラットって言うネズミ系の弱い魔物を中心に探して狩った。
普通は魔石も小さ過ぎて素材にならないので、討伐依頼でも無いと無視する魔物だが……
数だけは多いので、スキルのLv上げには持って来いな魔物だ。
「本当だよ。投擲と土魔法に風魔法も覚えたみたいだ。自分のステータスで確認してご覧」
「うん! 本当だ…… えい!」
「お! すごいな…… エアランスか?」
「ヨミおにぃちゃん、ちがうの…… え~っとね…… え、エアボールなの」
「「「「え!?」」」」
「マジで?」
「うん」
戸惑い気味に頷くランが近くの太めな木に試したのは、下位や低級と言われる風魔法のエアボールで……
エアボールが当たった木は、中心に大きな穴を空けて倒れた……
その威力は、どう見ても……
中位や中級以上の…… 魔法と同等の威力でした。




