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熊に揺られて…… お馬車の稽古?


「まさか…… 本当に連れて来るとは……」


「すごいですね……」


街から少し離れた場所で…… 里山さんがテイムした破壊熊に、冒険者ギルドのイケメンさんと馬車屋の店主が驚く。


「どうですか? このこに合う馬具はありますか?」


「馬具はねぇが…… 魔物用の魔物車があるから持って来たぜ。馬以外は売るなって、言われてねぇからな」


「そう言うのもあるんですね…… おいくらで?」


「普通なら…… 金貨30から40枚なんだが、この辺りでは馬車が主流でな…… 売れずに埃を被っていたもんだし、金貨20…… いや、15枚でどうだ?」


「良いんですか?」


「見ての通り…… デカ物でな。場所を取って新しい馬車が置けんのじゃ…… 助けると思って買ってくれんか?」


「いや、買いますよ!」


馬が2匹で引く魔物車は…… 軽トラックくらいの箱馬車だった。


「車輪や車軸は魔合金属で、車体はトレント木材を使った…… 高級品じゃたんじゃがの」


「内装が…… 無い?」


「注文者が行方を眩ませてな…… 資金が途中で尽きた」


クッションも何も無い木材剥き出しのベンチシートは…… ちょっと痛そうだ。


「これはちょっと…… 辛そうですね」


普段は車を乗っているのか? 里山さんも気付いた様だ。


「すまんの…… 本当なら王公貴族なみの内装にするはずだったのじゃが……」


「まぁ…… 内装は好みにできると思えば…… ね?」


「そうですね…… 好きにできると思えばね…… その分を【金さん】の装備に回してくれるなら……」


「「「きんさん?」」」


「このこです」


里山さんが破壊熊を指さす……


「熊だからですか?」


「熊だからです」


金さんの名付けに俺と里山さんは分かり合えたが…… ラフディ達と馬車屋の店主にイケメンさんは、首を傾げていた。


「これでよし…… 基本的には馬具と同じだが、魔物車に繋ぐ以外での鞍や鐙は…… 必要無いじゃろう?」


破壊熊の金さんの背は…… 中々の毛皮で直乗りでも痛く無い。


「今の時季は良いかもですが…… 夏は暑そうですね」


「ふむ…… お荷物になるかと思っていたが、魔物用の鞍だ。持って行くと良い」


「鞍…… どちらかと言えば、鎧みたいですね?」


「魔物の騎獣は基本的に戦闘用だからな。家にあるので破壊熊に合うのは、これだけだ」


「ありがとうございます。付け方は?」


「革鎧と同じ様な感じだ。試しに付けてやろう…… 大人しくしてるよな?」


「だ、大丈夫ですよね? 金さん……」


「ガウ……」


「俺も手伝うので…… 痛くしない様に気を付けましょう」


「そうだな……」


馬車屋の店主と俺は、少し恐怖を感じながら…… 破壊熊の金さんに騎獣の鎧を着せる。


「どうだ?」


「金さん、どう?」


「ガウ? ガウ!」


騎獣の鎧を着た破壊熊の金さんは、里山さんの言葉に反応すると…… 身体の動きを確認する様に立ち上がったり、軽く走ったりしている。


「ガウ…… ガウ!」


「左肩がきつくて、お腹まわりがゆるい? みたいです」


身体を何回か捻ってから、金さんが里山さんに軽く吠えると…… 里山さんが騎獣の鎧を指さして言った。


「破壊熊の言葉がわかるのか?」


「スキルの影響ですね。なんとなくですけど…… テイムした魔物の感情を感じるんですよ」


「そう言うもんか…… 調整するから動かない様に言ってくれ」


「はい、金さん、じっとしてだよ」


「頼むぞ…… 本当に」


破壊熊の金さんに見られながら、馬車屋の店主が騎獣の鎧を調整した。


「良い感じみたいですね」


「ふぅ…… まったく、生きた心地がせんかったぞ」


調整された騎獣の鎧を着た金さんは、里山さんを背に駆ける。


「じゃあ、これが代金です」


金貨20枚の入った革袋を店主に渡すと……


「おい」


「俺達は、このまま次の場所に向かうので…… 迷惑料だと思って下さい」


「やっぱり…… 行ってしまうのです?」


「1度狙われた以上、この地に留まるのは危険ですから……」


「ギルドの人間として、本当に申し訳がない」


「それならば、情報を下さい。この先でも伯爵の3男の影響がありますか?」


「そうですね……」


冒険者ギルドのイケメンさんと馬車屋の店主が言うには、今回の事は3男の独断だろうとの事……


「伯爵は貴族としては凡人だが、領主としては悪くないお方だ」


「嫡男もそれなりに優秀な方で、この処の魔物の活性化の対策に忙しいそうですね」


「領都には次男がいるから…… 王都方面での影響力を持ちたいのだろう」


「噂ですが…… 母の出が商人なのを嫌い、貴族になりたいそうですよ」


「貴族院を出ているのに、商人ギルドに回されたのが余程嫌だったんだろうな…… 他領でも、後継以外は…… 戦力の騎士爵か、役人になるのが一般的なんだが」


「母の影響がある様です…… 商人の家から貴族入りしたので、実家と組んで荒稼ぎしている様ですし…… その姿に…… 貴族して恥を感じてるみたいですよ」


「貴族が金を稼ぐ者では無いってか? 金無しで自領の運営はできんのにな」


「貴族院で貴族の悪い処を覚えたのでしょう…… あの方が嫡男で無く、幸いでしたね」


その後…… 魔物車を運ぶのに使った馬2匹に乗り、冒険者ギルドのイケメンさんと馬車屋の店主は街に戻って行った。


「さあ、俺達も出発だ」


そして、俺達もさらに東の伯爵領の領都に向かい……


「ガウ!」


破壊熊の金さんが引く魔物車を走らせるのだった。



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