ようやく着いた街のギルドで…… 2
できる感じの女性が指示すると…… 押し退けられた男性を警備員らしき人達が連れて行った。
「失礼しました…… それで、その4人の奴隷証明でよろしいので?」
「あ、はい」
「そうですか…… そちらの少年達は1人銅貨4枚で、こちらの少女達は…… 銅貨2枚づつの合計銅貨12枚です」
「手持ちで丁度か…… あの魔物の買い取りはできますか?」
「魔物の素材の買い取りですね? できますが…… 解体をしていないのは手間賃の分、買値が下がりますね」
「手間賃ですか?」
「冒険者ギルドならば、冒険者見習いの講習などに使う事もあり手間賃が低いので、解体していないのならば、彼方で買い取りに出すのをおすすめします」
「そうですか…… なら、魔石の買い取りをお願いできますか?」
「魔石ならば…… 買い取りの相場が同じなので、どちらのギルドでも大丈夫ですよ。どのくらいお持ちでしょうか?」
「う~ん……(魔石はショッピングでも使うからな……)冒険者登録に必要な金額がわかりますか?」
「冒険者登録ですか? 確か…… 普通の初期登録に1人銅貨5枚の見習い登録なら銅貨2枚だったと思います」
「初期登録と見習い登録の違いって、わかりますか?」
「初期登録は最低ランクGの冒険者として登録、見習い登録はランク外の冒険者見習いとして、街や村の入場料の免除や最低ランクの依頼を受ける事と、ギルド施設の使用が認められてます」
「ランク…… 見習いでもランクは上がりますか?」
「確か、依頼を達成していれば…… 詳しい事は冒険者ギルドで確認して下さい」
「わかりました。それでは…… この数なら銅貨30枚分になりますか?」
「失礼して…… 小さいですね。ラット系の魔物かしら…… あら? 属性持ちが多い…… こちらなら高く買い取りますが、どうしますか?」
女性が選んだのは、俺が浄化したゾンビラットの魔石の余り物だった。
「いくらになります?」
「この数なら、銅貨45枚…… 銅貨50枚でどうでしょう?」
「それでお願いします。あ、銅貨は30枚の銀貨2枚にして下さい」
「わかりました。奴隷証明も準備しますね」
「お願いします」
しばらく待つと…… 巻物と小さな革袋を持って、女性が戻って来た。
「此方の奴隷証明に主の名と奴隷の名を書いて、血判を押して下さい。此方の袋は魔石の買い取り金ですので、金額をご確認下さい」
「なら、奴隷の名は俺が書きます」
元商人見習いのラフディが、グリズとニィーナにラミィの代筆で名を書くと……
「う……」
順番に小さな針で指を刺し、名の上に血判を押していく。
(ヤバイ…… 俺、名が無い……)
「主、どうぞ」
「あ、ああ……(どうする…… 前世の名を書くか?)」
「どうしました?」
「あ、あの…… 名が無いんです…… 孤児だったので……」
「それは……」
「すみません…… 私も最近の付き合いでして……」
俺の言葉に…… 女性がじと目で里山さんを見る。
「あの…… 勝手に名を付けて良いんですか?」
「え、ええ、大丈夫ですよ。同じ様に孤児だった方が自分で名乗る事が多いですから……」
「なら……(転生者で死に戻るから……)ヨミ…… で良いかな?」
「ヨミ…… 様ですか? あまり聞かない名ですが…… 大丈夫ですよ。代筆しましょうか?」
「あ、たぶん大丈夫…… どうですか?」
「はい、ちゃんと書けてます。血判を押して下さい」
「はいっ…… これで良いですか?」
「はい、奴隷証明は完了です」
血判を押した奴隷証明の巻物と手持ちの証明料を渡すと、女性が巻物を水晶に当てる。
「消えた!?」
「商人ギルド本部の魔導具に送りました…… これで何処にいても商人ギルドがある場所なら、あなた達の奴隷証明ができますよ」
「ありがとうございます」
「此方も仕事ですから…… ちょっとお耳を……」
女性が小声で…… 先程の男性について教えてくれた。
あの男性は、この領主の伯爵の3男で2番目の側室の子供との事…… 2番目の側室は商人の出で、その実家が最近奴隷商を始めたとか……
「最近盗賊が村を襲って子供を拐うらしいので…… 用心を」
女性がラフディ達を見て、俺を見る。
「なるほど…… ありがとうございます」
「いえいえ…… それではお気を付けて」
これは早々に街を出た方が良さそうだと思いながら、俺達は商人ギルドを後にした。
「次は冒険者ギルドだな……」
商人ギルドの向かいにある建物を見る……
「人気は少ない様だな?」
「依頼に出たのでしょう…… 昼にはちょっとはやい時間帯ですから」
「混んでないなら丁度良いか……」
商人ギルドの女性の言葉で警戒しながら、冒険者ギルドの中に入る……
「おう、坊主供…… 何用だ?」
受付カウンターから、眼光鋭い筋肉の塊の様な男が睨んでいた。
「あ、あの…… 冒険者登録に来ました」
「何? 冒険者登録だぁ? 帰んなぁ……」
「え?」
「おめぇみてぃな坊主供に、冒険者が勤まるかよ! 帰ってママのお乳でも吸ってろ」
「孤児なんで、母はいないですね」
その言葉に…… カウンターの男の目付きがさらに鋭くなり。
「てめぇ…… そんな小綺麗な孤児供がいるか! 嘘を付くなら、もっと考えるんだな。これだから貴族の小倅は……」
どうやら…… 身なりと対応で、貴族の子供だと思われた様です。
「本当に孤児なんですが……」
「うるせぇな…… いい加減にしねぇと、叩き出すぞ「お前をな」ヒイィィィ!?」
筋肉の塊の様な男の頭を…… 鷲掴みにした手がカウンターの奥から現れた。




