ようやく着いた街のギルドで……
里山さんのLvを上げながら進む事5日……
街が見えたので、俺と里山さんにラフディ、グリズ、ニィーナ、ラミィの6人で街に向かった。
「ようこそ、リズバンの街に…… 何用かな?」
「え、あの……」
「小さな村の孤児なので…… 冒険者ギルドに登録に来ました。この人は村からの付き添い人で……」
「その4人は奴隷か?」
「実は…… この4人を連れた盗賊に襲われまして……」
「何!? 盗賊に襲われただと……」
「盗賊の連れていた奴隷が一緒と言う事は、まさか…… 倒したのか?」
街の入口で門番の兵2人が驚く…… まあ、子供の姿の俺と女性だけで、奴隷を連れた盗賊に勝つとは思わないよな。
「それが…… その盗賊を魔物が横からガブリと」
盗賊は魔物に殺された事にして話すと……
「そんな事が……」
「運が良かったなお前…… とりあえず規則だから、奴隷達4人の分の銅貨3枚づつと小さいのは1枚づつの合計銅貨8枚と、お前達2人の銅貨5枚づつの合計銅貨10枚を合わせて、銅貨18枚を払って貰うぞ」
「銅貨18枚ですか?」
「銀貨1枚と銅貨8枚でも良いが…… 無いのなら、その奴隷を街で買い取る事もできるぞ」
「買い取る…… 奴隷以外でも良いですか?」
「うん? 一応、魔物の素材買い取りもしているが…… その歳で奴隷持ちは危険だぞ」
「危険?」
「その…… 獣人の奴隷は人気でな……」
盗賊討伐の戦利品として、奴隷はかなり人気らしい……
「獣人は力が強く気配に敏感だから、商人や貴族の護衛に最適なんだ。それに奴隷なら基本的に裏切らないし、獣人の子供は見た目も良いからな」
確かに…… ニィーナとラミィは、海外の子供モデルや子役より美人で愛らしいし、ラフディとグリズもイケメン少年だ。
「出会いは不幸でしたが…… 彼等には冒険者登録してもらって、パーティを組むつもりなので……」
「そうか…… 念の為に、商人ギルドで奴隷証明した方が良いぞ。でないと、闇奴隷取引として捕まる事があるからな」
「そうなんですか?」
「昔、お前と同じ様に盗賊の戦利品として奴隷を手にした者が、その奴隷の家族から訴えられてな…… その奴隷の出身が貴族で、その者は打ち首にされたんだとよ」
「そうなりたくないのなら、奴隷証明をして置きな」
「なるほど…… そうしますね。それでは魔物の買い取りをお願いします」
「ああ、此方だ」
ダッシュボアの革と牙、5匹分を…… 銀貨3枚で買い取りして貰い、入場料を支払いながら商人ギルドと冒険者ギルドの場所を聞いた。
「この大通りを真っ直ぐ行って、突き当たりの前の左右の大きな建物の右が冒険、通りを挟んで左が商人ギルドだ」
「ありがとうございます。それでは」
「ああ、気を付けてな」
「がんばれよ」
門番の2人の兵士に礼を告げて、俺達は街に入った。
「先ずは…… 奴隷証明からかな?」
「その方が安全です。俺達も次の主が良い方とは思えませんから……」
「それなんだけど……」
「どうしました? 里山さん」
「ラフディ君達を…… 解放しないの?」
「それは……」
「やめて下さい。俺達は1度奴隷にされた身です……」
「奴隷にされた者は、余程の事が無いと…… 村や街に戻らない」
「正確には…… 戻れないんです」
1度でも奴隷になった獣人は、獣人達には家畜と同じ様に見られるらしく…… 扱いがかなり酷いとの事。
「獣人の社会は力がある事が1番…… だから、子供だろうが敗者の姿である奴隷を下に見るのです」
「ライオンやオオカミの群れに近いかな…… 下手に戻るよりも奴隷のままの方が良いのか?」
「はい、主は衣食住と力をくれますから」
「やっぱり異世界なんだ…… 奴隷制度には反対だったけど、そうじゃないと生きていけない世界なんだね……」
「魔物がいる世界ですから…… 街や村の外には死が身近にあり、他者の保護なんて言ってられないのでしょう。その中で、奴隷制度が唯一の保護制度なのかも知れませんね」
「奴隷制度が保護制度?」
「犯罪者でもない限りは、主が奴隷を生かさないといけないらしいです」
「はい、普通の奴隷は、主が衣食住に怪我や病気の面倒を見なければいけません」
「だから…… 日本的に言えば、ラフディ達は俺に生活保護されてる状態ですかね」
「どちらかと言えば…… 魔物と戦わされるブラック企業の社員なんじゃ……」
「一緒に魔物と戦うのに、ブラック企業ですか?」
「どちらかと言えば…… 主には安全な場所にいて欲しいんですが……」
「スキルの恩恵の都合で、俺がパーティメンバーじゃないとダメなんだよ」
「そうですか……」
「あ、あそこかな?」
言われた通りの場所には、向かい合う大きな建物が3つあったので…… 商人ギルドだと言われた左側の建物に向かう。
「いらっしゃいませ…… どの様な用件でしょうか?」
受付の男性が胡散臭そうに俺達を見る……
「この4人の奴隷証明をお願いします」
「奴隷証明ですか…… あなたが主で?」
「わ、私では無くて、彼です」
「君が…… ですか?」
「はい、襲ってきた盗賊の奴隷達なので、戦利品として俺が登録しました」
「盗賊の奴隷ですか…… その盗賊は?」
「俺達を襲った時に…… 魔物に食われました」
「それは…… 運の無い盗賊ですね…… わかりました。奴隷商を紹介しますので、そこにお売り下さい」
「いや、売らないので奴隷証明を下さい」
「何を言っているんです。君の様な子供に必要ないでしょう? すぐに売るべきです」
「いや、パーティメンバーなんで売りませんよ」
「パーティ? 冒険者なのかね君は?」
「これから登録に行きます」
「やめたまえ。冒険者など…… 危険だぞ。それよりも、その奴隷達を売った金で暮らせば良いじゃないか?」
「いや、旅をするのに彼等が必要なんですよ。いいから奴隷証明を下さい」
「旅だと? 子供の君に旅など無理に決まっている。だから奴隷を売って、この街に住みなさい。なぁに心配はいらない。私が仕事先を見付けてあげよう」
「いや、いいので…… 別の人を呼んで下さい」
「なんだと! 子供の癖に生意気……「はい、失礼しました。担当を代わりますね」な!?」
俺と押し問答していた男性を押し退けると…… できる感じの女性が現れた。




