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先輩勇者の失敗から学ぶ異世界生活?


「死因は…… これか?」


座禅をする様に佇むミイラの胸には…… 立派な騎士剣が突き刺さっている。


「この体勢で正面からって事は…… 信頼して人間に殺られたのか?」


「そうよ」


「うお!?」


耳元で囁く様な声に驚き、俺が飛び退くと……


「何よ。そんなに驚く事無いでしょ?」


「え、ちょっ…… 妖精?」


「あら? 元の姿に戻っているわ」


「元の姿に?」


「そう…… 憎悪と怨念…… 裏切られし盟友達の真実に闇を纏った私は…… やがて、内まで闇に飲まれたのよ」


「盟友の真実…… この人の事?」


俺がミイラ化した人物に目をやると……


「そう…… 私の契約者…… 彼は、精霊の契約者だった」


「精霊の…… 君は精霊なの?」


「ええ…… 彼のおかげでね。元々私は、今の様な妖精だったのよ…… 彼は勇者の仲間として、各地の精霊達を味方に付けて魔物達を討伐していったの…… その実績は目に見えて勇者を超える程に……」


「なるほど…… 勇者より目立った為に討たれたのか?」


「ええ…… 恋人の聖騎士にね……」


「え、聖騎士…… 恋人の?」


妖精に戻った黒少女が語るには……


群衆の目に見て魔物を討伐する精霊の契約者と、元凶を討伐する為に最奥を進み続けた勇者……


その両者では、どちらが民衆に支持されるか?を問題視したのが…… 教会だった。


「当時の聖女は…… この国の王族で教会が支持していたのよ。教会の信仰は神…… しかし、民衆は契約者の力を見て精霊信仰が広まったのよ。元々教会が無い辺境の町や村では、精霊と契約して力を借りたりしていたから…… その事を恐れた教会は、ダンジョン化したと語り彼とあの娘を此処に閉じ込めたのよ」


自分達に信仰と支持を集める為に、先輩と恋人を闇に葬ったのか…… あれ?


「でも…… 遺体は1つしかないんだけど?」


「彼が願ったのよ…… 自分の命を差し出すから、あの娘の命を助けて欲しいと……」


「それがこの状態……(恋人を救う為に覚悟して、討たれたからこそ…… 正面から突かれたのか……)立派な人だったんだな」


「そう…… 彼は精霊達がもっとも愛した人…… 故に精霊の怒りを恐れた教会は、彼の命を…… 彼の愛した者に奪わせた……」


「愛した者…… まさか、この剣の持ち主は……」


「ええ…… 彼の恋人…… 聖騎士だったあの娘よ」


聖騎士の誓い…… 神の名の元に、教会が聖騎士に絶対の命令を下す事ができる。


「その命令に抗う為に、あの娘は常人が狂う苦痛に…… その姿に彼は、優しく笑いながら言ったのよ。最後を君に…… とね。その優しい声に押されて、彼に剣を突き立てた時…… あの娘の命も聖騎士の誓いで尽きてしまった」


最後は、座禅した彼に抱き合う様に倒れた様だ。


「その遺体は?」


「聖騎士の装備を回収に来たのよ。教会の連中がね……」


妖精になった黒少女が顔を反らす…… 俺は妖精を掴んで握る。


「何をした?」


妖精を掴まえた手で、徐々に力を込めて握ると……


「あの娘の身体に入って…… 教会で暴れたのよ」


と、白状した。


教会の中で、剣以外は回収された聖騎士の遺体が暴れまわる。


そんな前代未聞の大事件に教会は、黒少女が憑依した聖騎士の遺体を建物ごと焼き払った。


「で、聖騎士の鎧は聖女が封印して行方不明に…… 私は此処に戻ったけど、闇に飲まれてダンジョン化していたのよね」


「ちょっと待って、今…… ダンジョン化って、言ったか?」


「言ったわよ」


「精霊って…… ダンジョン化するのか?」


「条件しだいね。元々此処は教会の地下墓地だったんだけど…… 私が暴れたせいで、教会が無くなってから誰も祓わなくなってしまったから…… 淀んでしまったのよ」


ダンジョンは、空間の魔力等が淀む場所に発生しやすいらしい。


「そこに彼の持ち物が放置されたから…… 勇者の仲間だから強力な魔物の魔石とか色々ね。それらがダンジョンの条件に合っちゃったのよね……」


「つまり…… お前はダンジョンマスター?」


「ダンジョンマスターって言うより…… コアかしら? もう違うけど」


「え? もう違うの?」


「えぇ、あそこ、あなたが私を倒した処を調べて見て」


「此処か? え~っと…… 魔石?」


「それがダンジョンコアよ」


「え?」


「おめでとう♪ 今からあなたは、ダンジョンマスターよ」


黒少女だった妖精がニヤリと笑う。


ああ…… 名も知らない先輩……


俺…… あんたの相棒にはめられて、ダンジョンマスターにされた様です……


その時俺は、天で恋人を抱いた先輩に笑顔で親指を立てられた気がした……


「あんたの時代に無かっただろう! そのジェスチャー!!!」


と、天に吼える俺に…… どや顔の妖精が親指を立てていた。



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