元おっさんの俺。女子高生との格差に崩れる……
「俺(残機制)じゃなきゃ…… 即死だぞ」
「すみませんでした」
復活した俺に、織倉さんが土下座で謝罪している…… それは見事な土下座だった。
「此処に住むと言われても…… なぁ?」
「ふむ、そもそも食事の問題や…… それに急に姿を消したら騒ぎになるだろう?」
「それにスペアキーはもう無いし…… スペアキー……」
「どうした?」
「いや確か…… あ、売ってる」
ショッピングの項目に、ホームキーの一覧があったので確認すると…… スペアキーが買える事がわかった。
「でも…… 魔石Pは無いし、金も無い……」
「お金? それって…… 円でも良いですか?」
「え? 良いけど…… スペアキーだけで5万だよ?」
「ありますよ。5万円以上」
「へぇ!?」
そう言って、織倉さんが俺に財布を差し出す。
「え、あの……」
「使って良いので、スペアキーを下さい。後、何か便利そうな物も!…… って、どうしました?」
「いや…… ちょっと格差を実感して……」
ぱっと見で10万以上が入っているのが見えて…… 現役女子高生と元おっさんの俺の経済格差に絶望した。
「これが…… 若さか……」
「異世界で使えないでしょうし…… 今は環境改善が第1です」
「うんまぁ…… スペアキーは渡すけど、君はお仲間の処に戻らないとね」
「やっぱり…… 急に消えたら問題ですよね?」
「いざとなれば、スペアキーで逃げられるから…… 怪しまれない様に気を付けてくれ」
「はい…… 辛いけど、ちょっと我慢します」
ショッピングで、スペアキーと小さく折り畳めるレインコートに除菌シートなど買い、小さいハンドバックに詰めて織倉さんに渡した。
「じゃあ、戻ろう」
「はい…… また来ますね」
「「あい♪」」
メイドさんと天使と悪魔の双子と見習いの子に見送られて、俺のマスターキーで織倉さんとベビールームに入った廊下に戻った。
「う~……」
「どうした?」
「お手洗いって…… 言って出たの思い出しました」
「あ~…… 迷った事にしたら?」
「信じてくれたら良いですが…… この後は?」
「とりあえず、城を出るかな」
「私の環境改善の為に、死がないで下さい」
「はい…… 使って分を返す為に努力します。それでは」
「何かあればベビールームにメッセージを残しますね。お気を付けて」
「えぇ、お互いに」
織倉さんと廊下で別れて、俺は城の出口捜索を再開した。
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「小高い山に城を建てて、回りを城壁で囲んでいるのか…… 城壁の外には堀もある。堀の外は…… 貴族の屋敷か?」
この城の回りには、城下街が山を下る様に建ち並んでいるみたいだ。
「出るには…… 門を潜るしかない様だけど…… どうするか……」
時間帯は夜。
安全に門を潜るならば、馬車に潜むのが1番だろうけど…… 夜中に城から馬車が出る確率は、王族が少ない今は低いだろうな……
「急病で医者をって事も、魔法があるなら少ないだろうし…… あれは?」
高い城壁に寄り添う建物の上に大きなボーガン? バリスタって言う奴だかを発見。
「高さが城壁の中間くらい…… と言う事は、あの矢を飛ばす為の穴があるって事か?」
籠城戦で城下を攻撃する為なのか? 城壁中間部に有る固定兵器を発見したので、その射線上を確認する事にした。
「うわ……(ヤバイな。思ったよりも高い……)穴落ちの場合…… 落ちた場所からやり直しが多いけど、堀に飛び込む音でバレるよな…… そん時はベビールームに退避かな?…… って事で…… いっちょ、飛んでみますか」
侵入を防ぐ為の傾斜が付いた穴に、俺は身体を捩じ込むと……
「ほぼガン○ムサイズの垂直落下滑り台…… 俺、逝きます!」
城壁に張り付く様に滑り落ちて、俺は外堀に落ちた。
(ヤバ!? 衝撃がスゴ! こりゃあ鎧とか着てたら沈むわ…… 残機減ったし……)
外堀は用水路だった様で……
川の様に流れがあったので、水の流れに身を任せていたら……
「いで!?」
鉄格子にぶつかった。
「此処は…… 貴族街の境か?」
城の城壁の様に貴族街も壁で囲み、水路には鉄格子が嵌め込まれている様だ。
「城ほどじゃないけど……」
貴族街の出入口にも門がある様で、城のほど立派では無い服装の兵達がいた。
(警備兵って感じか? 子供だから見逃して…… くれないよな)
用水路から頭を出して、辺りを探っていたが……
(身体が冷えて来た…… 残機も心許ないし…… 1度上がってベビールームに…… うん?)
身体が震え出したので、用水路から上がろうとした時に……
(これは…… 排水用の地下水路?)
用水路に横穴を見付けたので、俺は迷わず進む事にした。




