べつに…… 姫を拐われた配管工や騎士でも無いし、先祖代々の吸血鬼キラー族や吸血鬼の生まれ変わりでも無いけど、お城を攻略します。俺なりに……
あれから、マイホームの検証した結果……
「ふむ、この鍵が有れば、何時でもこの部屋に入れるのだな?」
「ええ、この部屋のスペアキー…… この部屋の扉を召喚する魔導具の様です」
ベビールームの中でドアの横の壁にボックスがあったので、調べてみたら…… 持ち手が犬と猫が背中合わせに寄り添ったデザインの金の鍵が3つ有った。
魔力を登録した者が空間に差し込むと、ベビールームのドアが現れる仕様の様で、とりあえずお姫様とメイドさんに見習いの子に渡した。
登録者以外には見たり入ったりできない仕様の様だし、何かの時に緊急避難所に代わりに使えるしね。
「良いのか?」
「俺が付ききりで世話するよりも、色んな人に愛された方が良いと思いますし…… 俺には〝これ〟が有るから、信頼してますよ」
俺は3人の物とは違い、犬と猫が宝玉を抱え合うデザインの銀の鍵を見せる。
「ふっ、我が命にかけて…… ミナ姫様とこの子等を守ると誓う」
「死が無い方向で、お願いします」
ちなみに、ベビールームと言うだけあって、あかちゃんに必要な物は全て揃っていたが……
「魔力譲渡する哺乳瓶…… 君達、魔力を吸うのか?」
双子が魔力を食料にする事が…… 悪魔っ子の行動で判明した。
「あの…… ごめんなさい……」
「む~う~……」
申し訳なさそうに謝る見習いの子と…… 二日酔いの様な感じの悪魔っ子がいる。
俺達がマイホームの検証中に、うたた寝をしてしまった見習いの子の服に潜り込み…… 胸に吸い付いた悪魔っ子が、魔力暴走しかけると言う珍事を起こしたのである。
「とりあえず無事で良かったけど…… 次からは哺乳瓶を吸う事! わかったな?」
「あ~い~……」
暴走しかけて魔力酔い状態の悪魔っ子は、気だるげに返事を返した。
「たく…… しょうがない奴だな?」
「あい!」
天使っ子に話しかけると、同意する様に返事をして頷く。
「まあ…… 双子が魔力を食うから問題だった見習いの子の魔力過多は、とりあえず大丈夫ですね」
「うむ、双子と侍女見習いはどうにかなりそうだが……」
「問題は、俺ですね……」
元々この塔に幽閉されているお姫様にその付き人が2人、食料も当然3人分だし…… お姫様の部屋に男の俺が泊まるのも問題だ。
「万が一にも、こんな状況を知られたら…… ミナ姫様が嫁に行くどころか、王族から抹消されるかもしれん」
「そうそうに消えた方が良さそうですね」
「え!? いなくなっちゃうんですか?」
「「あう!?」」
「え、あの、その…… いっちゃうんですか……」
驚いた顔のお姫様と双子に、悲しげな見習いの子が俺を見る。
「いやいや、これが有るからベビールームで逢えるでしょ」
双子も鍵の持ち主と一緒ならドアを潜れる事が検証できてるので、とりあえず大丈夫そうだし……
なので、俺は此処か出る事にした。
「此処は、俺には超危険地帯だからね…… とりあえず、お城を出ようかと……(他の人達も気になるしね)」
他の召喚された人達の状態が気になるし、ショッピングの項目に部屋のキーが追加されていたのも確認したので……
念の為にも、自分だけの安全地帯を確保したい。
「そろそろ行くのか?」
「ええ…… 1度、他の人達の様子を見てから、城を後にしようと思います」
「うむ…… ならば、君が上がって来た穴から戻り、階段を探せ」
「何故です?」
「この塔は…… 王族の逃亡を防ぐ為に…… 塔の中に塔を作り、隠している…… その隠された塔の1階部分の一角が此処だ」
「外部に余計な王族の血統を作らない為に…… ですか?」
「そうだ…… 此処から出るなら、外側の塔を螺旋状に登って降りなければならないのだ。はやく塔を出たいのならば、戻った地下から外側の塔に出た方がはやい。この隠された内部の塔には、地下への道は無いからな」
「なるほど、わかりました。それでは…… また」
「ああ、また…… な」
「お気を付けて……」
「あ、あの…… がんばってください」
「うん、また後でベビールームにね♪」
心配そうに見送るお姫様と見習いの子と双子に手を振り、俺は再び地下に潜った。
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「外に出れたけど…… ちょっと厳重過ぎじゃない?」
言われた通りに、地下から外側の塔の1階に出た俺は……
油断しない様にと壁に覗き穴を作り、外の様子をうかがう……
「渡り廊下の回りに見廻り兵が巡回中…… 囲んでる城壁にもいるし…… これは、ゲームをチェンジだな」
俺はゲーム一覧の中から、悪党の屋敷に忍び込み暗殺するゲームを選び……
「目標は、召喚された人達の安否確認…… 無理は禁物、安全第一! さて、行くか……」
俺は塔から素早く抜け出して、近くの暗闇に身を潜めるのだった。




