吸収と魔力譲渡の用途は? そして始まるのは、育成ゲーム?
「魔力譲渡って…… お姫様の魔力欠乏に使えって事?」
「それもあるが、吸収スキルで過剰になって魔力を放出する為だろうな。むかし、限界まで吸収していたスライムが弾けるのを見た事がある」
「えっ、魔力って過剰だとヤバイんですか?」
「ああ、この子の魔力暴走がまさにそれだ」
メイドさんは、お姫様のベットの横で倒れている…… 自由神様が現れるまで光っていた侍女見習いの子を指差す。
「うわ…… なにそれ、人間爆弾じゃん……」
「爆弾? 普通ならば、生活魔法などの魔法スキルで魔力を消費するし、それでも普通の魔力回復量ならば起こる事が無いはずだが……」
「そのこの子も、ユニークスキル持ちって事でしょうね……」
「うむ、察するに…… 魔力回復系スキル、しかも高位のスキル持ちの様だ」
「それなら…… もうちょっと吸収して措きますか?」
「本人が倒れるほどなら、定期的に吸収した方がいいが…… 一般的に魔力が1番回復する就寝前が良さそうだな」
「そう言えば、1度倒れたって言っていましたね」
「ああ、気を失った事で就寝中と同じ様に、魔力の回復がはやまったのだろうな」
「なら、意識の無い今も危険ですかね?」
「う~ん…… 無理に吸収して魔力回復スキルが反応しても困るな。1度、起こそう」
メイドさんが見習いの子を座らせる様にして……
「ふん!」
上半身を支えると、時代劇で見た様な感じで起こす。
「う、あ、あれ? わたし……」
「大丈夫か?」
「え、あ、はい…… あの……」
「う~ん…… 風邪をひいたみたいにダルいでしょ? ちょっとごめんね」
「いや、あの…… ひゃん!?」
俺が手を伸ばすと…… 激しく脅える様に身体を縮めた。
「ちょっとだけ我慢してな。良い子良い子……」
できるだけ優しく頭を撫でながら…… 吸収スキルで魔力を吸収した。
「これ…… ヤバイわ……」
見習いの子から魔力を吸収すると、その量に俺の身体が悲鳴を上げ始めた。
「まずい、魔力暴走だ! はやくミナ姫様に譲渡しろ」
なんとかお姫様の手を掴み、魔力譲渡スキルを発動すると……
「ふ~…… この子の魔力量ヤバイわ。今はお姫様が魔力欠乏しているから譲渡できるけど、この子自身が魔力を使わないと吸収しきれないぞ」
「その感じだと…… 手持ちの魔導具では魔力補給しても、回復量に追い付かないな。さて、どうしたものか?」
「へぇ、魔導具なんてあるの?」
「うん? ああ、召喚されたのだったな。ほれ、この部屋の灯りも魔導具の一種だ」
「灯り…… 地下の宝玉も?」
「そうだが?」
「消えそうだったし…… 何個か取ってくるか?」
「ちゃんと戻すのだろうな?」
「壊すといけないので、やめときます。だから…… 槍を向けないで下さいよ」
「ふん…… しかし、困った事になった」
他から魔導具を持って来ようにも、此処は普段は王族を幽閉する為の離れの塔…… しかも第2お姫様の周辺には、第3お姫様を嵌めた奴がいるっぽいし…… おいそれと魔導具が欲しいなんて言える訳がない。
「貴様…… 君は、何か持っていないのか?」
「俺ですか? 俺の持ち物なんて……(下にあった呪いの武具や防具などは言わない方が…… いいな)これかな?」
魔石ポイントで買ったバールと、ゲームアイテムのガムテープを出す。
「鉄の棒と…… 粘る紙か?」
「物を束ねたり、傷の応急処置に使えるんですよ」
「包帯の代わりか、なるほどな…… だが、先程ヘリアレス様から何か貰っていたな?」
「貰いましたけど…… 魔力譲渡スキルにもう1つスキルと、これですよ」
俺は、かなりでかい卵の【天魔の卵】を取り出す。
「な!? 魔物の卵か?」
「自由神様の贈り物なんで、槍を向けないで下さいよ」
「う、うむ…… しかし…… 危険は無いのか?」
「どうなんですかね…… 触れてみたいの?」
俺とメイドさんのやり取りを、おろおろと見ていた侍女見習いの子が卵をジーっと見詰めては、コクコクと頷く。
「優しくね? 優しく…… 「「!?」」」
侍女見習いの子が触れた瞬間、卵が光輝き辺りが閃光に包まれる。
「くっ、ミナ姫様は無事…… だな。しかし…… いったい何が?」
「う~ん…… 目がチカチカする……」
「ヤバ!? たま、ご…… が割れてブッ!?」
粉々になった卵の破片に驚愕していたら、俺の顔に何が貼り付いた。
「か……」
「か?」
「「「かわいい♥」」」
「あう?」
顔に貼り付いた者を掴んで引き剥がすと…… 俺の手にいる者を見て、3人の女の子らしい声が鳴り響いた。




