ここまでがチュートリアルでした……
「我が国の者が、誠に申し訳無い……」
話を理解したメイドさんが、俺に深々と頭を下げた。
「いやいや、あなたが召喚した訳では無いですし…… それよりも、ちょっと良いですか?」
「何かな?」
「この部屋、呪われた物…… ありません?」
「な、なに!?」
俺はメイドさんに、呪いで充満していた下の部屋と同じ感じがする事を説明した。
「この部屋は、使う前に高位の浄化をするのが通例で…… 私も確認したが?」
「なら、その後に運び込まれた…… かも知れない」
「うむ…… すまないが、その…… 確認してもらえないだろうか?」
「良いですけど…… スキルを使っても、いきなり刺さないで下さい」
いまだに手放さない槍を見ながら確認すると……
「使用前に使うスキルを教えてもらえるならば……」
「使うのは…… 浄化系と鑑定系のスキル? だと思います」
「思う?」
「スキルが無い世界から来たので、説明がし辛いんです」
「う、うむ…… なるべく怪しい行動をしない様に頼む」
いきなり拉致監禁された様な感じと、召喚時の状況を説明したので、メイドさんは何とも言えない顔になっていた。
(この人…… メイドの格好しているけど、たぶん騎士だな)
メイドさんを考察しながら、ゲームを変える……
(俺を蹴飛ばしたあいつ等よりも、騎士らしい騎士だな。う~ん、呪いの元凶捜し…… 推理ゲーの証拠集め? いや、脱出ゲーのアイテム集めか?)
結局推理ゲーに切り換えて、メイドさんに見張られる様に捜索を始めた。
ちなみに、ステータスを見た時…… 俺の残機が1つ減っていた。
俺…… 1回死んだ様です。
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「この先…… 扉から呪いが漏れているみたいです…… どうしました?」
「この先は…… とある方の寝室がある」
「寝室……」
「家具に衣服などは浄化する前に運び入れ、全てを念入りに浄化したのだ…… つまり」
「その方が呪われていると?」
メイドさんは悔しそうな顔で頷く。
「ちなみに、その方以外に人は?」
「ついさっき新人の侍女見習いが来たが…… 今は倒れて付き人の部屋にいる」
「倒れて…… その人の可能性は?」
「侍女見習いと言ったが、子供の奴隷を世話役として連れて来たのだろう。浄化も目の前で確認したし、物も持ち込んでいない」
「なるほど……」
「それに…… 呪われているのならば、あの方がこの塔に入れられた理由にもなるのだ」
とある方がこの塔に移されたのは数日前……
その理由は、その方のスキルが暴走する可能性があるからだと言う。
「本来ならば…… あの方のスキルを調べるのは、王族が揃う顕現の儀で行われるはずだったのだ…… しかし」
ここ最近魔物が増えたらしく、その対策と他国の対応に王と王妃に王子が走り回っていたのだが……
第2王女付きの魔法士と王都周辺の王侯貴族達がそれを理由に、第3王女のスキル顕現を急いだらしい。
「この国の王族には…… 異世界の勇者の血が流れているのだ。もし、あの方…… ミナ姫様に勇者のスキルが顕現すれば……」
(うわ…… 親のいない内に子供を手懐け様としたんだな。勇者のスキルを持った王女…… 貴族なら、かなり魅力的な人材…… 下手したら次の王になりえるからな)
王が不在の内に次代の権力争いが起こされた様で……
「此処に移されたと言う事は……」
「ああ…… スキルの顕現に失敗したらしい」
「失敗?」
「私は顕現の場にいなかったのだ…… 水晶にスキルは現れなかったと聞いた。この嘆きの塔は…… 問題のある王族が移される場所なのだ」
(スキルが無いと幽閉されるって…… 異世界の王族はハードだな……)
俺を蹴飛ばした騎士達の対応は、この世界でのスキル無しに一般的な対応だった様だ。
「と、とりあえず、確認しても…… 大丈夫ですか?」
「おかしな真似をしたら…… 分かるな?」
「また死にたく無いですね……」
「また?」
「此方の話ですよ…… では、お願いします」
「う、うむ…… ミナ姫様、私です。急ぎ取りつぎたい事が……「(ブーブー、ブーブー)!?」」
メイドさんがノックをして扉を少し開いた瞬間、俺頭に警戒音が鳴り響く。
「ミナ姫様! これは…… 高濃度の魔力!?」
急いで扉を開け放ちながら、メイドさんと部屋に飛び込むと……
「身体が光っている…… 何で?」
大きなベットに横たわる少女と、そのベットの横に倒れてメイドが…… 激しく光っていた。
「くっ、まさか魔力暴走…… ミナ姫様!!」
(魔力暴走? あの光が魔力…… ま、魔力…… 力…… 力なら!)
「おい、何を!?」
「力なら…… 吸ってみせろ!〝吸収〟」
俺が光に向かい吸収スキルを発動した瞬間……
《チュートリアル【緊急クエスト 魔力暴走を止めろ!!】をクリアしました》
と聞こえた。




