4.WLC
『『『いただきます…』』』
玄関の騒動(?)落ち着いた後に、三人がリビングに入り、お茶を飲み始めた。
「て、この子は?」
「あ、申し訳ございません!自己紹介遅れました!暁海 照と申します!」
「照君だね、よろしく。改めて、神野先生の担当編集、紫咲 ゆかりです。」
「はい、こちらこそよろしくお願いします!」
「で、先生がこの子を誘拐してきたんですか?」
ぷーーー!
神野は飲みかけたお茶を全部噴出した。
「…なぜそうなる。」
「先生は私みたいな大人の女性にあまり興味なさそうですから、てっきりそういう性癖だと。」
「そんないい趣味してねぇー」
神野は話しながら、照のノートパソコンを紫咲の前に移動した。
「これは?」
「小説だ。」
「見ればわかります。これは先生が書いたものかどうかの確認です。」
「今の僕の状態を知ってる君が、それを聞く?」
「念のためということです。」
(状態?)
なんか変なことを聞いたと思ったが、自分の小説を今、編集の前に出されたことの方がよりインパクトが強い。
「あの、先生?なんで僕の小説を、編集さんの前に出してるですか?」
「見てもらうためだよ。それ以外何かある?」
「やっぱりですかーー!鬼畜ですかーーー!」
「落ち着け。大手作家の担当編集に、自分の小説を見てもらえるチャンスそうそうないぞ。」
「それはそうですけど!」
「では読めばいいですね。」「そうだ。」「いやーーーー!」
羞恥プレイ第二ラウンド突入。
15分経過。
「終わりました。」
「感想は?」
「ダメですね。」
ガンーーー!
まるで勇者王のハンマーに打たれたように、照の心が砕けた。
「ダメ…ですか…」
「ええ、照君の小説はまず、最初の内容は設定集みたいな感じで読みにくい…」
「それは先もう言った。」
「…後、要素は薄い。キャラの濃さ感じられない。バトルシーンの描写もいまいち。これだと読み手に響かない…」
「それも言った。」
「最後の結末も普通…」
「それもな。」
「先生は私と思いが通じてるということですね。嬉しいです。」
「なぜそうなる。」
そんな二人の夫婦漫才を他所に、照はまだ落ち込んだ。
でも何かを思い出して、紫咲にあせた様子で伝えた。
「でも先生が先、内容を修正してくれました!」
「あ、紫咲に見せたのは修正前だよ。」
「え、いつの間に!?」
「僕が書き直したもの見せても意味ないだろう。」
「そうですね…」
「先生が、修正した?」
修正という言葉を聞き、紫咲は何故か信じられない顔になった。
「え、はい。そうです。多分もう一つファイルあると思います。」
紫咲はそれを開けて、もう一回内容読み始めた。
ただどこが直されたのがもう分かり易く、数分もかからないうちに終わった。
「…先生、これをどれぐらいの時間で直しましたか?」
「なぜそれを聞く?」
「答えて。」
紫咲の表情が先まで穏やかのと打って変わって、真剣な表情になった。
「…10分ぐらいかな。」
「…そうですか。分かりました。」
「あの…僕が何か悪いことしたんですか?」
「いえ、照君何も悪くない。そうだね。まず照君は神野さんについて、どういう認識持ってることから確認した方がいいかもね。」
「え、先生についてですか。それはもう…」
照はわざとらしく咳払いし、
「神野 境と言えば、5年前に小説界に嵐を引き起こした作家。デビュー作で新人大賞取ったのみならず、その後書いた作品も、ジャンル問わずに挑戦して、そして見事に数多くの賞を獲得した奇跡の作家。その代表作と言えるのは、デビュー2年目で書いた、『再臨のラグナロク』シリーズ。愛する女性のために、世界を壊すという異類の展開で大人気になり、第一巻だけでもう2000万超える販売数、そこから『世界新生』という新しいジャンルを確定し、その後の新刊も爆発売れて、今世界中累計もう7億超えたという成績!もちろん関連グッズも驚異的な量で販売されて、ほぼすべての小説もアニメ化されました!その数多の実績から、神野先生はいつの間に世界中に二つ名を呼ばれることになった!その二つ名は、」
『神の境界』。と。
照はまるで自分の事を話してるように、熱がこもった言葉、紫咲と神野もしっかりと感じた。
「確かに照君の言うように、先生は色々の成績出したけど、一番強いのはそこじゃないわ。」
「え?それ以上のことあるんですか!?」
「ええ、あるわ。なんだと思う?」
「うん…」
照はしばらく考えたか、答えは出せない様子だった。紫咲は代わりに答えた。
「壁よ。」
「壁?」
「そう。人と人の間は、必ず壁あるの。それは国、文化、言葉。色んな面からのもの。ただ先生は、小説でそれを越えた。『文字』だけで、その壁を壊し、そして世界中の人に届いた。もちろん翻訳者のお陰でもあるけど。」
「なるほど…さすが先生!」
照はキラキラした目で神野を見つめた。
「話逸れたわね。照君は先生を憧れてるのは分かったけど、、その先生の今の状態、もちろん知ってるわよね?」
「先生の…状態?あの、もしかして、それは先生が1年半前もう新作出してないことと関係あるでしょうか?」
「そう、それは知ってるよね。なら話が早い。」
「まさか先生がケガですか!?それで…!」
「落ち着いて。ケガじゃないわ。」
紫咲が神野の方を見て、自分の話されているのに、まるで無関心の顔。彼女は諦めた様子で続きを話した。
「スランプよ。」
「え?」
「スランプよ。先生がいっぱい書きすぎたのが原因なのか分からないけど、『しばらく何も書けそうにない』と、1年半前私に言ったわ。一時のことだと思ったけど、今日この時間まで、新作も何もなかったわ。だから先、照君の小説を『修正』したと聞いた時、驚いた。『書けたの!?』って。でも内容見たら、本当に修正だけだった。10分で直したのは変わらず早いけど。」
「それはそうだ。全部書き直したら、もう照君の作品じゃなくなるよ。」
「ごもっともですが、書けるでしたら、何か新作を書いてください!」
「うお!怖い!」
神野は逃げるように奥の書庫に走っていた。そんな神野見て、紫咲もどうしようもないことを理解したか、ため息だけついた。それを見た照は、心配そうな顔で紫咲を見た。
「先生がスランプ…何か方法ないですか!?」
「ないわ。そういうことは基本本人しか解決できないわよ。何か問題なのか、例え私たち分析できたとしても、本人にとってそれは正解なのかも、そもそも分からない。」
「そんな…」
「それより照君、自分のことを考えた方がいいわよ。」
「え?」
「どういう経緯で先生のところに来たのが分からないけど、小説家のところに自作小説を持ち込むのは、戦う気か学ぶ気のどっちでしかないよ。先ほどの内容見る限り、照君は後者だと思うよね。でも先生はあの状態だから、正直言って、しっかり照君に教えられるかどうかも微妙だよね。」
「でも先生はちゃんと僕の小説の改善点を伝えました!」
「それは照君の小説は単純だったから。私でも分析できたよ。だから、それ以上のものになると、照君は一回考えた方がいいよ。」
そう。『神の境界』に行きたいであれば。
紫咲は静かに、照の心の中に、本当に求めてるものを暴いた。
スランプに陥る神野は、もう『神』じゃない。だからここで勉強したところで、上手には成れても、神になれるはずがない。
それでも、
「先生のところで勉強します!」
「…その目、決心はしたみたいね。なら言うことないわ。」
まっすぐな目。若い子、まだ社会の厳しさを知らない子独特な眼差し、いつ見ても眩しい。
だから先生の目が余計に辛い。社会のことを知ったら、もう戻れないだろう。
「話しまとまったかい?」
神野本を読みながら、書庫からゆっくりと照に歩いてきた。
「先生!話聞いてたんですか?」
「そんな大きい声で話されると、聞きたかなくても聞こえるよ。」
「あ、すみません…」
「んで紫咲、今日は何か別の用件ないか?それともただ僕の生存確認だけか?」
「ええ、今日は仕事のことで話をするために来ました。」
「やっぱりか。そのスーツ姿の時いつもいいことないからな。」
「あら、私服の方がいいですか?次から気を付けます。」
「いや、そういう意味じゃない。」
「先生のお好きなキャラのコスプレでも着ようかしら。」
「お、それは楽しみ…いや、そうじゃないと言っただろう。」
紫咲は神野の言葉を無視して、茶色のカバンの中から厚みのある書類を取り出した。
神野はそれを見た瞬間、顔色が変わった。
「それは…」
その書類の表紙には、大文字で『W.L.C』と書いてあった。
紫咲はその書類を神野の前に差し出し、「見てください。」と真面目さ増しの声で言った。
「企画書…2回目やるのが…もうほぼ一年半過ぎたから、てっきりあのじいさんは前回の結果をよくなかったと思って、諦めたと思ってよ。」
「そんなわけないでしょう。確かに慣例のコミケより売れてないけど、参加者数は予想よりいましたよ。このタイミングでこれを先生に渡したのは、あの偉いさんが今度こそ先生に参加して欲しいという願いがあるからです。」
「そうか、でも今年も無理かもな。」
「頑張ってください。小説書けない小説家は、廃人と一緒ですよ。」
「ひでぇーー」
二人のやり取りを聞いてる照は、『W.L.C』の文字が書いてる書類から目を離せなかった。そして好奇心を抑えられずに、
「あの…」
『『うん?』』
神野と紫咲二人同時に照の方向を見た。二人とも真面目な顔の関係か、照は若干ビックリした感じ、問いかけた。
「W.L.Cって…もしかして去年の夏、初回開催されたあのイベント?」
「そう、『World•Light Novel•CLassic』、名前にライトノベルが付いてるけど、実際は世界中の小説家がジャンル問わず、国籍問わず、言語も問わないという前例なしの小説家だけが参加する、新しいイベント。実現不可能とあらゆる業界の人に言われたこのイベントが、去年開催された。そしてその時の欠点を改善し、つい先日で2回目の開催が決まった。」
「そのほぼルールなしのルールで、参加者だけではなく、主催者たちも散々だったな。まさにカオス。」
「でもみんな楽しめましたよ。」
「みんなMだなー」
「World•Light Novel•CLassic…!」
ワクワク。
2回目来た…!あの時の盛況をもう一回見れる…!
照は感動のあまり、手がぶるぶる震えだした。
「そういえば、照君はもちろんW.L.Cのこと知ってるわよね?」
「あ、はい!先、紫咲さんが言ったように、基本何も問わず、年齢も関係ない、ただ字数だけ制限されるという、見方によっては完全自由創作に近い大きいイベントでした。ただその関係で、短時間の開催は無理ということで、異例の5日間のイベントになりましたと、ニュースでも大々的に放送されました。」
「そう、無理だったよ。何せ、参加者の小説を、参加者自身がその小説を主に売りたい国の言語に翻訳して販売してたから。販売数もちろん参加者自身で決めるけど、入稿して翻訳されるまでの時間、作家によっては短いのよ。作家が提出するのが遅れると、その分翻訳する時間も押されるから。」
「でも僕もイベントに参加したけど、作家さんみんな普通に翻訳された小説を販売してましたよ?」
「それはメイン主催者がお金持ちで、有能な翻訳者を意外といっぱい探せたから、成し遂げたよ。」
神野は渡された企画書を見ながら、照の疑問に答えた。
「そして今年はさらに無茶な内容になってるな…」
「無茶の内容?」
「ええ、今回同じ5日間の開催ですが、この5日間で一番売れた小説は、特別に全世界に発行する契約を結ぶという、デタラメの報奨が上乗せされた。」
「え…全世界?あの、言葉通りの?」
「そう、作家が売りたい国の言語に無料翻訳するというのは通常ルールだけど、この特別契約は、世界に国と呼ばれる場所は全員対象で、同じく無料で翻訳するの。これ聞いた時、私も先生と同じ目になったわ。」
「まるで僕の目が悪いものみたいな言い方だね。」
「実際悪いけど?」
「僕と違ってお前は口が悪いな…」
「じゃあ止めます?キスで。」
紫咲は目を閉じて、顔を神野の前に突き出し、いつでもキスを受け入れられる状態にした。
「なぜそうなる。」
神野は片手で迫ってくる紫咲を押し返しながら、照に声かけた。
「まあ、そういうわけだから、もし君も興味あったら、参加してみてもいいと思うよ。」
「え、ええー!?僕が。」
「そうだね。年齢関係ないから、照君も問題なく参加できるよ。」
「いやいやいや、僕みたいな初心者参加したら笑われるだけじゃ…」
「そこは心配ない。」
神野は企画書に書いてる開催時期を指さした。
「開催時期は来年の7月だ。翻訳に出す時間も考えても、4、5ヶ月時間ある。それまでにしっかり頑張れば、売れっ子にならなくても、売り上げ作るぐらいはできるさ。」
「え、そんな短時間でできるの?」
「照君がしっかり頑張っていれば、のことですよね?先生。」
「ああ、死ぬ気でな。」
「死ぬの!?」
「今の君がそこまでやらないと、この短時間で売れる程度まではいかないよ。」
「でも別に売れなくてもいいような…」
「バカ者!売れないもの書いてどうする?時間の無駄だぞ!?」
「えーー確かにそうだけど、楽しければ別にいいじゃないかとも思います。」
「今は、ね。」
紫咲がお茶を一口飲んだ後に、ゆっくり話した。
「作家の道進むと、結局売り上げは大事になるから、売れない作家に目を向ける編集いないよ。『楽しい』『やる気』など精神論言えるのは若いうち。年取るにつれて、実績がないと、どんどん見放される。それは小説だけではなく、どの業界も同じ。だから照君、先生もあなたを弟子にしたいみたいだし、このまま先生の元で勉強して、とりあえず来年のW.L.Cを目標してもいいじゃない?」
「え!?先生、本当ですか!?」
「言ってないぞ。」
しょぽんーー
「…してもいいか、君、学校と小説両立できるのか?いや、両立する覚悟あるのか?」
「僕はーー」
そう聞かれて、照は迷った。
学校は大事、でも小説も大事。
ただ両方取ると、今度はゆっくり遊べる時間は無くなる。
自由がなくなる。
でも、
(夢、か)
小説家になるのが夢だから、今その道の入り口に先生が立っている。自分を助けようとしている。
それに、
『年取るにつれて、実績がないと、どんどん見放される。』
紫咲さんが言った言葉も、実感湧かないか、想像すると怖い。
そしてなにより、
(いずれ叶えたい夢だから、早めに叶うために行動しても、いいよね。)
照は熱意に満ちた目で、神野と紫咲を見た。
「僕は、頑張ります!来年のW.L.Cに参加して、少しでも売れるように、頑張りたいです!」
その言葉を聞いて、二人は微笑んだ。
「よし、じゃあさっそくーー」
神野が何の特訓メニューを言い出すか、と緊張して待っている照だが、
「帰れ。」
「え?」
予想外の返事が来た。
「今何時と思う?君、家族に連絡した?」
「あ!」
照はリビングの時計を確認し、針は『19時』のところにちょうど止まった。
「仮にも高校生だから、この時間でまだ外にいるのはよくないな。」
「あら、先生は意外と良識ありますね。」
「意外とは何だ意外とは。」
「あ、じゃあ!僕はお先に失礼します!今日もありがとうございました!」
「お、気をつけて帰れ。」
「あ、照君、ちょっと待って、私も一緒に行くわ。」
紫咲はソファーに置いてたカバンを持ち上げて、照と一緒に帰ろうとした。
「今日は珍しく早いな。」
「この後も別の仕事入ってますから。このイベントのお陰で。それに、照君を一人帰らすのも悪いでしょう?」
「子供じゃないけどな。」
「大人と言えるほどの年でもないでしょう。さあ、帰りましょう。」
「あ、ではお言葉に甘えて…」
紫咲と照が玄関まで歩いて、その後ろに神野一緒について見送りした。照は神野を見て、ふと思い出した。
「あの、明日…明日も来ていいですか?」
照は子犬みたいな仕草で、上目遣いで、神野を見上げた。
「…別にいいぞ。僕も暇だしな。」
「やった!」
テンションがハイになった照と対照に、紫咲が冷たい声で神野に話しかけた。
「暇あるんだったら、新作を考えてください!」
「おっと、それはできない相談だな。」
ぷち。
何かが切れた音が、聞こえた…気がする。と照は思った。
その直後、
「このダメ人間か!」
紫咲がカバンのショルダーストラップを掴んで、力いっぱいに神野目掛けて振り回した。
「痛ぇ!わかった、わかった!考えるから!さっさと帰れ!」
「…ふん!帰りましょう、照君。」
「あはは…はい。」
●
神野が住んでる階層からマンションの一階に降りた紫咲と照が、ゆっくり団地を歩きながら、照と神野の出会ったきっかけを話した。
「財布か…あの人、本当にだめだね。」
「はは…でも先生はやはり先生です。今日はしっかり僕の小説の欠点を指摘してくれましたし、その上、改善してもらいました。感激です!」
嬉しそうに神野のことを語った照を見て、紫咲が少し複雑な顔になった。
「…それについては、ちょっと話がある。」
「はい?話?」
「先生は何で照君を弟子にしたと思う?半分は私が強引にさせたけど。
「あ、ありがとうございます。」
照がペコリとお礼をした。
「『財布を拾ってくれた恩人』という理由だけで、真っ赤な他人を弟子にすることは、基本ないと思うよね。」
「そうですね、正直言って、分かりません。僕はアシスタントでもないですし、先生の役に立てること、何一つもできないと思いますが…」
「…じゃあ、やはりそれが原因かな…」
「はい?」
紫咲は何かに思い付いたらしく、照を見つめた。
「話変わるけど、先生の目どう思う?」
「え、先生の目ですか?」
「うん、あの死んだ魚ののような目。」
ぷ。
照自身もそう思っているが、他の人の口から聞くと、思わず笑った。
「あ、すみません。失礼しました…そうですね、とても特徴あって、可愛いと思います。」
「可愛い?あの目を?」
「え?あ、はい。あの、おかしいでしょうか?」
「いや。」
紫咲は照の手を取って、
「よくわかってるじゃない。」
「え?」
「先生の作品は凄いけど、あの目付きがないと、ファンもそこまで付かないわ。」
「そうなんですか!?」
「嘘だよ。」
「えーー!?」
「まあ、私も好きだけど。それはそうと、実は先生の目は、昔はそんな感じじゃなかったよ。」
「え、本当ですか?でも僕が最初のサイン会参加した時、先生の目はもうそんな感じになってました。」
「最初のサイン会…あれは4年前のことでしょう?デビュー当時はそんな感じではなかったわ。そう、」
紫咲は照の目を見て、
「先生の目は、最初は、照君みたいに、希望に輝いた目だったよ。」
「…僕と同じ?」
「ええ、先生の個人的なことだから、私が言えることじゃないけど、先生はあの目になったのは…」
この夜、照は、紫咲からあの『死んだ魚のような目』ーー『死魚眼』の由来を聞かされた。