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25.W.L.C.閉幕!③

次の投稿で最終話です。最後まで見ていただければ嬉しいですーー

『ねぇねぇ、新作、やばくない?』『うん、やばいだよね』『やばいなー』

会場内、神野の新作を見た人たちは、最初の言葉は決まってそれだ。

やばいーーそれは出来が悪い。価値がない。駄作。そういうマイナスの評価。だが、それはその言葉が一単語として使われた時の話だ。今の彼らの話の場合は、


『やばいぐらい感動したーーーー!!!!!!』


いい意味で使ってた。


『紫の魔女、今回大活躍じゃん!』『いや~まさか赤の女帝がそんなことに…』『でもさ、一番目立ったのは、』


『新キャラのシーちゃん!!』

どの作品でも、新キャラは注目される。そして新刊で人気を集めるために、その新キャラを他のキャラより仕立てれば、短時間ではあるが、人気を上乗せできる。

『勇者の弟子になるために一生懸命で、』『諦めを知らない、』『自分の力が足りないと知った上に、自分なりに勇者パーティをサポートする、』『頑張り屋!』


会場は今、まさに神野の予想通り、全員が新キャラに魅せられて、盛り上がった。



    ●



「ていうかさ、このキャラ、照に似てない?身長同じだし、体つきの描写(びょうしゃ)も、似てるよね」

ギクッ。

「確かに。性格も行動も、なんとなく同じ感じがするよな」

ドキドキ。

「気、気のせいじゃないかな?」

照は急いで否定したが、

『『照、顔が赤いよ?』』

体の方は、正直だった。


気のせいなんかじゃない。先生は完全に自分をモデルとして、このキャラを作った。

証拠はないけど、あの人は、そういうことやる人だ。


今なら分かる。

紫の魔女は、紫咲さん。

赤の女帝は、スカーレットさん。


先生は、周りの環境を、知り合いを、本人しか分からないように、うまく小説に取り込んだ。


体が熱い。自分が、憧れの作家の作品に出られた。

ああ、まるで先生の一部になったようにーー


「…る、照!」

「…え?」

「『え』じゃないわよ。ボーっとして、大丈夫?熱中症?」

「…ううん、大丈夫だよ。」

どうやら、妄想に浸かりすぎて、失神したらしい。璃紗は心配してるが、照は笑って、問題ないという風に頭を横に振った。


「これからどうするの?」

「うん…販売数の計算は、イベント終った後だから、16時までだよね」

「それまで残るつもりなのか?」

「いや、結果も知りたいから、夜まで残るつもりだよ」

「長っ!」

「いやなら帰れば?私は照と一緒に残るから」

「仲間外れは許さん!」

「うざい!」

「まあまあ…」


照は二人のケンカを、いつも通りに仲裁に入った。

(先生、勝てね。)

神野の勝利を祈りながら、照は2人と会場内で時間を潰した。そしてーー



    ●



17時


『17時です。W.L.C.本日をもって、終了いたしました。ご来場のみんなさん、お帰りの際お気を付けください。そして、夜のイベント結果発表をお待ちの方は、今しばらく会場内の休憩所や、ビッグサイト周辺のレストラン、カフェご利用しお待ちください。では、改めて、』

スピーカーの向こうにアナウンスをしてた女性が、大きな息を吸ってる音が聞こえた。


『W.L.C.のご参加。お疲れ様でしたーーーーー!!!!!!』

それに呼応するように、

『お疲れ様でした!!!』

会場内の全参加者も、拍手と共に、労いの言葉を伝えた。


そしてその言葉と同時に、神野も動きを止まった。

(おわ)っ…たか。」

汗だくになった体。感覚を失った両手。立つのもやっとの両足。

縛られた8時間、この瞬間に、解放された。

「みんな、終わったぞ!!」

神野は大声で、もう一度周辺のスタッフに伝えた。


『やっと終わった!』『死ぬかと思った!』『疲れたよーー』


全員それぞれ空いた場所に座った。

もう誰も立つ気力が残ってないらしい。

神野も。


「はあ…はあ…はははは…」

笑った。

頭がおかしくなるぐらい、頑張った。

最初はベースを考えて捌いたが、途中からもう楽しすぎて、全力を出した。

みんなも影響されたらしく、見て分かるぐらいスピードを上げた。

出し切った。

後は結果を待つだけ。


「冷っ!」

放心状態になった神野の顔に、突然冷たい何かが触った。

「神野先生、お疲れ様です」

紫咲だ。彼女が冷たい麦茶を手に持って、神野の顔に当てた。

「…紫咲も、お疲れさん」

「頑張ったね。境」

「ああ、1年半ぶりに、頑張った」

「それで、勝算は?」

「…さあ、計算してないから」

「あ、そう。じゃあ、私はもう行くわ。販売数の計算も、時間かかるから」

紫咲は伝えるべきことを伝えて、体を回し、仕事に戻ろうとした。


「ああ、心配させてすまん。来てくれてありがとうな」

「…分かったなら、もう私が心配するような真似をしないでください」

彼女は背を神野に向けている関係で、顔は見えないが、声が拗ねてるように聞こえた。


紫咲を見送った後に、照たちも来て、神野が今までの経過を話しながら、照たちやスタッフの全員と一緒に、ブースの片付けを始めた。



    ●



片付けが終わって、神野は照たちと一緒にご飯を食べながら、結果発表の通知を待っていた。

そして20時頃、神野が運営会に呼び出され、照とスタッフ全員に『ゆっくり休んでくれ』と簡単に別れを告げて、運営センターに移動した。

「これは、もう集計終わったってことかな?」

「そう…だと思う」

「先生が心配?」

「…そうだね。だっていくら先生がすごくても、一日でスカーレットさんの販売数を超えるなんて、無理だと思う」

照の顔に影が落ちた。


「何泣き言を言ってんだ!お前の先生じゃないか?なら信じるのが、弟子の義務だぞ!」

「一成…」

「あ、脳筋が珍しくいいこと言った」

「俺はいつもいいこと言ってるんだ!」

「は、ははっ、そうだね。二人共、ありがとう」


そう、弟子である自分が信じないで、何か弟子だ。信じよう、先生は、先生(ちょうてん)だからーー

照が思いを固めた時に、『あれ』が、来た。


『みんなさん、大変お待たせいたしました。ただいま、総販売数の集計を完了致しました。この後は結果発表になります。ご興味ある方は、ステージ会場に集まってください。なお、混み合うことが予想されますので、お近くにある大型サイネージやテレビも、もしくはスマホでネット中継をご覧いただくことも可能です。では、最後までお楽しみください』


アナウンスが終わった瞬間、照が立ち上がった。

「来た…!」

「行くの?ステージ?」

「当たり前だよな。先生の勝ち姿、自分の目で見たいよな?」

「一成に聞いてなーーい!」

「ううん、一成の言う通りだよ。どんな結果であろうと、僕は、先生の姿を最後まで見なきゃ。」

「照…じゃあ、行こう!早く行かないと、場所なくなちゃうよ!」

「うん!」


璃紗と照は手を繋いだまま、一成と3人で、ステージへ向かった。

そして、結果発表へーー

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