獣王襲来 【亜人種強制収容所編】 その9
《7体1……………ですか。
それも最上級の手練れたちと。
なかなかヘビーな状況ですね》
ようやく戦いの場に追いついてきたパーティーの面々。
エスメラルダが肩でゼーゼー荒い息をつきながら
「なっにが獣王だよ!!!卑怯だぞ、7匹がかりで!!!」
腕を振り上げながら抗議すると
「マサムネ、加勢するぜ!!!…………ゼーハーゼーハー」
誰よりも荒い息をつきながら何を言ってんだ?あの海賊娘。
《ずっと船旅で走る機会があまりありませんでしたからね。
じゃっかん足腰がなまってるんですかね》
なんでちょっと船旅が続いたぐらいでなまるんだ?
鍛え方が足んねーんじゃねえか?
《サイヤ人とか大魔王以外の普通の人間は、久しぶりに数百メートルも走ったら足腰がガクガクなるんですよ。
その孫悟空みたいな天然スパルタキャラやめてください》
勇者やレナやリザリザが加勢する姿勢を見せている。
俺は、手でそれを制した。
「救おうとしながら戦うには……………こいつらは強すぎる。
…………お前らは手を出さねえでくれ」
《『実力が伯仲している者同士では、真剣勝負のなかで相手を殺してしまう恐れがある…………。もちろんその逆も』
そういう事ですね》
ああ。
こいつらが悪党じゃないって事は、さっきの精神感応で痛いほど伝わってきた。
俺は、こいつらを殺さねえ。
…………キッチリ無傷で助けてみせる。
《本気で殺りにきてる最高級の暗殺者を撃退しながら救う。
これはハードなミッションですよ》
獣王が、雨粒でも受けるみたいに手のひらを上に向けた。
グ………バッ
炎の球体が、獣王の手のひらの上に浮かび上がる。
熱波がここまで押し寄せてきた。
頬がチリチリする。
凶悪な威力を秘めた炎魔法だって事は、この距離からでも伝わってくる。
「おいおい。格闘特化の筋肉バカかと思いきや、魔法までキッチリ使いこなすのかよ…………」
《さすが王と呼ばれる最強の獣人。
将棋で言えば、全方向に進める唯一の駒が王ですからね。万能選手です》
獣王は、手のひらの上の火球を、
そちらを見もしないで、真横に発射した。
俺がいる地点とはまるで違う明後日の方向。
そこにいたのは、獣王の配下である純白の毛並みをした獣人族。
ぼぉおおおおおおっ!!!!!!!
直撃。
直撃すると同時に、巨大な石油工場で引火事故でも起きたみたいな壮大な火柱が天に伸びていった。
燃え上がる純白の獣人族。
《み、味方を撃った?》
「……………なにをしてんだ、獣王」
が、天を突くような膨大な炎の柱は急速に収束していった。
みるみるうちに縮んでいった炎が、獣人族のカタチへと定着していく。
燃え上がる、獣人族のフォルムへと。
純白の毛並みをしていた犬系獣人戦士の体毛。
それが、炎を帯びた赤い毛並みへと変化していた。
全身に豪炎を纏いし、狼男のような姿へと。
《…………ファイヤーワンコ》
獣王は、お次は雷魔法を発動していた。
バチバチと、凄まじい威力の雷撃をその手の中に弄んでいる。
今度は、さっきと逆の方向へと、ノールックで無造作に雷撃魔法を放つ。
ズギャギャギャギャギャ!!!!!!!
世界最大級の落雷、それがモロに直撃した人間みたいに、
獣人戦士の身体が帯電しながら宙に浮かび上がった。
全身が感電して、無惨にも黒焦げになる……………
そうはならなかった。
凄まじいパワーの雷撃が、獣人族のカタチに収束した。
さっきと同じように。
全身が帯電して、黄色い体毛に変化した獣人戦士が、片膝をついてそこに降り立った。
その毛並みからはバリバリと物凄い電撃が溢れ出ている。
《どうやら、あの純白のワンコ戦士たちは、
魔法攻撃を吸収して自分のパワーに変換するという、特殊な毛皮をもっているみたいですね…………》
後から、どんな属性にも変化するモフモフのワンコって……………
お前はイーブイか?
《雷タイプにも水タイプにもほのおタイプにも進化するポケモンって、
懐かしい名前を出してきますね、ずいぶん》
炎の体毛を纏った真っ赤な獣人、
そして雷の体毛を纏った黄色い獣人、
二匹が同時に襲いかかってきた。




