雪の女王の脳内 その30
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ミッドナイトブルーの氷壁に包まれ、
濃い群青色の雪が舞うエリアに突入していた。
宇宙空間にも似た、広大な体内空間。
そのあたりには、異様な光景が広がっていた。
いたるところで、漆黒の【病魔の母船】と、水晶みたいに透明にきらめく【免疫の母船】が戦闘を繰り広げている。
睨み合う、無数の大型母船のまわりでは、小さなウイルス兵や免疫兵たちがそれぞれ小規模な戦闘を繰り返し、戦場の風景を織りなす。
壮大な規模で展開される病原体と、免疫細胞の戦い。
まるっきり、スターウォーズの宇宙戦争のさなかにでも迷い込んだみたいな光景だった。
《マサムネさんもガンダムに乗って参戦してみましょう》
もはや何のジャンルか分からなくなるでしょうが。
……………そして、この戦場を通り抜けない限り、
俺たちは目的地である【雪の女王の脳内】にはたどり着けないのだ。
「まぁ、しかし、病原体と免疫が戦いに夢中になってるスキに、こっそり静かにそのあいだを通り抜けちまえば、なんとか……………」
「そう、上手い事いくかニャ?」
ニャンコ大先生が不吉な事を口走る。
俺たちが、このミクロの宇宙戦争の空域にゆっくりと侵入した瞬間、
病原体と免疫細胞の戦闘がピタリと止まった。
停戦状態に入った両陣営。
なぜか、その注目を俺たちが一身に集めている。
世界中のスポットライトを独り占めにしているような状況だ。
おもむろに、全軍勢のターゲティングが俺たちの方へと向いていく。
レーザーポインターで照射されているとするなら、
頭の先から足の先まで真っ赤っ赤になるところだろう。
「……………なんでそ~なるの?」
《どう考えてもマサムネさんのバグった魅力値が原因かと》
宇宙戦争まるごと独り占めコースですか?ってくらいの凄まじい数の敵。
病原体の軍勢も、免疫細胞の軍勢も分け隔てなく俺たちに襲いかかって来た。
さっきまでバチバチに戦争していたくせに。仲良く一斉に。
「来るわ……………あれ、ぜんぶ敵!!?」
リトさんの声も珍しく震えている。
「そっちがそう来るなら、こっちもヤケクソだ」
俺は、体内の魔力をフルバーストで高めていく。
ずひゅっ!!!!!!!!
あたりの景色が色味を失って、白黒に変色するくらいの異次元のオーラが俺の身体から放出される。
「…………ミヤコ」
「………あい」
『はい』の2文字も噛むようなドジなヤツだが、ピンチの時にはこれほど頼りになる女もいない。
「みんなを、全身全霊で守ってくれ。頼りにしてるぞ」
ミヤコは、一瞬、言葉を噛み締めるようにして顔を紅潮させたあと、
「うんっ!!」
大きく頷いた。
俺は、単騎で原初神竜の上から飛翔した。
もし、俺の歪すぎるステータスが敵を招き寄せている原因だとしたら、こうするのがみんなを守るための最良の手段だ。
「マサムネ!!」
リトさんの心配そうな声と表情が脳裏に焼き付く。
まわりを気にしなくて良くなった事で、大魔王の暗黒闘気を全開で解き放った。
堕天使の翼みたいな形状に、暗黒闘気が空間に広がる。
無数の病原体の軍勢、免疫細胞の軍勢、ともに俺を目がけて殺到してきていた。
「………………殲滅……………し尽してやる」
超新星爆発じみた魔力が体内で練り上げられていく。




