雪の女王の脳内 その29
東京都民ぜんいんから命を狙われ、追いかけられているような、壮絶なその絵ヅラ
《『リアル鬼ごっこ』状態》
その光景を前に、思わず俺は一言
「ダメだこりゃ」
俺は、パーティーのみんなを呼び寄せた
「ここは『逃げる』の一択!!!」
みんな、激しく同意の様子だった。青ざめた表情でウンウンとうなずく。
原初神竜も俺の宣言にガウッガウッとドラゴンヘッドで首肯していた。
みんなで原初神竜の背に乗って、心臓内空間を飛び立った。
そうはさせじと、上空から迎え撃つように急降下してきた透明の巨大氷竜。
俺は、【最下級炎熱魔法】を発動した。
手のひらの上に小さな小さな赤い火の球が浮かび上がる。
その手のひらの上の小さな火の球、【最下級炎熱魔法】にフッと息を吹きかけた。
ドラクエで言えばメラ。
ファイナルファンタジーで言えば魔術師がデフォルトで習得してるファイヤってとこ。
吐息で飛ばされた小さな赤い火の玉が、
巨大氷竜のもとに届いた瞬間………………
ご………………ばっ
………………ひゅっ!!!!!!!
大作ハリウッド映画のラストシーンみたいな、
とんでもない規模の大爆発が起こった。
広大な空間内の大半を埋め尽くす、豪炎の華。
巨大な氷竜が、跡形も無く消し飛んでいた。
《デフォルトの【最下級魔法】で、
主人公クラスの最終奥義を軽く超越するのはやめなさい》
「ここまで来たら、どれだけ目立とうが関係ねぇ。
………………最速、最短で本丸まで突っ切るぞ」
空を飛ぶタイプの【免疫細胞】兵たちが、一斉に俺たちを取り囲みにかかってくる。
俺たちを覆い尽くして、ただただ潰す。圧死させる。
そういう作戦だ。
暴徒化したフーリガンかなにかみたいに、向う見ずに押し寄せてくる無数の【免疫】空軍ども。
「隠密作戦は中止。
こっからは、戦争だ。
目の前に立ち塞がるヤツは、悪玉だろうが善玉だろうが
全員ぶっ潰す!!!!」
ミヤコのご先祖シールドが、白銀から黄金へと形態変化した。
仲間の危機を察知して、ミヤコの無限のポテンシャルの一部が解放されたのだろう。
シールドの出力、強度が格段にアップする。
ご………………ばばばばばばばばば!!!!!!!!
俺たちに向かって次々に体当たりを仕掛けてきた【免疫】空軍たち。
氷雪の飛翔者たちが、ミヤコのご先祖シールドにぶつかって無惨にも消し飛ばされていく。
「みんなを傷つけるのだけは……………許さない!!」
ミヤコがそう声をあげる。
―――俺たちの行く手
心臓内空間の出口にあたる大動脈洞窟の入り口には、
とてつもない数の【免疫】空軍たちがより集まって、立ち塞がっている。
サンドアートで作成したアニメーションでも見てるみたいだ。
膨大な数の氷雪系モンスター=【免疫】兵士たちがひと塊の白い壁となっている。その表面が、もぞもぞと蠢いているのだ。
砂場のなかで命を宿した砂鉄のように。
俺は、原初神竜の背中から単騎で飛び上がった。
「言っただろ。
立ち塞がったら………………全員潰すって」
俺の手には、飛び上がる直前にグラナゴスの手から借り受けた【超次元ハンマー】が装備されている。
魅力値を攻撃力に変換するスキル【チャームビーム】
そのエネルギーを、【超次元ハンマー】へと流し込んでいく。
【チャーム・ハンマー】とでも呼ぶべき、応用技。
ピンク色の光を帯びて、魅力値の攻撃力が乗っかった【超次元ハンマー】が俺の手の中に現われる。
魅力値の攻撃力×【超次元ハンマー】
べらぼうに物騒な凶器を、
全身のバネをつかって振り上げた。
【魅力の鉄槌】
渾身の力で、振り抜いた。
っっっぱん!!!!!!!!!!!
天から、ピンク色に光り輝く大地が落ちてきた。
そんな光景だった。
膨大な数の氷雪系の【免疫】兵士たちが、
その場でぺしゃんこになって潰れていた。
《敵全員に、【即死チート】付きのピコピコハンマーで殺人ツッコミを入れたみたいな……………とんでもない技》
どういう表現ですか?それ?
ひらひらに平たくなった【免疫】兵士たちが、
無数の、氷のチラシみたいになって心臓内空間の底へと落ちていく。
無数の、紙みたいになった兵士たちが、舞い落ちながら煌いて、なかなかに壮大で美しい光景だった。
空中で、俺を背中に受け止める原初神竜。
俺から【超次元ハンマー】を受け取ったグラナゴスは、
なぜかキラキラとした憧れの眼差しでこちらを見てくる。
《自分もさっきの【チート技】をやってみたいんですね》
いや、物騒だからやめてくれ。
こいつ、加減とか出来ないだろ。
スポーツ選手に憧れる少年みたいな眼差しで、グラナゴスはハンマーの試し振りを繰り返していた。
ミヤコの強大なご先祖シールドに庇護された原初神竜。
無彩色の旋風をあたりに振りまきながら大動脈血管洞窟に入り、
物凄いスピードで目的地に向かって飛んでいく。
あたりには柔らかな色合いの、黄色の雪が舞い散りはじめていた。




