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雪の女王の脳内 その28



遥か上空で、船体の横っ腹を刺し貫かれている【病魔の母船】が、色を失っていく。



漆黒の船が、青ざめていくように氷の色に染め抜かれて、



やがて白骨みたいな色味にまで変色したと思った瞬間………………




ぱきぃいいいいいいいいいいいん…………!!!!!




粉々に砕け散った。





氷の大建築物が、空から落ちてくるみたいな物凄い光景。



砕け散った【病魔の母船】が



心臓内空間の底へと、ゆっくり、ゆっくり、墜落していく。





ゴゴゴゴゴゴ………………ゴゴゴゴゴゴ………………




天変地異の前触れみたいな、とんでもない地響きが起こった。



病原体を乗せた漆黒の異邦船が墜ちた衝撃。





「お、おいおい、免疫細胞ってのは自分の身体を守るために存在するはずだろ?


なんでほかの誰よりも大暴れしてんだよ?」




《暴走した免疫細胞というのは、ときには自分自身の身体すらもめちゃくちゃに破壊し、血管や臓器を壊滅させてしまうそうです。


免疫細胞とは、ときに自身にすらコントロールし切れない、謎めいていて恐ろしい存在なのです》



……………そういえば、免疫細胞が自分自身の身体を攻撃してしまう病気があるって、どこかで聞いた事があるな。







ぞぱっ………………ん





不意に、1体の黒死病ペスト兵の首から上が消し飛んでいた。





ぶぶぶぶぶぶ………………ぶぶぶぶぶぶ………………





異様な音が、上から響き渡ってくる。




氷の蜂………………



羽音を轟かせながら、上空を氷の蜂が飛んでいた。



今の俺たちから見れば、軽自動車くらいのサイズがある蜂だった。



その氷の蜂の背中には、兵士がまたがっている。



その兵士もまた、半分透き通った身体の、氷の兵士だった。





「免疫の兵士………………【好虫球】ニャ………………」





こう………ちゅう…………きゅう?





ざしゅ………………ん!!!!!!





今度は、背後から。



刃で肉のかたまりを袈裟けさ斬りにしたような鈍い音がした。




音に吸い寄せられた視線、その先にいたモノ。




胴体を両断されて床に落ちていく黒死病ペスト兵の姿。



それは、和装を着た武士にそっくりだった。


日本刀のような氷の刃で、黒死病ペスト兵を両断している氷の戦士。


黒澤明の映画に出てくる剣豪みたいな姿かたちをした【氷の武士】だ。




「氷の……………サムライだと………………?」




《あれが【雪の女王】の免疫細胞!!?》




地上で黒死病ペスト兵を襲う歩兵のなかにはフルプレートの鎧を着た氷の騎士ナイトもいた。




氷の戦士たち、【雪の女王】の免疫細胞の戦力は圧倒的だった。



無数に増殖していた黒死病ペスト兵たちは一方的に惨殺されて、みるみるうちにその数を減らしていく。



斬り殺され、刺し殺された黒死病ペスト兵たちの残骸は、


それ専用の免疫細胞が残らず拾い上げ、食い散らかしていた。



体中に無数の口が生えた、目も鼻も無い、口だけがたくさんついた氷兵。



肥満した大型力士みたいな形状をした氷の兵士だった。



そいつが、ごみ処理業者よろしく敵の亡骸を残さずポイポイと口に入れて喰っていくのだ。




―――さらには





ぎゃぉおおおおおおおおおおおおおお………………





身の毛のよだつ咆哮ほうこう




頭上に、氷の巨竜が出現していた。




水晶みたいに透明なドラゴンは、全身をキラキラと発光させたかと思うと、




口から光り輝く氷の息を吐きだした。




大賢者の放つ極大の氷結魔法を、100倍にも増幅したかのような激烈な【氷の息(ブレス)】だった。



100体近くの黒死病ペスト兵たちを、その神域クラスの超絶氷撃でまとめて氷りづけにしてしまった。




間髪入れずに、





どっぱーーーーーーーん!!!!!!!





巨大な尾を地面に向けて一振りしたかと思うと、



まるで津波かなにかが押し寄せたかのように、氷づけの黒死病ペスト兵たちがまとめて粉々に砕け散った。





ぐる……………ぐるるるる………………




水晶みたいに透き通った巨竜が、今度は俺たちのほうを見つめている。





「………………まさか、あれも免疫細胞だとかいう気か?」





《……………間違いない》






そうこうしている間にも、【雪の女王】の免疫細胞たちは、この心臓内空間へと次々に押し寄せていた。




数千、数万。



とにかく、とてつもない規模で。






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