レナの秘密 大魔王細胞で出来た心臓
なんか、空から星がまた何個か消えたような……
メーテル、またひとつ、星が消えるよ
言うてる場合か。
《警告、警告、レナの生命活動レベルさらに低下》
裸のまま横たわるレナの肌は黒くこげている
死なせるかよ……。
アップデートされた能力を全開にして
レナの黒焦げの身体に回復呪文をかける
回復呪文のみどり色の光が
あたりをつつんだ
数キロにもわたるみどり色の光のドームのなかでは
死滅したはずの植物がどんどんとはえてきて
森がひろがってく
ガラスの海からはえる森
わしゃ、となりのトトロか
レナの肌は
生まれなおしたみたいにキレイに治っていった
その瞬間、
レナを回復する俺の腕に
黒く、妖しいオーラをはなつ触手が巻きついていた
なんだ、こりゃ……
その触手は
レナの心臓のあたりからのびていた
レナの心臓の鼓動と同じリズムで
脈うつ触手
《解。大魔王の細胞を検知しました》
大魔王?なんでレナの身体から大魔王の細胞が生えてんだ?
「逃げて…………」
腕に巻きついた赤黒い触手は
どんどんと俺の身体をはいのぼる
「お願い……逃げて……」
いま回復呪文を解くわけにはいかなかった
「瀕死になったせいで大魔王の細胞が、暴走をはじめてる……もうおさえらんないよ。逃げて……」
じわじわと、俺の身体を浸食してくる触手
「心配しないで、だまって回復呪文うけときな」
ニカッと笑ってみせた瞬間、
レナの胸から生えてる触手が
ぶわっと広がった
俺とレナをまとめて覆いつくす大魔王の細胞
喰われ、同化される
それでも俺はレナの身体ヘ回復呪文をかけるのをやめなかった
少しでも回復を中断したらレナは死んでしまうから
俺は、レナの内部にのみこまれた
□□
暗い、
暗い、
殺風景
なにも無い
むき出しの鉄筋コンクリート
なんの色味もない部屋
裸でぽつんと座ってる
小さな女の子
レナ?
子供のころのレナか?
女の子の胸から
黒い肉腫が
生えている
女の子の考えとは関係なく
うごめきつづける黒い肉腫
こんなに小さな女の子に、あんなものを植えつけたのは誰だ
《大魔王の心臓》
《人工的に移植された魔力》
《楽園に封印された禁じられた技術》
《兵器に転用された大魔王の遺産》
《彼女は兵器として産み、育てられた戦闘少女》
人工知能じみた冷めた声で
頭のなかに情報をつたえてくる女の声
はだかのまま、むき出しのまま鉄筋コンクリートの部屋にすわるレナ
目と目が合った気がした
《ここは、レナの思い出の世界》
幼児レナが見つめていたのは俺じゃなかった
魔導人形と
毎日、戦闘訓練をしてるレナの姿が見えた
少女に成長したレナ
その表情は
毎日、接してる魔導人形たちと同じように無感動になっている
誰もレナに話しかける人はいない
自分たちの都合でつくりあげておいて、
勝手に恐れ
レナを遠ざける大人たち
戦闘技術だけが、歪に成長していく少女
恋とも青春とも無縁に
笑うことさえ知らないまま
成長したレナは
人間同士の戦争にかりだされる
兵器として戦場にたつレナ
一般兵士をなぎたおし
圧倒して
戦場で大活躍するレナ
はじめて、まわりの人間から感謝され
ほめられる
自分の生きる意味は戦場にある
まわりの人たちがレナを褒めたたえるのを見て
そう確信する
ただ、レナは
戦場に、自分と似たような少女がたくさんいる事を知った
戦闘用に、身体を改造された少女たち
腕や脚に、魔物の細胞を移植された子供たち
死ねば、あとからあとから
いくらでも代わりが補充される
ただの生体兵器
自分がそのただの一騎にすぎないという事実
たまたま、大魔王の細胞を受け入れられる特異なイレモノだった
だから、自分は生き残れたにすぎない
悲しい自覚
代わりなんていくらでもいる、
身体が大魔王の細胞に耐えられなくなれば
廃棄される
リストラされる運命
レナより若くて
より大魔王細胞への強い適合性のある少女が出現すれば
あるいはすぐにでもリストラされるかも知れない
わたしってなに
ただのモノ
いくらでも入れ替え可能な
ただの道具?
自問自答
疑問をかかえながらレナは生き残りつづけ
いつしか世界にその名がかけめぐる英雄になっていた
そして、この世界に新たにあらわれた大魔王を討伐する、勇者のパーティーに選ばれるまでになった




