軍艦遊郭の姫花魁 その10
「…………あんた、自分の立場をわかっていないねぇ」
漆黒の旗艦から女のあざけるような声が響き渡る
「これ以上ちょこまかと動きまわって唾ひっかけ続けるつもりなら、あんたの船、今すぐに沈めるよ?」
神竜船ガネシャが浮かぶ海のなかで、巨大な海獣のシルエットがどんどんと集結してきている。
あれだけ巨大な生体魚雷群に特攻を仕掛けられたら、いくらガネシャが最高の性能を誇るといっても沈没は不可避だろう。
……………だが。
【……………残念だったな。デカ足オンナ】
俺は、巨人族の女に直接、思念波を送った。
「……………あん?」
【ゴルディアス単体が相手なら、今日、お前は勝てていたかも知れないのに
お前は海賊王になり損ねちまった】
「……………………あはははははははは!!!!!!!!
戯けが!!!!!!!!
今の戦況をどう見立てたらそんな結論が生れ落ちるのだ!!!!!?
頸動脈に刃物を押し当てられて首筋から血を垂らしてるような状況で!!!!!!
……………滑稽、あまりにも滑稽。
だが、可愛いぞ、お前。たまらなく愛嬌のあるヤツじゃ。
お前はゆっくり時間をかけて四肢五臓六腑を解体しながら、この舌で身体中をスルメみたいに味わってやるからな」
……………俺たちさえ、同行してなかったら。お前は。
「……………ミヤコ、お前の力を見せてやれ」
……………………カッ!!!!!!!
ガネシャの船体に、とんでもない強度のビームシールドがかかった。
シールドに触れた海が沸騰して爆発的に煮えたぎる。
ミヤコの異能。ご先祖の偉大さを、盾の防御力として反映させたシールド。
それがガネシャの船体を完全に覆いつくしてガードしていた。
そのまま、飛行形態に移行してゆっくりと浮き上がり始めるガネシャ。
「…………な!!!!!!」
空を飛ぶ海賊船。
巨人族の女は度肝を抜かれている様子だった。
「なにを見てるんだい!!!!!
撃ち落とせ!!!!!!!」
まだ残っている十数隻の海賊船。それに漆黒の旗艦。
全弾を浮遊をはじめたガネシャに撃ち込んでいく。
海のなかからは、シャチやイルカ型の生体魚雷が飛び上がって特攻を仕掛けてきた。
……………………じゅうっ!!!!!!!
だが、ミヤコのシールドがひときわ出力を上げたと思った瞬間、
ガネシャを狙うすべての飛行物体が、敵意と一緒に消滅していた。
ビームシールドの圧倒的な出力を前に、すべての攻撃物体が空中で蒸発したのだ。
神様の乗っている船みたいに光り輝き、神々しく後光を放ちながらガネシャが巨大積乱雲のなかに隠れていく。
《マサムネさんという世界最強の矛
ミヤコという世界最強の盾
この2つが同居してるのが私たちのパーティーなんでしたね》
みんなのいる船がミヤコの絶対シールドに保護されたことによって、
俺は攻撃力のリミッターを全解除できる状態になった。
神剣が帯びている魅力値の刃を
さっきまでの控えめな出力から、最大出力に切り替える。
ピンク色のオーラブレードの刃渡りが、全長数百メートルにまで伸びて、太さも15メートル以上に膨れ上がった。
「いくぞ、エスメラルダ」
ぎゅっと、しがみつく手に力をこめる海賊娘。
幻想の海を滑りながら、
審判の日に裁きの神が振るうような、超絶の大剣で
海を、空を、滅多切りにする。
そのまま十字架みたいに両手を広げて、
海面に並ぶ海賊船を大回転切りで両断する。
回転軸をずらしながら何回転も何十回転も数百メートルのレーザーブレードで空間を薙ぎ払っていく。
海中にいた生体魚雷が、根こそぎ叩き切られて爆発炎上していった。
それは、さながら海のなかに打ち上げられた花火。
海のなかが、大花火大会の夜みたいに、火の華でいっぱいになった。
それらは、たったの数秒の出来事。
海と空に生き残った船はたった2隻
ほかの船たちはすべて爆発して海の藻屑となった。
「……………………災厄の天使
この世の終りの日に、世界を罪の穢れから浄化するという
貴様は…………災厄の天使か!!!!!!?」
女の絶叫。
漆黒のアダマンタイト・フルプレート船は、俺の斬撃を何回も浴びて、切られた跡がマグマみたいに真っ赤に赤熱していた。
「……………いえ。
ロリコン疑惑を晴らすのに必死な通りすがりのニートですが。
なにか問題でも?」




